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よりぬき物語集①~d×n~ 『酔えば、君は甘えたになる』 『幸せすぎて死にそうな話』 『悩める受け
第1話 - よりぬき物語集①~d×n~ 『酔えば、君は甘えたになる』 『幸せすぎて死にそうな話』 『悩める受け
27
2025年06月27日
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2025年06月27日
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『酔えば、君は甘えたになる』~d×n~
Side涼太
メンバーの中で、一番酒癖が悪いのは誰か。
たぶん、その問いに対する答えは、人によって違う。
酔って暴れるやつもいれば、すぐ寝るやつもいるし、泣き上戸や笑い上戸もいる。
──でも、俺は思う。
「渡〇〇太は、酔っぱらうと“キス魔”になる」
「今度の飲み会さ、俺先に行くから」
翔太がそう言ったのは、ある収録終わりの夜だった。
いつも通りの、どこか事務的な口調。
だけど俺は、その一言に、思わず料理中の手を止めてしまった。
「……えっ、それダメ」
「は?」
小さく眉を上げて、翔太がこっちを向く。
ふだんなら「いいんじゃない」って流すはずの俺が、意外なほど即答したからだろう。
「ダメ。翔太、酒癖最悪だから」
「はあ!? 涼太にだけは言われたくないわ。俺よりお前の方が……」
そこからは、想像通りの展開だった。
売り言葉に買い言葉。
お前の方が寝るじゃん、絡んでくるじゃん、甘えてくるじゃん……と、責任の擦り付け合い。
ただ、違ったのは──
翔太の酒癖を、俺だけが知ってる“本当の意味”で怖がっていたことだ。
酔った翔太は、極端になる。
そして時々、“とんでもなく甘くなる”。
誰にでもじゃない。限られた相手にだけ。
そう──たとえば、俺とか。
だから俺は、本能的に嫌な予感を感じていた。
あの夜のことは、まさにそれが当たった夜だった。
飲み会当日。
会場に一番早く到着したのは翔太だった。
俺はというと、雑誌の撮影が押していて、予定より1時間遅れの到着だった。
入口の扉を開けた瞬間、まず聞こえてきたのは、康二のやけに甲高い悲鳴だった。
「いやいやいや! ほんまにやめて! しょ、翔太、それ以上は──!!」
「ねえ、康二ぃ〜、かわいいね〜。……チュー、してもいい?」
「ヒィィィ!!」
次に見えたのは、放心した目黒。
顔を赤くし、身体をこわばらせ、まるで何かから魂が抜けていくような顔で固まっていた。
続きはnoteで作者名『木結』(雪だるまのアイコン)で検索して下さい。
『幸せすぎて死にそうな話』~d×n~
Side涼太
足取りが軽い。
一日がもうすぐ終わる。
辺りはもう真っ暗だ。だが俺はまだまだ何でもできる。そんな気分だった。
とにかく今の俺は機嫌がいい。
当たり前だ。今日はいい事しかなかった。とにかく朝から今の今までいい事しかなかったからだ。仕事、会議、上司からの評価、新しい企画の話、くじ運。でかいことから小さな事まで。いったい何なんだ今日は。もしかしたら今日が人生のピークなのか?そうなのか?あとは下るだけとか言ってくれるなよ?
とにかく俺は気分よくマンションへの帰路につく。
何もかもが絶好調だった。
だが、俺の幸せはそれだけじゃ完成しない。
マンションに着くまでに待ち切れずに俺は携帯でメールを打つ。いつもなら細かいとこを考えてしまうメールだって今日はすらすらと文章が浮かんできた。普段なら恥ずかしいと思ってしまう文だろうが俺は構わずそれを打ちこんだ。それが相手に届いて返事が来て、翔太がそれを実行してくれれば完成だ。それしかない。俺のテンションはどこまでも高く、何をしようと何を考えようとらしくなくても今は自分に正直でいられた。
「……翔太」
俺はついついその名を口に出して呟いていた。
マンションに着いて玄関前で送信ボタンを押す。
翔太へのメールだ。翔太と俺は付き合っている。付き合い始めたのがグループ結成してからで、けっこう長く続いてるとは思う。
幸せの真っただ中。
そんな中に恋人である翔太がいる事は当然だ。メールをして呼び出してそうして翔太が来て俺の幸福の真ん中に翔太が立って、それで完璧なハッピーエンドになる。
ふとどこからともなく音楽が聞こえてきた。俺はまだ自分の住処の外にいる。それなのに俺の住処の中から聞き慣れたメロディが聞えて来た。俺は玄関を開けた。3歩も歩けば俺の住処は一望できる。
翔太がいた。
玄関開けたら3歩で翔太だ。
まさかそこに翔太がいるなんて思ってもみなかった。呼び出したのは今さっきだ。
翔太は着信音を未だ鳴らしたままの携帯を片手に俺を振り返った。翔太が俺の姿を確認している間に翔太の手の中でそのメロディはぷつっと止まる。翔太は俺のメールすらまだ読んではいなかった。それなのに俺よりも先に俺の帰るべき場所へと到着していた。ああ、そういえば合鍵わたしてたんだった。膝の上に乗っかっている俺の服を見るにどうやら俺の洗濯物を勝手に畳んでいたらしい。
翔太はこっちを振り返って「涼太、おかえり」と言った。にへらっといつもと変わらない緊張感のない顔で笑った。俺はそんな翔太に大股で近付きすぐにその体を抱きしめた。
「え?うわ、なに?」
座り込んでいた体を抱きあげてとにかく抱きしめた。ハッピーエンドへの道のりはあっという間だった。
こんなに一気にいい事が起こるなんて、俺は明日死ぬかもしれない。
俺に掻き乱されてぼさぼさになった頭をそのままに翔太はびっくりしたまま固まっている。俺はそんな翔太にキスをする。それによって翔太の金縛りが解けた。
「涼太!あ、あのさ、俺ごはん作ってあげようと思って、来てみたん…だけど」
顔を真っ赤にして俺の腕の中から出ていこうともがく翔太の体を俺は離さない。
「ご飯は後」
「はぁ?」
素っ頓狂な声をあげた翔太を肩に担ぎあげて、俺は一歩歩いてすぐそこにあるベッドへと投げおろす。
こんな風にベッドへ下ろされれば翔太にもその先は予想がつく。
だが俺の突然の奇行に頭が付いてきていないらしい。俺にはそんなもん関係なかった。俺の幸福の世界は完成した。メールには明日でもいいから家に来いとも記したが翔太にとってはそっちの方が良かったかもしれない。俺の頭が冷えるのを待ってから家に来た方が良かったかもな。
「涼太!その、お風呂は……?」
「お風呂も後」
そのまま翔太の上にのしかかる。
いまだあたふたしている翔太の顔を固定して口にかぶりついた。ベッドへと体を押し付けて、少しだけ口を離すと翔太が俺を押しのける。
早く観念して。いつもなら翔太の方から鬱陶しいくらいじゃれついて来る癖に。
俺はとりあえず翔太を腕に収めたままその言い分を聞こうとじっと待つ。
「……ごはんも後で、お風呂も後…じゃ、じゃあ」
どうやら今度こそ観念したようだ。
じゃあ、なんだよ。
俺は笑った。
「……俺?」
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『悩める受けのお話』~d×n~
友情出演~m×k~
side翔太
気づいたら朝だった。 どうやら俺はいつの間にか寝てたらしい。
薄っすらとカーテンの隙間から差し込む朝の光が、ベッドの上を淡く照らしている。 隣には涼太がすやすやと安らかな寝顔をさらしてる。
長いまつ毛が頬に影を落として、少し開いた唇からは穏やかな寝息が聞こえる。わりと日常的な光景だ。俺と涼太が裸でさえなければ。
「……やっちゃった、よ……」
声に出してしまってから、慌てて涼太の方を見る。
でも幸い、まだ起きる気配はない。
ほっとして、でもすぐにまた現実が押し寄せてくる。
思わず声が小さくなる。 あ、この場合やられちゃったの方が正しいのかな。
いや、そうじゃなくて。
俺は涼太とセ〇〇スしてしまった。
別に恋人的なお付き合いをしてるわけでもないのに。ため息を吐く。
俺はひとまずベッドを降りた。だってこの部屋ヤバい。 におい、ヤバい。
俺たち何発出したのってくらいヤバい。
甘ったるくて、でもどこか生々しくて、確実に昨夜の証拠を物語ってる。
顔が熱くなる。 空気清浄機のスイッチを入れた。しばらくすれば臭いはとれるはず。でも記憶は消えないんだよな、と思ったら余計に憂鬱になった。
ていうか俺たち、マジでやっちゃったんだな……ちょっと夢オチ的な展開を期待してた俺はがっくりした。
夢なら夢で、自分の願望に絶望してたかもしれないけど。
現実だと、これからどう顔を合わせればいいのかわからなくて、それがもっと重い。
涼太の寝顔をちらりと盗み見る。普段のしっかりした表情とは違って、無防備で幼い顔をしてる。こんな顔を見てると、昨夜の激しい涼太が嘘みたいだ。でも確かに、俺は涼太に抱かれた。涼太の手で、涼太の唇で、涼太の……。
「うわあああ、考えるな考えるな!」
小さく頭を振って、そんな記憶を振り払おうとする。
でも体の奥に残ってる違和感が、全部本当だったんだって教えてくる。
昨日穿いてたパンツが床に落ちてたので手に取る。
とりあえずこれを穿くかと思って、やめる。
うわなんかかぴかぴしてる……げんなりした。 全裸のまま移動して、シャワーを浴びることにする。
なんか体中がべたついてるし、ローション的なものが乾いちゃって気持ち悪いし。
地味に腰が筋肉痛だ。歩きにくい。
穴になんとなく違和感があるようなないような。痛みがなくてよかった。涼太のが出たり入ったりしてたわりに、頑丈なんだな俺の穴……。
それとも、涼太が上手だったのか。
シャワーを浴びる。泡を洗い流しながら、このまま昨日のことも流れていけばいいのにと思って、そんなわけはないのもわかってるので気分が重い。
今日は朝から撮影があるので、涼太が目を覚ます前に家を出よう、そうしよう、それがいい。
簡単に朝飯をつくってラップして、あっためて食べてって、メモを残して逃げるように家を出た。朝の光が気持ちいい。
爽やかな朝だ。俺の心情にはまったく似つかわしくないほど爽やかだ。
撮影の間中考えてたのは監督の話してる内容じゃなくて、なんで涼太があんなことをしたのかということについてだった。
「はい、翔太くん、もう少し笑顔で」
「あ、はい、すみません」
カメラマンに指摘されて、慌てて表情を作る。でも心ここにあらずで、全然集中できない。隣で撮影してる他のメンバーには申し訳ないけど、頭の中は涼太のことでいっぱいだった。
昨日の涼太は飲み会があるとかなんとかで帰りが遅かった。
最近忙しくて、一緒にいる時間も少なくなってたし、なんとなく距離を感じてた。
でも、それが普通だと思ってた。
俺たちは同居人であって、恋人じゃないんだから。
今日も目黒と康二と飲むっていうのに、らしくもない。
普段の涼太なら、前日にあんなに飲んだら次の日は控えめにするのに。
帰って来たときの涼太は珍しくベロベロに酔っ払ってて、玄関のドアを開けるのにも一苦労してた。鍵穴に鍵が入らなくて、何度もガチャガチャやってる音がして、心配になって迎えに出た。
「涼太、大丈夫?」
「翔太……」
出迎えた俺に抱きついて、いきなりキスしてきて、めちゃくちゃ酒臭かったから思わず突き飛ばしてしまった。その瞬間の涼太の顔が、今でも脳裏に焼き付いてる。
まるで世界が終わったみたいな、すごく傷ついた顔で「翔太……」なんて呟かれたので、罪悪感でいっぱいになった。
酒臭いからシャワー浴びてきてって言ったら、一転して嬉しそうな顔しちゃって……あれって、俺が同意したようなもんなのか、もしかして。
今思えば、涼太の中では俺の言葉が「一緒にシャワーを浴びよう」って意味に聞こえたのかもしれない。
それからの流れを考えるに、そうなんだろうな。
俺としては、シャワー浴びて頭冷やせって言いたかったんだけど。でも、涼太がシャワーから上がってきたとき、バスタオル一枚で俺の前に立ってた姿を思い出すと、今でも胸がドキドキする。
で、眠かったからもう寝ようと思ってベッドに行って、うつらうつらしてたら涼太がきて……。
「翔太、すごくきれいな目をしてるね」
「え?」
「君の瞳は、いつもキラキラしてて……」
涼太の酔った声が蘇る。あの時の涼太は、普段とは全然違ってた。いつもの真面目で礼儀正しい涼太じゃなくて、もっと情熱的で、積極的で……。
……。あとはまあ、うん。そんな感じで。思い出すだけで顔が熱くなる。
「翔太くん、顔赤いですよ?大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!すみません!」
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