テラーノベル
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「……ハイネ」「……はい」
重なる視線。
まるで、何も言わずとも全てを理解してしまうような、静かな空気が流れた。
ヴィクトールの手が、ハイネの頬を優しくなぞる。
その仕草は、まるで壊れ物を扱うような繊細さで。
「……嫌なら、止めてくれ」
ハイネは、一瞬だけ目を閉じ、そしてゆっくりと首を振った。
「……私は、夢を見る覚悟でここへ来たんです」
それだけで十分だった。
躊躇いのない想いが、重なっていく。
指先が、髪を梳く。
額が、頬が、唇が、寄り添っていく。
ただの接吻ではなかった。
それは、「どうしようもなく好き」という叫びだった。
触れ合うたびに、心が裸にされていく。
ハイネは、言葉を失いながらも、すべてを受け入れていた。
長い間胸に押し込めていた想いが、ようやく解き放たれていく。
「……ヴィクトール……」
「……君の名を、こうして呼ぶことが……ずっと、夢だった」
何度も、何度も、互いを確かめるように触れ合って、
そして夜が静かに明け始めるころ、ふたりは寄り添っていた。
けれど、抱き合ったまま、ハイネは静かに言う。
「……朝が来たら、私は教師に戻ります」
「わかっている」
ヴィクトールはその言葉を、拒まなかった。
ただ、強く、抱きしめた。
「……だから今だけは、まだ夢の中にいさせてくれ」
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