自分が足を進めて来た方向から聞き覚えのある声がする。
だが、僕はそれを聞きたくは無かった。
「らっだぁに何してるんやお前!離れろ!」
目の前を拳が過ぎると同時に力の抜けた体はそのまま草へと落下する。
そんな僕の体をレウさんやコンちゃんが囲い、前にはきょーさんとみどり君の背中が見える。
ザクリとよろけるぐちつぼの足が彼らの足の隙間から見える。
「おっと危ないっ、ですね、乱暴なお方ですねぇ〜らだセンのお友達ですかぁ〜…?w」
二、三歩後ろに下がる彼は額に汗をかきながらも顔を引き攣らせ笑っていた。
「あの時」と同じだ。
あれ…、あの時って「いつ」だ…?
「お友達…かな。僕らが思っているだけかも知んないけどさ」
横にいたコンちゃんが僕の方を見た気がした。
だが僕は見られなかった。何かを忘れている気がしたから。
何かが「足りない」と思ったから。
「勝手に思ってようがどうしようが俺等の勝手やろ。人助けの何が悪いんや」
背を向けるきょーさんの声が聞こえる。
そのセリフに嘲笑を向ける彼。
「お友達ができたんですねっ!らだセン!w」
あぁ、そうか。わかった。
「強がってるんだ」
言葉をこぼしてしまう自分の口に緑の彼がピタリと固まる。
前にいたきょーさんやみどり君がこちらを向く。
「強がってる?誰が?」
振り返った彼らではなく横にいたレウさんに問いかけられる。
それとほぼ同時に腰に力を入れ立ち上がる。
横にいた二人がよろついた自身を支えようとするが、その善意の手を片手で拒む。
前に進もうとする僕の通る道をきょーさんやみどり君が開けてくれ、僕はすんなりと彼の前に立つことができた。
「ねぇぐちつぼ。寂しかったんだよね」
下を向いた彼が頭を上げる様子はない。
ただ体が小さくフルフルと震えているのが目に見えた。
「僕の記憶…、正しい記憶を返してくれる?」
それを言うと勢いよく上がる彼の頭。
表面に付属するパーツは歪められ、今にも水滴をこぼしそうだった。
そんな彼の頭を優しく、撫でてやる。
「あの頃」と同じように。
「全く…、俺の記憶勝手に見たでしょ〜w…こんな可愛くない後輩に背負わせる荷物の量じゃなかったんだよ。いい子だから返しなさいwね〜?」
紅色の瞳からこぼれ落ちる一滴の涙。
それと同時に流れ込んでくる「本当の記憶」。
…いい後輩だったんだよなぁ〜「本当は」。
「なんで無茶ばかりするかなぁ〜…お前は本当w」
「すいません、ごめんなさいっ…」
「…よく頑張ったな、「ぐちつぼ」」
コメント
9件
らだ先...! ぐちへの優しさが心に染みる…
良かったなぁ…ぐっちーも素直になれば良かったのに… まッそれが後輩の良いとこなんやけどな…
うん!もうちんぷんかんぷんだけどとにかくめちゃくちゃ泣けるって事は分かった!!👍😭