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52 - 第52話   繋がる二人の想い①

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2024年03月10日

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あれからどれくらい時が経ったんだろう。


同じプロジェクトなのに、隣に住んでいるのに、距離を置こうって言ってから、こんなにも会おうとしなければ会えないんだ。

食堂でも全然見かけることなく、美咲の店で会うこともなく、ふとした偶然で会うこともまったくなくて。

もう一か月、いや二ヶ月近く経ってるかもしれない。

そんなに長く連絡もしないまま、顔も合わせないまま、自然と終わっていくのかな。

こんな風に出会った前の日々に自然に戻っていくように、何事もない日々が過ぎて自然に時間は流れていくんだな。


だけど。

距離を置こうって言われた時から、 ずっと樹との今までの時間を頭の中でリピートし続けてる。

ずっと頭から離れなくて、結局は離れる結論に至らなくて、逆に好きだとその度実感する。

考えれば考える程、樹のことが前以上に好きになっていく。

いつからこんなに樹のことが好きになってしまったんだろう。

いつからこんなに自分にとって必要だと思える人になっていたんだろう。

今更ながらその優しさやトキメキや愛しさに、離れて改めてまたたくさん気付く。


一切連絡してこない樹は、もう私のことなんてなんとも思ってないんだろうか。

ずっとこのままで樹は平気なんだろうか。

会えなくなればなったで、今までとは違う心配や不安が押し寄せる。


だけど、もしこのまま樹と別れることになっても。

私はきっと樹をまだ好きでいてしまうのだと思う。

樹が実際どれくらい私のことが好きなのかわからないし、 好きかどうかも、もうわからないけど。


でも、少しでもまだ私に興味を持ってくれているのなら、私はまた離れられずに樹を必要としてしまうだろうし、 結局今以上私を好きだと思ってほしいと願ってしまう。

例え誰か心に本当は違う人をずっと想っていたとしても・・。

結局自分は二番目で、この先の未来が何も保障されなかったとしても・・・。


それでも私はきっと、やっぱり樹が必要で恋しくて求めてしまうだろうから。


結局もうこうやって自分の気持ちに答えは出ているのに。

私はもう樹をそれだけ好きになってしまっているのに。

まだ勇気が出なくて自分から連絡出来ずにいる。

それが偽りの恋愛になりそうで怖いからなのか、それともそれ以上にやっぱり樹の気持ちが欲しくなりそうで怖いからなのか、もっと樹を好きになっていきそうで怖いからなのか。

自分の中でまだ鮮明な答えが出なくて躊躇している。

今更どんな風に樹に声をかけていいかもわからない。

樹はきっと受け入れてくれるとわかっていても・・・。


だけど。

結局どれだけ考えても、毎回辿り着く想い。

今は信じられるモノが何かわからなくても、樹が何かを隠していて誰か他の人を想っていたとしても。

それでも樹が私を今までのように求めてくれるのなら・・・。

私はやっぱり樹と一緒にいたい。






そう思っていた時、家のチャイムが鳴って確認すると・・・


そこには樹の姿。


久々に見た樹の姿に素直に胸が高鳴る。


呼吸を落ち着かせるために、一旦深呼吸。

平常心を保って、ドアを開ける。


「はい」

「久しぶり」


ドアを開けた瞬間、穏やかに優しく微笑みながら声をかけてきた樹。


「久しぶり」


そして自分も気持ちが乱れないよう冷静を装いながら、同じように言葉を返す。


「元気してた?」

「まぁね。そっちは?」

「まぁ。それなりに」


さすがにここでいつもなら言ってくれそうな、胸がキュンとするような言葉も返ってくるはずもなく、何気ない言葉を交わし合う。


「これ」


そう言って何かを渡してくる樹。


「え?何?」


受け取った白い封筒の中味を開けながら同時に樹に尋ねる。


「招待状。前に言ってたREIジュエリーの記念パーティーの」

「あぁ。そういえば前に言ってたね」


中を開くと今週末に開かれるという案内の招待状。


この日にパーティー・・。


「ようやく日程が決まったから。とりあえずオレとの話は置いといて、このパーティーは出席してほしい」


オレとの話は置いといて、か・・・。

そう、だよね。

私が何も言わないから、そうなるよね。


多分、樹はどんな結果であれ自分からは何も言ってこない。

きっと、私に答えを出させようとしている。


「わかった。出席させてもらうね」


だけど、とりあえずはこのパーティーに出て考えよう。

あのネックレスをつけてこの場所に行けば、私の気持ちも何か変わって、勇気をもらえるかもしれない。

その時に私の背中も後押ししてもらえるかもしれない。


「なら、よろしく」

「了解」

「じゃあ」

「うん」


樹は本当にそれだけを、ただ最低限の必要なことだけを伝えて、隣の自分の部屋に戻っていった。

なんだか、それがやっぱり切なくて。

自分が何も行動しないのが悪いくせに、樹が何も気にしていないかのような他人行儀な素振りに、少し胸が痛む。


もし、こんな距離が離れたままじゃなければ、一緒にそのパーティーに行けたのかな。

樹にエスコートしてもらえたのかな。

きっとそんな場所でもスマートな樹の隣りに他の女性が群がらないように、私がガード出来たのかな。


誘ってくれた時は、樹のパートナーとして参加出来るはずだったのに。

今となっては、ただの仕事関連で招待してもらった、なんてことない一人。

樹の隣りに立つこともなく、もちろんそんな資格もなく、樹の姿を遠くで見ているだけなんだろうな。


だけど、もうこのままでいるのは嫌だから。

例え樹の隣に立てなくても、私は私として、ビジネスで関わる恥ずかしくない相手として参加する。


私は私らしく、そのネックレスが似合う女性でいられるように、まずは自分に今以上自信をつけてその時を迎えよう。


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