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冬が終わり、春の訪れと花粉の飛来を感じ始めるとある日の午後。何もないまっさらな空の下、家に向かって足を進める。肩にかけた制定鞄には卒業証書が入っている。そう、今日は高校の卒業式。私の3年の高校生活は終わりを告げ、明日からは晴れて無職となる。あぁ…労働しなきゃ……。お金がない。バイトしなきゃだよなぁ。来月メイトで散財する予定だし。にしてもJKブランド強制剥奪か…明日からは制服着たらコスプレって言われちまうよ…オヨヨ……。
ま、1番辛いのはもう年下の王子様達しかいないことだけどさ!
“王子様達”というのは”テニスの王子様達”のことを指す。私は『テニスの王子様』…もとい『テニプリ』に人生をいい意味で狂わされた限界オタクである。
やだなぁ…高3の子達にも敬語使われるようになんのか……”〇〇さん”とか”〇〇先輩”って呼ばれるようになるとかマヂ無理過ぎワロエナイ。留年しとけばよかった。なんで私うっかり単位全部取っちゃったんだろ?落としまくってなんなら中学からもう1回遊べるドン!すればよかった。ま、どっちにしろ実年齢は変わりませんけどね!ハハハ…ハハ……。
つら。もういーや。今日テニラビお知らせ来てるよね?Twitter見て確認すっか…と思ってスマホを取り出そうと鞄を見ると…
あれ?アクキーがない……?私の不二くんのアクキーがない!?落とした?だとしたらどこ?えっ?なん…えっ?でも、まだ今から探せば…!来た道を引き返し慎重に探す。不二くーん!出ておいでー!不二くーん!?…私のこと嫌いになったの?
……あっ!あった!横断歩道の上に見慣れたアクキーが転がっている。信号が青に変わったことを確認してダッシュする。不二くん!見つけたよ!お姉さんと一緒に帰ろうね!と心の中で叫びながらアクキーを拾った刹那、突然曲がり角から飛び出してきた車に私は…轢かれた。
…………痛ッ!え、私轢か、れ、た?よね?痛い…。アスファルトの不愉快な感触と薄目を開けて見える慌ただしく動く人々と手に握られた不二くんのアクキー。
私、死ぬの?卒業式の帰りに?最悪じゃん……。あー…原作まだ完結してない…テニミュまた観に行きたい…たくさんイベント行きたい………。心残りしかないよ。このままじゃ死んでも死に切れないや。
死ぬならせめて王子様達と一緒にキラキラな青春過ごしたかったナ……。
そう思って目を閉じ、私は事切れたのだった。