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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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※テラーノベル上手く使えない人

※低クオリティ

※オリキャラ注意

※あとがきあります


その少女はどこか見覚えのある雰囲気を出していたが、いつか会った覚えはない。まだ寝ぼけまなこな彼女の髪は水を含んで、控えめなツヤを出していた。

「…でも、なんか似てる…」

思い浮かんだのは、何年か前までポップスターに滞在していた、ひとりの少女。顔つきにこそ違いはあるが、どこかそれに似た面影を感じさせる。ここでは珍しい体格なのも関係しているのかもしれない。

「…うぅ、痛たぁ…」

後頭部の辺りをさすりながら立ち上がる。まだこちらがいることには気づいていないらしい。その様子を心配したのか、リボンちゃんが近づき、声をかけた。

「あの…大丈夫、ですか?」

「え、…あ、…うん、大丈夫…なのかな…?」

警戒して慎重に答えたのか、まだ頭が働いていないのか、ぎこちない返事が返ってくる。急に話しかけられて少しは驚いたのかその目は冴え、僕たちの方を見て戸惑っていた。この様子は見覚えがあるが、今回こそは不本意に墜ちてきたと考えてもいいだろう。警戒心を抱かせないように、優しく近寄る。

「急に落ちてきたから、びっくりしちゃってさ。…あ、ぼくはカービィ。」

「わたしはリボンです。あの、一体何があったんですか…?」

リボンちゃんが本題に切り込む。それに対して少女は、目を泳がせた。この行動をとる相手の心理として多いのは、なにか隠しごとをしているとき、或いは色々と言葉にし難い事象に出逢ったとき。この人は、どちら側だろうか。あの虚言使いと同じように、ぼくらに何かを隠しているのだろうか。そこまで考えて、もう自分は、見知らぬ誰かを素直に信じられないのだな、と呆れてしまう。けれど、信じていたひとに裏切られるのは嫌だ。

「えーっと…あんまり、信じてはもらえないかもしれないし、無関係のあなたたちが知る必要のあることでもない。…それでも、聞いてくれる?危険な目に遭うのかもしれないけれど、本当に話してもいいの?」

不安な声で、僕たちは問いかけられる。そのひとの考えてることは、言われずともなんとなく分かるような気がした。

(この世界にはやさしいひとが、多すぎる)

なんだか初めて逢ったときのリボンちゃんに似ているな、と思った。初対面のはずの相手を気遣える優しさに、どうしてか懐かしさを覚える。けれど、その思いに甘えるのは、どうしてもできなかった。

「大丈夫。別に、戦うのは慣れてるし。それに、困ってるひとが目の前にいるのに、放っておくなんてできないよ」

それは紛れもない真実であり、本心でもあった。いつかのぼくのご飯とお昼寝のためでもあり、さっき感じた嫌な予感が気になるのもあるが、それはまた別として、だ。

「そっか。それじゃあ、少し長くなるけど…

…わたしの一族は、ずっと長い間、宇宙を旅してるの。それは今でも変わらず…わたしよりも何代も前のひとの時に、旅が始まったと言われてるけど、正確な数までは、誰も覚えてないんだって。」

そういって少女は空を見上げた。もしかしたらはるか遠く、宇宙のどこかを仰ぎ見ているのかもしれない。その姿はどこか、星の光に心を躍らせているようにも見えた。彼女は知っているのだろう。自分の一族は星のように長く連なった歴史を持っていると。そのどれかに手を伸ばしながら、続きが話されだした。

「わたしの一族にはね、いくつか決まりごとがあって…例えば、一族の者としか子孫を残してはいけない、とか」

「…それを破ったひとは、どうなるんですか…?」

恐るおそる、リボンちゃんが尋ねた。

「そうだね…たしか、わたしが産まれるほんの少し前に、訪れた星にいた人が好きになっちゃった女の人がいたらしいの。その人は追放されて、どうなったかまでは分からないけど…」

そうですか、と零したリボンちゃんの顔が暗くなる。少し残酷なことを聞いてしまった責任を感じているのか、表情は少し悲しげだった。

「…続き、話すよ。これも聞いた話なんだけど、わたしたちが子供を産むときは、必ず子供が産まれてから数日以内に両親が死んでしまうらしいの。だから今はちょうど、わたしくらいの年のひとばっかりで、最近になって上手く旅が続けられるようになったんだ。」

「…あれ?それじゃあ、その決まりごととかはどうやって知ったの?最低でも一人は、大人が残ってることになるけど…」

「もちろん、全てのひとが子供を産むわけじゃないから、まだ生きてる大人たちもいるの。でも、ひとりで宇宙を動けるようになったら、同じ期間に産まれた子たちと一緒に、そのグループから分かれる」

その言葉の冷たい響きに、思わず息を呑む。しかしぼくは同時に、ちょうどとある一族を思い出していた。ぼくの友人のひとりはそこの生まれだったが、何やかんやあって今はここで暮らしている。彼も同じようにして育ったのか、どんな目で見られていたのか。それを思うと少しぞっとした。

「それで、まだ未熟だったわたしたちは、友達と一緒に旅立った。たしか――4年前、だったかな?けっこう進んでるとは思うな。この辺りに来たのも、つい最近だし。

…わたしたちが目指してるのは、“楽園”と呼ばれる場所。そこには、幸せがたくさん残されてるらしいの。わたしの先祖は、一度そこから追い出されたから、この旅を始めたんだ。わたしたちの楽園に、帰るために」

遠い歴史を追うようにして、そっと言葉を零した。その声の裏側には、本気で楽園を信じ、望むかのような意志が見えた。こんなにも夢にひたむきな声を聞いたのは、いつ以来だっただろう。

「…数時間前、この辺りの銀河を通り抜けようとしたら、すごく綺麗な星が見えて…それで一旦、休憩することにしたの。…その時に、つい油断してて。…黒いなにかに襲われて、気づいたらここに…」

その時のことがよほど怖かったのか、俯いて身震いをする。ふと隣を見ると、あの時のことを思い出してしまったのか、リボンちゃんも一緒になって震えていた。故郷が突然として黒い雲に覆われて逃げてきたという境遇は、確かにどこか似ている。これがもし偶然でないのならば、少女がさっき言っていた「黒いなにか」というのはもしかして…

「その…話、聞いてくれてありがとう。なんか話したら状況が整理できたのかな、少し落ち着いたよ。…それじゃあ、わたしはこれで…」

「…待って」

そう言って立ち去ろうとする彼女を、ぼくはいつの間にか引き留めていた。どこかも分からない場所に消えてしまいそうな背中を見ていると、どうしてか不安になる。出会って数分の、悪く言ってしまえばそこまでの縁もない少女のはずなのに、独りにさせたくないと思ってしまう。

(たぶん――ぼくは、怖いんだ)

また現れかけている「奴ら」が、その中に消えていこうとする彼女が。呑み込まれたくなくて、失いたくなくて。それが全部、怖いんだ。

「確かに、ぼくたちには関係ないことかもしれない…けれど、やっぱり放っておけないんだ。…ただのお人好しで良ければ、連れて行ってほしいな」

「わ、わたしも!置いていかれるのは嫌だし、その…わたしと同じように、大切なひとを失うような経験は、もう他の誰かにはしてほしくないんです。だからお願いします!わたしも一緒に、行かせてください!」

「…いいの…?」

戸惑いと期待の混じった声だった。しかしその声の割に、表情はどこか恐れが強いように見えた。こうしてついて行くと言われるなんて、考えてもいなかったのだろう。だから余計に、信じられなくて。ぼくと一緒だ。さっきまで少女を信じてあげられなかった、ぼくと同じだ。

だから、余計に。どうしても、助けたくて。

どうすればいいかなんて分からない。けれどもぼくはまた、旅に出ることにした。少女の“友達”を助けに行くために。そして、ぼく自身のために。

「二人とも、これからよろしくね!…そういえば、わたしの名前、まだ言ってなかったよね?色々あって忘れてたよ…」

頭を掻きながら呆れたように笑う。その後ろでは、夢の泉が眩しく輝いていた。

「わたしはカエデ。二人とも、 あらためてこれからよろしく!」




以下、あとがき


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます…!作者のフジミヤです!

単発と並行で書いてたので2話を出すのがすっかり遅れてしまいましたね…この更新ペースは更に悪化する可能性しかないのであまり期待はしないでください…(諦め)

そういえばこの小説のあらすじに思いっきりカエデの名前が出てましたね。うっかりです☆()

このあとがきはあったりなかったり、まあ気分によって変わるのでご了承ください!あと前回いいね押していただいた皆さん、本当にありがとうございました!これからも長く続けていく予定なのでどんどんいいねしてほしいです!めっちゃ励みになるんで!

あとコメントやフォローもしていただけると嬉しさのあまり泣き叫びます(大袈裟)のでそちらの方もよろしくお願いします!

次回もぜひ読みに来てくださいね~!

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