夜。
「寝れん。」
なぜだ。
寝れないようなことなんかしたか?
コーヒーは飲んでないし、寝る1時間前にはブルーライトみるのやめたし。
なんでだぁ?
一回夜風に当たろう。
窓を開け、風を感じる。
「うぅん…。」
「⁉」
寝ていた奏斗が身じろぎをする。
これもしかして起こしちゃうか?
なら外出るかぁ。
靴を取ってきて、窓から飛ぶ。
「誰もいないし、いいっしょ。」
音をさせず地面に降り立つ。
「星きれーだなぁ。」
空は晴れていて、星と月が瞬いていた。
なんでか歌いたくなって口ずさむ。
「~~♪♬~~~♩~♫」
いろんな思いがこみ上げてきた。
やっぱり夜はいろんなこと考えちゃうな。
中途半端に歌をやめる。
「辞めちゃうの?」
「え?」
まったく気配がしなかった。
後ろにはせらおがいた。
「…美園。」
「きれいな歌声だったのに。」
「あんま歌うと近所迷惑やろ?」
ごまかすように笑う。
セラおが顔を少しゆがめた。
「何かあったの?」
「え?」
「いつもより元気ない。」
「んー。」
何もないっちゃなにもな。
この世界がおかしいだけだ。
俺はまだ適応できていない。
「風楽になんかまたされた?」
「されてねぇよ?あいつは関係ない。」
なんで俺はこの世界に来たんだろう。
元の世界に戻ったら締めよう。
「そう?なんかされそうになったらすぐ呼んでね。心配だから。」
思わずポカーンとしてしまう。
心配?
俺の何が??
あーまぁ、セラおは優しいからな。
「ありがとな!なんかされることはないと思うけど」
奏斗は叱ったし大丈夫だろう。
「ねぇ、ひばり。歌ってくれない?」
「近所迷惑になるって。」
「少しなら大丈夫だよ。俺もヴァイオリンあるし。」
どこからともなく取り出したのはよく見せてもらったあのヴァイオリン。
こっちでも大切にされてるんやな。
「ちょっとだけやからな。」
「うん。」
セラおが音色を奏で始める。
彼が弾いたのは俺らがVOLTACTIONとしてうたったあの曲。
「っ、」
涙がこぼれださないように抑えながらその曲を歌う。
「♫~~~♩~♪~~♬~~~」
「きれいだなぁ。」
セラおがそうつぶやいた。
『エラー発生、エラー発生。』
ウ”—ウ”—と頭の中でブザーが鳴る。
「?」
『渡会雲雀の―――を改変されます。』
何を言っているのかわからない。
『外部からの攻撃を察知。渡会雲雀のじょう――が改変され――」
ぶつん、と音が切れた。
途端にびりびりと体に電撃のようなものが走る。
「ぇあ?」
「?雲雀…?」
身体の奥が甘くうずく。
「⁉⁉⁉♡♡♡♡♡♡♡♡」
「雲雀⁉‼」
がくがくと体が震える。
頭が真っ白になってそのまま意識を失った。
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