にんじんのかわ。 様より、日帝→卍→🇮🇹👑の三角関係
※旧国
日独伊三国同盟…この名を聞いた時、多くの人々は悪魔のような3人組を想像する。
東アジアの狂犬、大日本帝国
ファシズムの元凶、イタリア王国
世界の新たな脅威、ナチス・ドイツ
いわゆる枢軸国である彼らは、互いに思い合って仲良しこよしするような関係ではなかった。
あくまでも利害の一致で協力しているだけであったが、それぞれ思うことくらいはある。
日帝はナチスを尊敬し、彼の祖父とは師弟の関係だった。
今は亡きその面影を感じて、いつも目で追ってしまうくらいには気になっている。
そんなナチスはイタリア王国に思いを寄せており、彼の思想以外──生活面、外見など──にも惹かれ、日々口説いていた。
そしてイタリア王国はそれを断り、同時に気味悪がっている。
彼は根っからのノンケであり、年下の男になど興味を示す気すら起きない。
だが、バラバラなように見えても、案外それでもまとまっている。
ナチスにはイタリア王国が気持ち悪いと感じるような一面もあるが、日帝が尊敬するような確かな技術とカリスマ性があった。
そう、例えイタリア王国の体をいやらしい目つきで見つめていようとも。
ある時、ナチスは会議終わりのイタリア王国へ声をかけた。
「ドゥーチェ…我が友よ、今夜、一杯いかがです?ワインはお好きでしょう」
「ワインは好きだけど、僕は君と飲むつもりはない。日帝でも誘って来たらいいよ。彼、それなりの酒好きだろう」
「そんな悲しいことを仰らないで、奢りますよ」
「君に貸しは作りたくない。悪いけど、もう僕は行かせてもらうよ」
ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべたナチスは、書類を持ってその場から離れようとするイタリア王国に付き纏う。
自分の同盟相手でなければ、即座に突き放して逃げていたに違いない。
ナチスは何を言うでもなく、気味が悪いと思って早足のイタリア王国を笑顔で追いかけ続けた。
「…って、感じでね…相手が相手だからあまり強くは言えなくて、困り果てているんだ…」
頬杖をつき、はぁ…と深刻そうなため息を吐くイタリア王国に、相談相手である大日本帝国はうーんと唸る。
「あの人のそんなところ、私は見たことがないのでわかりかねますが…随分と好かれていらっしゃるようで」
「ジョークは好きだが、笑えないことを言うのはやめてくれ。僕の思想に感銘を受けただとか言っていたけど、隙あらば僕の貞操を狙うような子だとは知らなかった…どうにかならないものかな」
「まだ実害は出ていないようですし、何よりあの人相手は…」
「あぁ、わかってるよ。だからこそ困っている」
「ですよねー…」
頭を抱えるイタリア王国を気の毒に、そして少し羨ましいと思った。
日帝は発展した欧米諸国に憧れ、この帝国主義の世界へ入ったのである。
第一次世界大戦では敵だったが、改めて同盟を結ぶと、ドイツという国の凄さがわかった。
自身の師匠も紛れもないドイツという国の一部で、今の“センパイ”にもたくさん世話を焼いてもらい、言わば憧れているのだ。
自分が精一杯彼のために努力しても塩対応なのに、目の前の彼は思想を出しただけで、悩むほど愛されている。
やっぱり羨ましい。
そう思って、ふと疑問が湧く。
イタリア王国がナチスに愛されているのは今更のことなのに、なぜいちいち妬いてしまうのだろうか?
「悪い子ではないけど…少しくらい、僕以外に目を向けたっていいのにね。例えばソビエトとかね。不可侵条約を結んでるっていうのに、ずっと険悪な雰囲気なんだもの」
「…センパイは、そういう方ですから」
「だからって付き纏われても困るよ…はぁ…迷惑かけられてる分、利用できるところまで利用してあげるとするかな…」
ありがとね、と言い残し、イタリア王国は相談を終えて去っていく。
ナチスは、どうして自分に目を向けてくれないのだろう。
別に向けてくれなくたって、拒否されないのなら構わない。
だが、なぜイタリア王国を追いかけ続けるのかがわからなかった。
イタリア王国はナチスを利用し、ナチスもまたイタリア王国のことを利用している。
ナチスの方に愛はあれど、やっていることはイタリア王国の思想を借りた、過剰なまでの差別行為。
どうして、なぜそこまで熱心に追いかけるのだろう?
「私なら…」
そう言いかけて、やめた。
「…私なら、どうすると言うんだ?」
問いかけるようにつぶやいても、その場にはもう誰もいない。
日帝はなんだかモヤモヤした気持ちのまま帰路を辿った。
またとある日、枢軸国が会議を終えた直後のこと。
「…これにて本日の会議を終了とする。イタリア王国を除き、この場にいる者は全員速やかに退室したまえ」
落ち着き払った冷たい声でナチスが言えば、その通りに タイやフィンランドたちはさっさと会議室を出て、植民地たちも宗主国の荷物を持って退場していく。
日帝も植民地たちのことを手伝いながら会議室を出て行き、残されたのはナチスと、イタリア王国の2人だけ。
残ったというよりは、ナチスが圧をかけて全員帰宅させたという方が正しいだろう。
(あー…やったな、これ…)
ぼんやりとそう思いながら、イタリア王国は腕を絡ませてくるナチスを一瞥した。
先ほどまでの荘厳で冷たい雰囲気は何処と言いたいくらい、甘く熱く、まさに熱帯夜のようにねっとりと蝕まれるような視線に絡め取られる。
「あぁ…やっと2人きりですね、イタリア王国…」
心底甘美を愉しむような、そんな声。
勝手に腕を組まされ、頬擦りされた。
ナチスの方が背は低いため、平常時に届くのは肩が限界というところは救いである。
「今日のあなたも美しい…花屋にでも寄りましたか?いつもより甘い香りがします 」
「…そうだね、今日は息子に香りの強い花をもらったから、それじゃないかな」
なぜわかるのか、とは聞かなかった。
聞いたらまた変なスイッチを入れてしまいそうで、とても怖いからだ。
「そうでしたか。相変わらず仲がよろしいことで、微笑ましいですね」
「………」
恋人のように手を繋ぎ、腕を組み、付き合ってもいないのに甘い言葉をかけられる。
いつものことだが、一向に慣れない。
「以前の手紙で不眠を嘆いておられましたが、近頃はよく眠れていますか?」
「不眠症の方は改善されてきたかな…でも、ちょっと仕事が増えてきて、結局寝られていない。君の方こそ、最近はどう?いつも遅くまで仕事をしているそうじゃないか 」
「私の心配をしてくださるだなんて…!えぇ、今のお言葉のおかげで、疲労など彼方遠くの地へ吹き飛びました。ご心配してくださり、ありがとうございます」
嬉しそうにはにかむナチスは普通の青年のようで、自分が彼を狂わせたのかと思うと、僅かばかり罪悪感が芽生えた。
「…ねえ」
「はい、なんでしょう」
「君は…どうして、僕に執着するの?君を慕う人はたくさんいる。日帝やフィンランドや他の枢軸国たちも、その中に含まれるだろう?なのに、君は彼らに対しては冷たく、僕の前でだけそうやって笑うじゃないか。もっと…そうだね、友達なんかを作ってもいいんじゃないのかい? 」
「…なぜそんなことを仰るのか、理解できません。あなただけいれば、私はそれでいい」
分かり合えない。
適当にあしらっているうちに、イタリア王国は彼の中で神格化されていたようだ。
憧れとは、尊敬から最も遠いものである。
彼の中のイタリア王国はもはや、友人という名の偶像であり、敬虔なまでに愛しているのだろう。
偶像として愛されたところで、イタリア王国は気持ち悪いとしか思わないというのに。
そんな様子を、隠れていた日帝は唇を噛んで眺める。
イタリア王国の気持ち悪がっている顔、ナチスの恍惚とした表情、絡め合わされている腕。
あぁ、あぁ、自分ではあの中に入れない。
否、入ることなど許されない。
「センパイ…」
大好きだった師匠に似ているだけだ。
師匠が取られたような、そんな気がしているだけに違いないのだ。
見た目こそ似ていても、彼は自分のことを気にかけてくれやしないし、名前以外覚えられているのかすらあやふや。
イタリア王国に付き纏い、聞く限り相当なことをしている。
そんな男のどこが気になるというのだろう。
「羨ましい…」
思わず口に出た。
イタリア王国はあなたを利用しているだけ、私の方があなたのことを…
どう思っているのか、もはやわからなくなってきた。
以前イタリア王国に相談された時からこうだ、どうしてが頭を埋め尽くすのに、答えを知る術すらない。
きっと、終わりを迎えるまで誰1人として想いが通ずることはない。
自分はセンパイへの心残りを燻らせて散るだろう。
イタリア王国はその生涯をナチスに囚われるだろう。
ナチスは、敬愛するセンパイは、狂った愛を一方的に押し付けて終わるのだろう。
終わりがいつかは、まだ知らないけれど。
コメント
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おお!!書き方も素敵ですしキャラの性格や喋り方とかも…解釈一致です!!! とくにイタ王の喋り方がイメージ通りだ…、 リクエスト受け付けてくださりありがとうございます〜!
(多分)人生で三角関係初めて読んだけど、意外と良いかもしれない、、、ナチスのイタ王への対応が気持ち悪いけど、相談受けた日帝以外は傍から見たらただ距離近いなぁ、ぐらいにしか見えなさそう、、、興味無い植民地達とかなら一寸もそんな事思ってなさそうだけど() いやぁ〜、良いですな☆日帝の嫉妬具合にみっちゃ共感できる。ナチとイタ王のイチャイヤ見てた時終始イカ耳だったに違いない、、、!多分!!そんな余裕ないちっこくてかわいい日帝さんを応援したくなりました📣 まだ書きたいことある〜⤴️サカナ‐ウミさんやっぱスゲェ、、!!!