はらるっち 様より、自衛隊×帝国兄弟×自衛隊
※R-18、旧国
⚠️政治的意図はありません。自衛隊の皆さまには常日頃感謝しております⚠️
きっかけは、いつ頃だったろうか。
確か、自衛隊として名を変えた時から。
元々祖国として、軍隊として先導していた3人組。
名前は大日本帝国陸軍、大日本帝国海軍、大日本帝国海軍航空隊。
そして運命に絡め取られた哀れな被害者たち。
名前は陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊。
同じ3人兄弟で、同じような役目。
だが、立場は圧倒的に違う。
ただこの国に生まれただけ、ただこの国の重要な力として生まれただけで、まだ若い兄弟たちは苦悶の道を歩まされた。
「お初にお目にかかります!!防衛省陸上自衛隊と申します!!かの大日本帝国陸軍様にお会いでき、光栄であります!!」
ピンと伸ばした背に、お手本のような綺麗な敬礼。
大きな声でハキハキと話し、陸自は先代へと挨拶を済ませる。
陸軍は満足そうに頷き、陸自の肩に手をやった。
「陸上自衛隊…と言ったな。私も君に会えて喜ばしいぞ、可愛い後輩ができたものだ」
「ゎ…あ、は、はい!!ありがとうございます!!」
真面目な顔のまま花を散らす陸自に、陸軍はキツネのような妖しい笑みを浮かべる。
スゥ、と細められた赤い目に見惚れてしまった。
「さて…それでは陸自よ、私と訓練をしようか。海軍も航空隊も、君の兄弟たちを鍛えると言って連れて行ったのだ、私も君に教えなくてはな」
「偉大な先代様に直接訓練をつけていただけるのですか!?なんたる幸せ…ワタクシ、陸上自衛隊は精一杯やらせていただきます!!」
まだ幼い祖国を守るため、補助するために。
残虐で非道な行いばかり聞くが、純粋な彼らは憧れこそすれ、軽蔑などもっての外。
自分たちでは乗り越えられなかったであろう状況を切り抜け、この国を国として守ってくれた彼らには頭が上がらない。
「そうこなくては。良いか?陸軍とはまず、体力を作らねばならない。我々はこの地を踏み締め、お国の為に命を捧ぐるべく存在しているのだ」
低く威厳に満ち溢れた言葉の一つ一つを、陸自は陸軍たちと揃いの猫耳で聞き取る。
冷静に、けれど熱く語る陸軍の本性すらも知らないで、尊敬の眼差しを向けながら。
「我々はどこまでも、例え地球の裏側だろうが歩み、敵を滅せねばならないのだ。しかし、実戦では地図など使えず、頼れるのは己のみ。まずはこの周辺の地形を脳細胞にまで叩き込め」
「はい!!」
「では…走ろうか。何事もこうしなければ始まらないからな」
「どこまでもついて行きます!!」
キラキラとした可愛い後輩に少しばかりの悪戯を。
陸軍はふっと笑みを漏らし、走り始めた。
その後を陸自がついて走り、付近の見回りついでに、言われた通り地形を把握していく。
知り尽くしているつもりになってはならない。常に変化を探せ。
これは陸自が自身に言い聞かせていることであった。
一方その頃、時は少し前へと遡る。
こちらではニコニコ笑っている海軍と、陸自とそっくりな顔で起立する海自が話していた。
「朝早くから連れ回して悪いね。でもこういうことは早い方が良いだろう?君を鍛えてあげるよ」
「ありがとうございます、海軍殿」
「うん、しっかりお礼を言える子は好きだよ」
陸軍とはまた違う人の良い笑みを浮かべ、海軍は海自の頭を撫でる。
わしゃわしゃっと帽子ごと乱雑に撫でられたものの、どことなく優しい手つきに頰が緩んだ。
「僕ら海軍は泳ぐことも多い。艦の大破や沈没だって経験するかもね。そうなった時、なが〜い距離を泳ぐことになるかもしれない。まずは肺活量から鍛えてもらうよ。犬かきだろうと泳げるなら、後は呼吸の勝負だからね」
「そういうものなんですね…」
「そうさ。長々と話しちゃってごめんね?少しずつ肺活量を上げていこう」
「走るのですか?」
「それもありだね。だけど今はどのくらい潜れるのか知りたいから、水に顔をつけてもらう形にしようかな」
「了解いたしました」
「とりあえず5分は頼むよ」
「え…?」
水を張った桶を目の前に出され、タイマーを持った海軍に見つめられる。
人間の限度は、鍛えていない一般人で1分かそこらが限界だ。
いくら海自だとしても、最大で3分以下が限度だろう。
「早くして?ほら、せーのっ」
「…っ、すぅー…」
一瞬躊躇ったものの、上官とも言わしめるべき人に言われてしまえば彼は断れない。
覚悟を決めて息を吸い、鏡のように自分を映していた水面へ顔をつけた。
そしてもう一方では、航空隊と空自が航空機の整備をしている。
「お前には翼が生えているのか」
「はい!私の自慢の翼でございます!この国を見守り、素早く飛んでいくためにあります!」
にっこりと笑って答えた空自に微笑み、航空隊は
「良い心がけだ。 よく見せてはくれないか」
そう言って空自に後ろを向かせた。
航空隊は回れ右で背を向けた空自の翼を丁寧に触り、その素晴らしい羽の質感を確かめている。
「…これは雉の翼か。よく手入れしているのだな」
「祖国を守るならば、まずは私自身が体調を整えなければならぬと考えていますので。お褒めいただき、光栄でございます!」
「お前の翼は、どのくらい飛ぶことができるかわかるか」
「実は、飛ぶことはあまり得意ではなくて…高さは15m以下、速さは一般の雉以上陸上アスリート未満…といったところだと思っています」
「ふむ…」
翼を優しく撫でられながら、航空隊が投げかけてくる質問に答える空自。
「では、整備が終わったら飛行訓練としよう。まともに飛べるようにしてやる」
「はい!ありがとうございます、航空隊さま!」
再び航空機に向き直り、ところどころ指摘されながらも整備を終えていく。
飛行訓練と言われたが、何をするつもりなのだろうか。
結果として、3人それぞれ地獄を味合わされた。
まずは陸自から見るとしよう。
周辺を走り、地形を把握する。
今回の目標はそれであるが、周辺と言われれば半径数百m、またはせいぜい半径2、3kmを走る程度だと思われるだろう。
しかしながら、相手は化け物であった。
軽く30kmは走らされただろうか? だが、これも行き道だけの話。
帰りも同じように走るのならば、それはもうフルマラソン以上。
いくら鍛えていると言っても、そんな距離を走り続けることは困難極まりない。
「は、ッ…ぁッ…はーッ…ひゅッ…」
足が鉛のように重く、膝が曲がらなくなってきた。
先を走る陸軍はペースが一向に変わらず、ついて行かなければ置いて行かれてしまう。
もはや地形を覚える云々の話ではないのである。
山道、畦道、岩だらけ砂だらけの走りにくい場所で体力を削られ、照りつける熱線に身を焼かれ、ボタン一つ緩めず着ている制服はサウナのようだった。
もしここで、人の通らないここで倒れてしまったら。
陸軍は助けてくれないであろうし、そうなったら死ぬだけなのだろう。
陸自は本当に死ぬ気で走った。
目の前で走る指標を見失わないよう、どれだけ距離を離されても走り続けた。
「せ…せんだいッ…さまぁッ…わっ」
小さな石に躓き、陸自は受け身を取ることもできずに倒れ伏す。
起き上がろうと腕に力を込めるが、上体を起こすことすら叶わなかった。
「はッ…はーッ…はーッ…」
ぶわっと体が熱くなり、今まで走り続けた分のエネルギーが体内に溜まる。
頭がクラクラと痛み、目の前が霞んだ。
「はーッ…げほッ…ぁ…せん、だい…さま…」
ここで死ぬのかもしれないと目を閉じかけた時、先を走っていた陸軍が戻ってきた。
「なんだ、この程度で倒れるのか?情けない…早く立て」
「はぁ…ッ…はぁ…ッ…も、もう…わた、くしは…走れ、ません…起き上がること、も…はぁ…厳し、く…」
「…そうか。では仕方あるまい」
倒れた陸自の襟を掴み、陸軍はそのまま走り出す。
「うぁあッ!?」
ザリザリザリッ!
「もう走れないなどと言うのであれば、この私が引き摺って行ってやろう。感謝しなさい」
「い゛ッ…あぐッ…!」
うつ伏せの状態で引きずられているため、陸自は小石や地面で顔を擦る。
時々小さなプラスチックや小枝、尖った石なんてものもあり、一瞬にして陸自は傷だらけになってしまった。
「あ゛ぁあッ!…せ、せんだい゛さ゛まッ!ごめん゛なさ゛いッ!走ります゛ッ!ちゃんとッ、うあ゛ッ!!走りますから゛ぁッ!!」
疲れたなどと言っている場合ではないと、陸自は涙を浮かべながら叫ぶ。
「ふん、最初からそうしていろ」
「うぐッ…」
パッと手を離され、陸自は再び地に伏した。
また倒れているわけにはいかない。
フラフラしながらも立ち上がり、既に先を走っている陸軍を懸命に追いかけ始めた。
痛くても苦しくても辛くても、走らなければ殺される。
大きく切ってしまった頬から流れる血を袖で拭い、基地で無事に眠ることを目標に走し続けた。
目に入った砂が痛い。 帰ったら洗おう。
そして食事を摂って、同じく訓練を終えた兄弟と共に、仲良く川の字で寝るのだ。
あぁ、傷の消毒と洗濯もしなくては。
先を走る陸軍を追いかけながら、陸自はぼんやりとそう思った。
次に海自。
海軍の指示は、肺活量を確かめるという名目だが、5分間息を止めろという無茶なもの。
こうしなくたってわかるはずだというのに。
陸自が長く苦しんでいたことに比べれば、比較的短いと言えるだろうが、 一歩間違えば苦しんで死ぬ危険もあるのだ。
(そろそろ限界だ…今何分経った…?少なくとも、5分ではなさそうだが…)
肺の中いっぱいにあった酸素も、段々と薄くなり死を実感させる。
生存本能は生きるために顔を上げさせようとするが、海自は手を震えさせながら無理矢理に抑え込む。
あと少し、きっともう少しで終わる。
その少しは、どのくらいだろう?
「ッ…!」
もう無理だ!
顔を上げようとした瞬間、上から頭を押さえつけられた。
「まだ5分経ってないよ。僕が良しと言うまで起き上がるんじゃない」
「ごぼッ!ごぽッ…こぽッ……」
力を尽くして暴れるものの、酸素がない状態で無理はできない。
更には海軍の方が力が強く、海自は沈められることしかできなかった。
「抵抗とか生意気だね〜君」
海自の頭を水に浸けながらタイマーを見つめる。
静かには時を表わすそれには、4分11秒の文字。
まだ解放する気などないようだ。
海自は既にピクピクと痙攣していて明らかにまずい状態だが、手に込める力は一向に緩めていない。
「ん、良し。5分経ったよ」
海軍は掴んでいた海自の頭を離し、タイマーを止める。
「おい、いつまでそうしてるつもりだ」
先程までしていた痙攣もなくなり、どうやら意識を失っているらしかった。
限界に達してから更に2分も水に沈められていたのだから、当然空気は保たないし、溺れるのも必然。
「はぁ…チッ、めんどくさい子」
海軍は海自を水から引き上げて座位にさせ、反応を伺う。
「おい、聞こえてるか」
「…ぅ…こぽッ…」
喉の奥から水音が鳴っていたが、ひとまず反応は確認できた。
海軍は前から海自を支え、それなりの力で背中を叩く。
「早く吐け。こんなことに僕の時間を使わせるな」
「ごぽッ……ぁ、げほッ!ごほッ!!」
ばっと切れ長の目を開き、海自は目を覚まして水を吐き出す。
「すーッ…はーッ…」
ようやく手に入れられた酸素を肺いっぱいに吸い込み、呼吸を落ち着ける。
「やっと起きたのか?遅いぞ」
「はーッ…ふー…も、申し訳ございません、海軍殿…」
「チッ…もういいから、次やるぞ。着衣水泳するから、向こうのプールまで来い」
「了解いたしました…」
顔色も悪く、海軍のせいで死にかけた海自を放り、海軍は冷たく指示を言い放って歩いて行った。
「…末恐ろしい方だ」
にこにこしていて柔らかな口調で話し、距離も近く、けれど期待を裏切れば冷たく突き放して豹変する。
「期待に応えなければ…」
知らず知らずのうちに、底なしの沼に足を取られている気がした。
最後に、空自。
航空機の整備を終えた空自と航空隊は、訓練のために広い演習場へと場所を移す。
「飛行訓練って、何をすればよろしいのでしょうか?」
「持久力を上げてもらう。雉以上のスピードは出ると言っていたが、それでは遅い。飛ぶことが得意というわけでもないのだろう」
大きな体に対し、雉の翼は小さい。
空自の翼は比較的大きなものではあるものの、体重を支え切って長く飛行することには向いていなかった。
「そ、そうですね…走る方が得意ではあります…」
「なので、まずは長時間の飛行に慣れてもらうということだ」
「なるほど!」
ニパッと笑って返事をした空自に口角を緩め、航空隊は指示を出す。
「30分程度、高度を維持して飛んでみろ。最低でも5メートルは飛べ」
「さ、30分もですか?!」
「どうした。まさかできないなどという戯言を宣う気ではあるまいな」
雉は鳥の中でも飛行が苦手で、何十分も飛び続けることはできない。
そもそもとして鳥は、渡り鳥でもなければそんなに長く飛ぶことはできないのである。
考えてもみて欲しい。彼ら鳥類は翼が腕の代わりであり、気流に乗っているとしても腕を振り続けることが苦しいのは想像に難くない。
更には、雉はバサバサと大きく翼を動かして飛ぶ鳥なのである。
飛ぶことが苦手な代わりに、足が速く瞬発力のある鳥なのである。
空自にしてみれば、もはやフルマラソンと同じくらい難しいことに思われた。
今ちょうど、陸自はそれ以上に走らされているが。
「…返事は」
「ひっ…は、はい…やります…」
「それでいい。やってみろ」
「はい…」
大きく翼を広げ、大きく音を立てながら翼を打つ。
ゆらゆらと空自の体が浮き始め、ある程度の高さまで飛び上がった。
「ほう、見事なものだな」
(あと30分も、このまま…?)
いつもならば少し移動したり、高いところから状況を把握したり、その程度の使用率。
困ったことに、相手は昭和の男なのだ。
見た目や言動は知的だとしても、結局は根性論を無理強いしてくる。
まともに飛べるようにしてやる、とは言われたが、長く飛べばいいという単純な考えに振り回されるこちらの身にもなって欲しい。
「っぐ…はぁ…」
空自はホバリングができないため、無駄に上下を繰り返して高度を維持する必要がある。
少しといえど、体全体が落ちれば翼には負荷がかかり、付け根は早々に悲鳴をあげた。
常に全力で羽ばたかねばならないために、立派な翼からは羽根が舞い落ちる。
逆光も相まって、空自はまるで天使のように見えた。
「ち、ぎ…れる…っ!」
薄く涙を浮かべた空自の悲鳴とSOSは、翼を打つ音と航空機の音に掻き消されていく。
「はぁッ…はぁッ…」
「おい、高度が落ちているぞ!もっと高く飛べ!」
「はっ、はひッ…で、でももう…ッ」
これでも耐えた方なのだ。
翼も持たない航空隊が何を言ったところで、空自の辛さはわからない。
わかろうともしていないのである。
高度が落ちていく。
地面が近づく。
「う…ぁ…」
風を打ち、空へ力強く舞い上がっていた空自の翼は動かなくなっていた。
多少の空気抵抗があったとして、十分な高さがあり、羽ばたく力も残っていない。
最後の力でなんとか着地することはできたものの、膝をついて息を切らしている。
「チッ…まさか5分も持たない駄鳩だとは。いや、鳩の方が飛べるか。情けない」
「ぅ…すみ、ま、せ…」
「立て、もう一度だ。その羽根が全て抜け落ちようと続けさせるからな」
無理やりに腕を掴み、航空隊は空自を立たせた。
「やれ」
「…は、はい…」
1人は限界を超えた走らせられ、1人は溺れた直後に泳がせられ、1人は生物的に難しいことを強要させられ、たった1日で身も心もボロボロになってしまった。
「は…は…」
「兄ちゃん、いたいよぉ…」
「2人とも、大丈夫か…」
熱中症と疲労で倒れた陸自と、翼を酷使して根元から出血しまった空自。
海自は疲れてこそいるものの、動けない、死にかけ、というような状態ではない。
食事すら摂れない陸自に水を飲ませたり、弱った空自を慰めたり。
2人が満身創痍なので、午後の訓練は中止になった。
海自は世話役として付けられているものの、本当なら原因である陸軍たちの責任だろう。
「よしよし、今日はもう大丈夫だからな…」
「兄ちゃんの足は、大丈夫…?」
「きっと大丈夫だ」
空自の手を握り、陸自の頭を撫でてやる。
寝顔が穏やかになった気がして、ほっとした。
「ほら、空自も傷が痛いだろう。早く寝て治せ。な?」
「うん…ありがと、兄ちゃん」
陸自の隣に寝転んで、空自はうつ伏せになる。
翼を更に痛めないようにしながら布団を被って、そのうち寝息を立て始めた。
「すー…すー…」
(予想よりもすんなり寝てくれたな…よかった…)
確かに、午前の訓練だけでこうも倒れてしまう自分たちは弱いのだろう。
鍛えているつもりになっていたのかもしれないし、相手が過剰なまでに鍛えているたけかもしれないが。
どちらにしても、レベルに合わせて鍛えるということを考えて欲しかった。
2人の寝顔を見ていると、こちらにも眠気が訪れてくる。
午後にこうして眠ることは子供以来で、少し抵抗感もあった。
だが、自分だってそれなりに疲れているし、身を休めるくらい良いだろう。
ベッドで眠る2人のそばで、腕を枕に眠る体勢になる。
「ふ、ぁ〜…」
珍しく大口を開けてあくびをして、ゆっくりと目を閉じた。
「ん゛ッ…ぅ…」
「ぁ、や、ぁッ…」
沈んだ意識の中、誰かの声が聞こえる。
苦しそうな、堪えるような、そんな声。
同時に淫らな水音も耳に入り、なんだか妙に嫌な予感がする。
「あ゛…?」
「おっ、起きたね。1番マシな癖に1番寝やがって」
すぐ近くから海軍の声がし、ビクッと身が跳ねた。
手足は抱き込められるように抑えられて動けず、しかしそれよりも目の前の光景に絶句する。
「え、ぁ…?」
寝起きでぼんやりしていた視界がクリアになり、その鋭い瞳が捉えたものは地獄であった。
「いッ゛♡いやぁッ…!みな、ぃ、れ…ッ♡」
「り、く…?」
ベッドの上で、眠る前までは苦しそうながらも健やかに寝入っていた陸自が犯されている。
掠れた声で見ないで見ないでと繰り返し、細い手で顔を隠し、泣きながら言い続けているのだ。
よく見えないが、陸自と陸軍の後ろでは空自も犯されているようで、抑えたような喘ぎ声が小さく聞こえてきた。
「へ…?」
「体力増強訓練ってやつ?あいつらがもう動けないって言うから、わざわざここでシてやってんの」
「な、え…あ…」
「みないでッ…いやッ…んぁッ♡ひッ、やらッ♡」
喘ぎ身を震わせる陸自の姿は見るに耐え難く、なのに目が離せない。
助けたくて、なんとかしてあげたくて体を動かそうとしても、海軍との力の差は歴然。
疲れた体は一寸たりとも動くことなく、ただ犯される兄弟の姿を見届けるしかできなかった。
「見ないでって言ってるんだから、そんなにガン見しないであげてよ。あ、もしかして興奮した?君も目覚めたことだし、今から同じことシてあげるからね」
「え…?い、いや…いや、です… 」
「嫌とかないから。服脱げよ」
「や、やめて、ください…っ」
手足は既に押さえられているのだ。
海軍は海自の声など耳に入らない様子で、衣服を脱がしてくる。
尾を振ってなんとか逃れようとするが、脱がされて押し倒され、正常位の体位にされた。
「ひッ…や、やめ、 やめてください…!」
対抗できないようにきつく握られた手首は痛く、恐怖から思わず涙が出てくる。
「うるさい、黙れ」
「ん゛むッ!?」
海軍の整った顔が近づいてきて、唇に柔らかい感触がした。
驚いて口を開けば、ぬるっと何かが侵入してくる。
「あ゛ッ」
「んっ…む、ぺろッ…」
「ふーッ、んむッ…んッ」
腕は片手で纏められ、脱がされて衣のない股の間に張り詰めた熱いものが当てられた。
ハジメテを全て奪われる。
そう直感し、不快感と恐怖で本格的に泣き出してしまう。
「んッ、んぐッ…んんッ!?お゛ッ…?」
喉奥にまで舌をねじ込まれては、えずいてピクピクと身を震わせた。
何かするたびに反応する海自が愛らしくて仕方がなく、海軍はグリグリ先っぽを押し付けながら、蛇のように長い舌でキスを続ける。
海自に酸素が足りなくなっても、意識が半分飛びかけていてもだ。
初めての深い深いキスに対応して息継ぎができるほど、海自は器用ではない。
息ができぬまま弛緩していく身を預け、ついには後孔への侵入を許してしまった。
「ぇお゛ッ♡」
体内を何かに弄られているような、気味の悪い感覚。
「んっ、いいね…♡処女はよく締まる♡ 」
「い…い゛わッ、なぃで、くださ゛ぃ…」
お腹の中が窮屈だ。
苦しい。
キスからは解放されたが、まだ苦しいままだった。
床が硬くて痛い。
奥まで挿れられて痛い。
息ができない、お腹の中が苦しい。
「はッ…はッ…」
息をしようと腹に力を込めると、中に居座る海軍のことをはっきりと認識してまた辛くなった。
「苦しいか?今苦しくなくしてやるから、ちゃんとぜーんぶ受け止めるんだぞ♡」
「い…いや…いやぁぁ…!」
子供のように泣きじゃくる海自を慰めるように撫で、海軍はもう一度キスをする。
付近で犯されている陸自と空自の声が、やけに近くで聞こえてきた。
「ひっく…う……うう、ひぅ……ぅ……や……ぐすっ……ふえ……」
散々犯され、凌辱された日の次の…どのくらいだろう。
朝ではないようだが、 陸自は隣で啜り泣く空自の声で目が覚めた。
(…服が、着せられている…海自も隣にいる、みたいですね…)
後処理はされて、服もきちんと着せられている。
しかし、昨夜の記憶が消えるわけではない。
「ひぅ……やぁ…ひっく…うぅ……うう、にぃ、ちゃ……うえ……っ」
空自が泣いている。
慰めなくては。
「…空自」
「ぐす…にいちゃ…?」
きっと寝られなかったのだろう、真っ赤腫れた目の下には、対比するように真っ黒なクマが見られた。
「大丈夫…もう大丈夫、ですから…」
自分の声も空自の声も掠れていて、蚊の鳴くような声にしかならない。
それでも、昨夜とは異なる静寂すぎる空間ではよく聞こえた。
「先代様、たちは、もういません…安心してください…」
抱きしめて頭を撫でてやれば、空自もおずおずと腕を回してくる。
「にいちゃ…にいちゃん…こわかった…」
「もう大、丈夫、ですよ…兄ちゃんが、いますから…」
喉に違和感を感じ、多少詰まりながらも空自をあやす。
ぎゅう、と服を握る手や自分と同じくらいの体は震えており、陸自を呼び続けていた。
「いたかった…こわかったよ…じぶんが、じぶんじゃなくなる、みたいで…いやだった…」
「辛かったです、ね…でも、もうあの人たちは、ここにいませんよ…いたいこと、 する人たちは、いません…」
ふっと壁にかけられた時計を見ると、針が示していたのは午前4時30分。
起床は6時なので、まだ少しならば眠る時間もあるはずだ。
「ゆっくり、休みなさい…少しでも眠れば、辛さは減りますからね…」
「ほんと…?」
「ええ、きっと…ほら、おやすみなさい…」
「ん…おやすみ、兄ちゃん…」
まだ涙が渇くことはなさそうだが、ひとまず寝かしつけることには成功した。
陸自は心底愛おしそうに頭を撫で、布団をかけ直し、小さな寝息に安堵する。
「…海自、起きている、でしょう…」
「…バレていたか」
背を向けたまま、海自は返事を返した。
「途中から、寝息が聞こえませんでした、からね…」
「流石…空自は」
「寝ましたよ…可哀想に、トラウマになってしまった、ようで…」
空自の頭を撫でてやると、無意識でも頭を擦り返してくれる。
懐っこく穏やかな空自には、涙など似合わない。
まして、喘がされて天を仰ぐような姿などもっての外だ。
守れなかった自分に苛立ち、陸自はきゅむと唇を噛む。
「…そうだろうな…」
静かで低い海自の声は、昨夜の絞り出すような悲鳴とは全く違う。
こちらの声の方が聞いているはずだというのに、あの時のことが印象づいてしまって、脳裏から離れない。
海自が陸自の方を見ないのだって、よく見えるようにと股を開かれ、無抵抗に犯される姿が目に焼きついてしまっているからだ。
「…体は、平気か」
「…まさか。足も、喉も腰も…あの人の、せいで、散々な有様ですよ…」
過度なランニング、その後の激しい性行為、伴って上がる悲鳴のような喘ぎ声…全身が重苦しく、勤勉な陸自がずっと横になっていたいと思うくらいにはきつかった。
「もう…俺たちも、寝よう」
「…ですね、きっと、今日も訓練はある、でしょうし…」
「あぁ…おやすみ」
「おやすみ、なさい…」
ようやく休むことができたが、数時間後にはまた昨日と同じことをしなければならない。
吐いてしまいそうなくらい気持ち悪くても、寝て体を休めなければ絶対に保たないのだから。
早朝から辛い訓練に身を投じ、午後からは激しく犯される。
そんな日々を10年。10年も続けてきた。
幼かった祖国は独立し、今や立派に国際社会で確かな地位を獲得している。
様々な事件も起き、その度に解決してきた。
自衛隊の3人も遥かに強くなり、成長しているのだ。
現国が強くなれば、旧国は弱くなる。
これはこの世界の理であり、覆ることなどそうあることではない。
陸自がいつも通り訓練を終えた日のこと。
「…最近、先代様と訓練することが減ったような…大抵、指示を出して終わりになっている…」
人の体とは恐ろしいもので、慣れてしまうとなんなくこなせるようになってしまった。
しかし、以前は先導するために先を走っていた陸軍は、共に走ることをしなくなっている。
なぜだろうかと考えた時、陸自はようやく気づいたのだ。
「…あの人たちは旧国の者…祖国様がお強くなられたから、先代様たちは力をなくしたのでは…?」
思えば、陸軍たちが参加する訓練の数は目に見えて減っていた。
今までは全ての訓練に口や顔を出し、陸自たちを苦しめていたが、最近は射撃訓練や座学、武器の手入れなどでしか姿を見かけない。
否、姿を見せない。
体力増強と称して行われていたレイプも、めっきりなくなった。
「あぁ…どうして今まで気が付かなかったのでしょう…」
恐怖と暴力で支配され、1日を無事に終えることばかりが頭にあったせいだ。
自分たちはもう鎖を千切る力があるというのに、気が付かずに縛られていた。
「防人として如何なものかとは思いますが…初日、空自のあの顔を見た時、ワタクシは決めたのです。 絶対に思い知らせてやる と」
温厚で正義感の強い陸自らしからぬ、純粋な敵意。
自分だけでは飽き足らず、大切な弟たちの身も心も汚し、傷つけたあの3人を、許すことなどできなかった。
サーッと頭の中のもやが消えていく感覚がする。
2人と話をしなくては。
これまでは自分たちの寝床で無理矢理させられていたが、今度は自分たちが襲いに行き、無理矢理する側になるのだ。
長年追い詰められ、じわじわと心を折られた陸自たちは擦り切れていた。
ドス黒い先代たちに汚され、もうあの頃の白さには戻れない。
失うものは何もない。全てを奪われたのだから当然だ。
あるとすれば、今や自立した祖国ただ1人。
彼らが祖国に危害を加えられるはずがない。
いよいよ、復讐に手を染める時だ。
「海自、空自」
「どうした」
「?兄ちゃん、嬉しそうだね。何かあった?」
「ええ、良いことを発見しました」
訓練終わりの午後、3人は集まって話をしていた。
陸自の顔を見れば、それが3人にとって良いことであるとすぐにわかる。
こんなに楽しそうな顔をするのは、いつぶりだったか。
「2人は気が付いていますか?あの3人が、ワタクシたちと訓練をする回数が減っていることに」
「…言われてみれば、確かに」
「航空機の整備とかでしか、会ってないかも…」
「現国の力が増せば、旧国とそれに伴う彼らは力を失う…祖国様はお強くなられました。ワタクシたちも、あの頃とは比べようもないほどに強くなりました」
「!…まさか、陸自お前…」
「察しが良いですね、海自」
「ねえ兄ちゃん…もしかして、やり返す気なの?」
「ええ、満点の回答ですよ、空自」
にっこりと微笑み、陸自は言った。
今こそとびきりの恩返しを。
夜。
自衛隊の3人は、帝国の3人がいる部屋へと忍び込んだ。
「随分遅かったな」
「…」
「もう刀の手入れが終わってしまったぞ。肉体が鍛えられたとて、頭は回らないままか」
「そう言ってやるな、来たのだからよしとしよう。賭けは俺の勝ちだがな」
「やぁやぁ、歓迎しよう。僕たちに復讐しに来たんだろ?存分にやるがいいさ」
待っていたのは、普段と変わらない3人の姿。
陸軍は刀の手入れ、海軍は読書、航空隊は航空機の模型を作っているようだ。
「わかっていたのですか」
「あぁ、いつ来るかと賭けをしていた。後2時間早ければ、私の勝ちだったというのに」
「悪趣味な…」
「年寄りってもんは暇なのさ、海自クン。力は衰え、体力もなく、ただ暇を潰すために賭け事をしたり、誰かを貶めたり…最高に最悪だろう?」
「…全くですね」
相手は今からすることをわかっているのだろう。
陸軍は刀を、海軍は本を、航空隊は模型をそれぞれ片付け、3人でベッドに乗り上げている。
「覚悟があるなら、来るといい」
妖艶に笑う陸軍には勝てない。
陸自も、海自も、空自も知っていた。
自分たちは彼らに勝てないことを。
それでも、形だけは“上”としてありたいものなのである。
「顔は見たくないか、それともバックが好みか?」
「黙ってください…」
「気に障ったようだな、素直に謝罪しよう 」
「黙ってくださいってば!」
陸軍の細い腰を掴み、勢いのままに挿入した。
「んッ…ぐ…♡はは…随分と余裕のない動きだな?♡そんなに私が嫌いか?♡」
甘ったるい猫撫で声で言葉をかけられながら、陸自は今までされてきた仕返しとばかりに律動する。
響く音が相手のトラウマになるようにと祈り、同時に決して叶わないことなのだろうと思いながら。
「ん♡あ゛ッ♡」
甘い声で鳴く陸軍と自分を重ねて辛くなっては、忘れられるようにまた動く。
心地良さそうに身をくねらせる陸軍にはこれっぽちも響いていないようだが、もう、いいのだ。
一緒に復讐すると決めた海自は、初日に溺死させられかけたことを忘れてはいなかった。
海軍の首を掴み、ぐっと絞める。
「ぐ…ぎ…」
「……」
目立った抵抗もせず、ただニヤニヤしながら大人しくしている海軍は不気味だった。
「ぎッ…」
一層力を込めてから 手を離せば、けほけほと咳き込んで微笑まれた。
「いきなり、首絞めプレイ?ハードだねぇ…」
「ふざけないでもらえますか」
「ふざけてないよ。おいで?復讐させてあげる♡」
どこまでも腹の立つ、どこまでも敵わない男。
それが大日本帝国海軍という存在だった。
復讐だと言ったって、彼らからすれば恐怖の塊の姿は変わらない。
時間の止まった姿形は、いくら力がなかろうとトラウマを刺激する。
「くそ…っ」
「あはぁ〜ッ♡僕に興奮してんの?♡思ってたよりッ、イイねッ♡ 」
陸自と同じく、勢いで。
痛々しく跡が残る首元を見せつけながら、海軍は自ら腰を揺する。
なんて淫乱で、妖艶な仕草だろう。
「っ…」
「ぅ…ぎゅッ…♡」
また首をきつく絞めながら、海自はそれに応えてやった。
淫らな水音が鼓膜を打ち、首を絞められているというのに気持ち良さそうな海軍の顔に苛立つ。
苦しめるためにしているのに、どうしてそのような顔をするのか。
普通嫌だろう、今まで犯していたやつに犯されるのは。
首を絞められ、無理矢理に挿れられて苦しいはずだろう。
どうして、どうしてそんな顔をする。
海自にはわからない。
陸軍と海軍が2人を煽る中、航空隊は特に何を言うでもなく、空自の好きにさせていた。
犯されるのはもちろん、首筋に噛みつかれたり、キスをしながら舌を軽く食まれたり。
隣で激しく交わっている中、かなり緩やかで静かなものだった。
「…なんで、何も言ってくれないんですか…」
「言う必要がないからだ。…は…♡」
せめて抵抗の一つでも、煽りの一つでもあれば。
自分が嫌だったことと同じことをして、相手に対しての罰になれば 。
これではまるで義務のようだ。
甘い声とまではいかないが、ふっと漏れる吐息は随分と気持ち良さそうで。
無表情から変わっていないが、頰は紅潮し、微かに目が潤んでいるように見える。
喜んでいる、少なくとも空自にはそう見えた。
自分が性根の腐ったレイプ犯と同じ思考回路でなければ、今目の前で犯されている彼は喜んでいるように見える。
陸軍も、海軍もだ。
怒りに任せた激しい律動に堪え、シーツをぎゅうと握りながら腰を突き上げて、えらく愉しそうではないか。
自分たちがやられていた時は苦しかったことを、彼らは喜んで受け入れているように見えるのだ。
激しくぶつかるわけでもなく、空自たちの緩やかな行為からはぬちゅ、ぬちゅと粘液の音しかしない。
航空隊はもっとと言わんばかりに腰を押し付け、くねらせ締めてくるが、それではダメなのだ。
それでは、まるで、好きな人と、結ばれたような…
「「「ずっと、愛しているよ♡」」」
どこまで行っても、彼らは“先”の人なのだ。
コメント
13件
陸海空軍がもっと♡♡♡るの見たい(欲望) めっちゃこの設定好きかも!
海軍の性格が癖に刺さりまして…コメントせずにはいられませんでした。 いつまで経っても先人には敵わない後輩ちゃん達可愛すぎます💕💕💕 自衛隊達の紹介文がおしゃれで惚れました、ありがとうございます!🥰🥰🥰
リクエスト受けていただきありがとうございます!! 空自がものすっごくかわいいですね(( どうがんばっても苦しんでくれない辛さいっそのこと現国の祖国様を犯したら苦しんでくれそうですね