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「もっと、私の身体を支えて、抱いていてくれないと……」
口にして自ら上半身を起こすと、不意討ちで私の胸に体重を乗せるようにもたれかかってきて、
「きゃっ…」と、思わず声が漏れた。
違う、違う……服を脱がせてほしいだけでって……ああ、違う! 服を脱がせてほしいだけだからっていう、その思考もやばいってば──……。
「あっ、あの蓮水さん……ちゃんと服は、その、だっ、抱いたりなんかしなくても、脱がせますから……だからその、もうちょっと、離れていてください……」
「……どうしてだ?」
ああ、伝わらないー。胸元に感じる身体の温もりと、鼻先に漂うムスクの微香にくらくらしちゃいそうで、どくんどくんと鳴り響く心臓は今にも爆発してしまいそうだった──。
「……熱いんだ……早く、脱がせてほしい……」
だから、そのセリフは〜。こっちの気などまるで知らない風で、首筋に唇が付きそうなほど間近でそう急かされて、
「……わ、わかりましたから、どうか、あんまりくっつかないでください……」
気を落ち着かせようとひと息を吐き出すと、意を決して向かい合い、彼の肩からスーツの上着を落として袖を一つずつ抜き取った。
付いてしまっていたシワを両手でピンと引っ張って伸ばし、クローゼットのハンガーに掛けると、
「これで、いいですよね?」
冷や汗をかきそうなひとときがようやく終わったと、ホッと胸を撫で下ろして尋ねた。
「……まだ、熱い」
ところが、返って来た一言に、
「……えっ……」
愕然として、言葉を失った──。
どうやら、冷や汗が止まらなくなるような時間は、まだ終わってはいないらしかった……。