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「へぇ、犬の悪魔か。犬が怖い人もいるだろうからそこそこ強いんだろうね」
「すみません、油断しました」
「耳が2個増えちまった…」
そろそろ日も暮れる頃、二人はマキマに報告中だった。頭の上に生えた物が気になるようで、無意識にそれをピコピコと動かす。
「犬の耳が生えちゃったなんてあるんだ」
「悪魔は倒したはずなんですが…」
うーん、とマキマは頬杖をついた。夕日に当たる髪の色がキラキラとしている。
「うーん、分からないけど倒したならその効力は無いはずだけど…調べておいてもらうね」
「ありがとうございます」
一旦静まった部屋の中にパタパタとしっぽが振れる音が響く。デンジはマキマに会えた嬉しさからかブオンブオンとふさふさのしっぽを振っているようだ。
「…騒がしいな」
アキがデンジのしっぽをきゅ、と捕まえると
「キャン?!」
と、情けない鳴き声が聞こえた。
「デンジくん、本当に犬になっちゃったね」
「ったく、早パイ!急に掴むなよ!」
「悪い…」
じゃあ、何かあれば報告してね、というマキマの言葉で二人は部屋から出た。
「なーんか落ち着かねぇ…」
「そりゃ耳も倍だし、鼻だって効くだろうからな」
「たしかにいつもより早パイの匂いするかも…?」
スンスンとアキの肩に近づき匂いを確かめた。気恥しさからか、デンジを手でぐいっと引き離した。
「んん?でもそんなに変わんない…?」
悪魔もそれなりに厄介ではあったし、少し遠くの場所だったため疲れた様子で二人は廊下を歩いた。
デンジのバディであるパワーは、単純に疲れたのかそれともマキマに会うのが嫌だったのか報告には来ず、この先の外のベンチで待っているらしい。
「じゃあ、デンジは先にパワーんとこ行ってろ。俺は報告書取りに行ってくる。」
デンジの様子のこともあるので、報告書は自宅でやるように、とマキマに先程言われていたのを思い出した。
「へーい」
デンジの気の抜けた返事がいつにも増して疲れているように聞こえた。
「ぷっ、いつ見てもその頭と尻尾、笑えるのぉ」
「あァ〜?頭はパワ子とんな変わんねぇだろ」
「な?!ワシのはそんなちんちくりんじゃないわ! 」
先程までぐでっとしていた様子はどこへやら。随分と元気なようだ。
「あー、早パイ今日はアイス買ってくれっかなァ」
「チョンマゲはチョロいからのぉ、頼めば買ってくれるじゃろ。100個は買ってくれんとな 」
「おい、お前ら帰るぞ」
「な〜アキぃ、アイス買ってくれよ〜」
「アイス買え!」
デンジの耳としっぽが増えたことで、きゅるきゅる感が増しになっている。
(昨日も買った、しかも朝いたずらされた、買わない買わない…)
「ありがとうございましたー」
気がつけばスーパーに寄って今日の晩御飯の食材とアイスの袋を持っていた。
「…負けたッ!」
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「うぁー疲れた…」
帰り道にアイスを食べ、晩御飯を食べ終わったと思ったら
「触らせろ!!!」
と、パワーに揉みくちゃにされた頭としっぽはボサボサになっていた。
「う”〜、パワ子のやつ、雑なんだよ…ニャーコにはあんな触り方しねぇくせによ」
「ふ、整えてやるから来い」
アキは片手にブラシを握り、ソファの前に胡座をかいて優しい目でこちらを呼んでいる。
う”ぅ〜…
と、しばらく葛藤したあと、
「うん…」
と、トコトコとやってきた。
アキは優しくデンジの頭をブラッシングしながらテレビを見ていた。それが心地よくてウトウトと船を漕ぎ始めてしまった。
「よしよし…」
と、デンジの頭を優しく撫でる。頭から顎、お腹まで撫でていき、本当にアキのペットのようだった。
「ん〜…もっと撫でて…」
アキはしばらく撫でていると、デンジはいつの間にか寝てしまっていた。その気持ちよさそうな寝顔に思わず笑みがこぼれた。
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「くせーんだよ!」
「はぁ?!急に何なんだよ」
いつも通りに朝食を食べたあと、着替えを済ませ、デンジとパワーを玄関で待っているとデンジの大声が耳に響いた。
「だーかーらァ、その上着!」
「これか?最近クリーニング出したばっかだし、昨日しか着てねぇよ」
「なんか…知らんやつの匂いする…香水みたいな」
耳やしっぽだけでなく、嗅覚まで犬になってしまったらしい。これは、マキマさんに報告だな。
「香水?…あぁ、昨日書類取りに行ったときに会った事務の人か?」
「そーかも?…早パイからそんな匂いすんのヤなんだけど」
「細かいやつじゃの〜!」
パワーが乱暴にデンジの肩を組む。
「はァ…俺、なんか変だよなァ」
コンコンとノックし奥から、いいよ、と声がし部屋に入る。そこにはコーヒーを飲みながら3人を待っていたマキマがいた。
相変わらずデンジは嬉しそうな表情で、パワーは怯えている様子だった。
「デンジの嗅覚も犬になりました」
「そう、でも朗報だよ。調べてもらったら明日には戻るみたいだよ、よかったね」
「ほんとッスか、良かったぜ〜」
夜、アキは酒を飲みながらデンジを膝の上に置き、ひたすら頭を撫で回していた。
「まぁワシは猫派じゃからの!!!」
と、パワーは既に昨日一昨日で飽きたみたいだった。
「はァ…犬耳も撫で収めだな」
「まぁ、撫でてても許してやるよ…」
と、照れくさそうに、だけれども嬉しそうに頭をアキの手に寄せた。
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「っしゃぁ!!!」
デンジは起きて鏡を見ると、犬耳もしっぽもさっぱり綺麗になくなっていた。嗅覚も元に戻り、いつも通りに朝食を食べた。
「…もう撫でられないのか」
アキは少し名残惜しそうにデンジを見つめた。アキのその言葉を聞いたとき、心の中がモヤッとした気がした。
デンジは少し照れたようにこちらを見つめている。ソワソワとしていて落ち着かない様子だ。まるで小さい子供みたいだ。
「…犬じゃねぇと、撫でてくんないの」
「……な、撫でる…」
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書きたいとこだけ書いてったら落ちもヤマもない見事な801が誕生してしまった