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#青春ラブコメ
ラスターダノン
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おねぎ
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翌日。放課後の教室。夕闇が教室を赤く染め上げる中、カチャリとドアの鍵が閉まる音が響いた。
「天野さま。本日もお約束通り……お付き合いしていただけますのね?」
美咲はどこか弾むような声で微笑みながら、向かいの席に腰掛けた。
昨日の今日だ。その手元にはすでに、寸分の狂いもなく整えられたあの【絶対防衛(フルロック)】のデッキと、完璧なデュエルマットがセットされている。
その瞳には、「今日はどんなロジックで私のロックに挑んでこられるかしら?」という、知的な愉悦と期待が爛々と輝いていた。
すまん、九條ヶ原。
君が期待しているような『美しく洗練されたメタカード』なんて、僕は一枚も持ってきていない。
(僕が持ってきたのは……【混沌(カオス)】だ!!)
「ああ、もちろんさ。今日もよろしく、九條ヶ原さん」
僕は平静を装いながら、胸ポケットから**【混沌のダイス・ギャンブル・パニック】**と名付けた、一夜の過ちの産物を取り出した。
「ふふ、良い目つきですわ。では……『デュエル』開始(スタンバイ)ですの!」
「「デュエル!!!」」
**【第1戦:先攻・美咲】**
「私の先攻ですわね。魔法カード『暗黒の聖域』を発動。さらに『絶望の番人』を召喚——昨日同様、天野さまの動きはすべて封じさせていただきましたわ」
1ターン目から寸分違わぬ完璧な盤面(ロック)。
美咲は「さあ、どう崩してきますの?」と優雅に顎を引いて僕を見つめてくる。
(ふっ……正攻法で崩せるわけねえだろ!!)
僕のターン。ドローしたカードを確認する。
引き当てたのは——昨晩、テンションだけで採用したあのクソカード。
「僕のターン! 手札から速攻魔法——**『運命のダイス・トス』**を発動!!」
「……は?」
美咲の眉が、ピクッと跳ねた。
「そ、そのカードは……? 相手の発動を無効化する『暗黒の聖域』の対象外……!? いえ、発動時にお互いのプレイヤーがダイスを振り、出た目で効果が変わる……ギャンブルカード……!?」
「そうだ! 効果発動! サイコロの目が『1』なら僕の負け! だが『6』が出たら……お互いの場と手札のカードを、**すべて墓地へ送る!!**」
「なっ……!?」
完璧なお嬢様の顔に、ついに生じた巨大な亀裂。
計算と理論で構築された彼女の脳内に、「確率6分1の暴力」という理不尽が叩き込まれた瞬間だった。
「さあ九條ヶ原さん! 振ろうぜ、サイコロを!!」
「くっ……! そのような不確定要素(運ゲー)に頼るなんて……天野さま、正気ですの!?」
美咲は狼狽しながらも、美しく手入れされた手で付属のサイコロを振った。
コロコロコロ……。
出た目は——**『6』**。
「「あ」」
ドカーーン!!(イメージ音)
美咲が1分半かけて組み上げた最高峰のロック盤面と、僕のなけなしの手札が、たった一個のサイコロの目のせいで一瞬にして全滅し、崩れ去った。
「私……私の……完璧な盤面が……っ!?」
美咲は口をぐぬぬと開けたまま、呆然と自分の墓地を見つめている。
その顔! それが見たかったんだよ僕は!!
「ふははは! 見たか九條ヶ原さん! これが僕の……僕の新しい戦術だ!!」
「……天野さま」
美咲がゆっくりと顔を上げた。
その瞳から清楚なお嬢様の光が消え、底知れない「闇のゲーマー」の粘着質な執念がドロリと溢れ出していた。
「……面白いですわ。理論をドブに捨て、運にすべてを賭ける……そんな愚策で私に挑もうというのですのね……?」
(ヒッ……!? 逆効果だったか……!?)
「私のターン! 墓地から『絶望の番人』を再展開! さらに手札破壊ループを……!」
「僕のターン! 魔法カード**『ジャンケンポン・ディザスター』**発動!! 召喚権を賭けてジャンケンだ!!」
「ジャンケン!? なぜカードゲームで肉体のジャンケンをしなければなりませんの!? ッ……最初はいの、ジャンケン……ポンッ!!」
「勝ったあぁぁぁ!!」
「キーーーッ!! 理由が分かりませんわ!!」
……そして、放課後の教室は、カードゲームの皮をかぶった**「理不尽運ゲー地獄絵図」**と化した。
ジャンケンで勝ったらカードを引く。
コイントスで裏が出たらお互いのライフが半分になる。
山札の上からお互いにカードをめくり、星の数が多い方が相手にチョップを入れる(※ルールを勘違いした美咲のデコピンが飛んできた)。
「はい、僕の勝ち! ギャンブル成功!」
「くやしい……! もう一回ですわ! サイコロを持ってきなさいな天野さま!!」
「九條ヶ原さん、さっきから一勝もできてないのに、めちゃくちゃ楽しそうだな!?」
「楽しむわけがありませんでしょう!? こんな……こんな根拠のない運任せの勝ちに……私……私が納得いくはずが……ッ!!」
そう言いながらも、美咲の頬はリンゴのように真っ赤に染まり、その瞳は今日一番の輝きを放っていた。
理論値100%の最強お嬢様が、僕の持ち込んだ100%のネタ構築に振り回され、絶叫し、ムキになってサイコロを振り続けている。
(勝率は……相変わらず僕の2勝18敗だけど)
でも、昨日のように一方的にしゃぶり尽くされて干からびるだけの対戦じゃない。
目の前にいるのは、伝説のビッチでも、冷酷な魔女でもない。
ただただ、僕と一緒にカードを囲んで、子供みたいに喜怒哀楽を爆発させている……等身大の、めちゃくちゃ可愛い女の子だった。
「天野さま! 次はコイン投げですわ! 私は表に賭けますわ!!」
「よし乗った! 放課後はまだまだ終わらないぞ、九條ヶ原さん!!」
夕闇が深まる教室に、僕たちの(カードゲームとしては最低で、放課後のラブコメとしては最高の)歓声が、いつまでも響き渡っていた。
コメント
1件
うわあ、めちゃくちゃ面白かったです!🤍 完璧なお嬢様が「運ゲー」にこんなに翻弄されるなんて、想像以上に可愛くて笑っちゃいました。特に「サイコロ一個で完璧な盤面が崩れる」場面、最高でしたね。九條ヶ原さんの「くやしい…!」って顔が浮かぶようで。勝率は2勝18敗でも、二人でキャッキャしながらやってる空気感がもう尊すぎます…!次回も楽しみにしてますね!