テラーノベル
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放課後の第一校舎三階、二年B組の教室。 普段なら静まり返っているはずのその密室から、ドカバカとただならぬ叫び声と、謎の衝撃音が響き渡っていた。
「さあ天野さま! 参りましょう! 最初はいの……ジャンケン、ポンッ!!」
「勝ったあぁぁぁ!! 召喚権獲得!! 行け、僕のギャンブルモンスター!!」
「キーーーッ!! 理不尽ですわ! なぜカードの勝負で肉体のジャンケンをさせられますの!?」
ガラガラと鍵の閉まったドアの隙間から漏れ出る、ただならぬ狂熱。
夕闇が差し込む廊下の陰では、数人の男子生徒たちが生きた心地のしない顔で身を潜めていた。
「ひ、ひえぇ……おい見たか今の……? 九條ヶ原さんのあの叫び声……」
「『肉体のジャンケン』って言ったぞ……天野の奴、一体どんな恐ろしいプレイを強要されてんだ……!?」
「天野の奴、昨日も『もう手札(体調)が残ってねえ!』って絶叫してたろ……? 毎放課後、あの密室で『100人斬りの魔女』に骨の髄まで絞り尽くされてるんだ……」
男子生徒たちはガクガクと膝を震わせ、哀れな生贄——天野カケルに南無阿弥陀仏と心の中で手を合わせた。
少し離れた女子生徒たちのグループもまた、複雑な表情でその扉を見つめている。
「九條ヶ原さんって、誰とも群れない高嶺の花だと思ってたけど……」
「天野くんの前だと、すっごい感情露わにして怒ったり笑ったりしてるよね」
「昨日なんて、九條ヶ原さんが天野くんのおでこに指近づけて『おしおきですわ』って言って、天野くんが『参りました!』って悲鳴あげてたよ……」
「まさか……天野くんのこと気に入って、完全に調教(手なず)けてるの……? 恐ろしい……」
女子たちの間でも、「100人斬りの伝説」は妙な生々しさをもって補強されつつあった。
そんな中、一番ドアに顔を近づけて身悶えしていたのは、カケルの友人であり学園の情報屋・風早トモヤだった。
「天野……っ! お前マジで正気かよ! 昨日は『サイコロの目が6だから全滅だ!』とか『運ゲーの暴力ですわ!』とか、怪しすぎる暗号で会話してただろ……! 一体どんな悪魔の儀式に洗脳されてんだよ……ッ!」
トモヤはカケルを救い出そうとドアノブに手をかけるが、カチャリと固く閉ざされた鍵に行く手を阻まれ、壁に頭を打ち付けた。
学園中が恐怖と困惑に包まれる中——。
校門の前に停められた黒塗りの高級外車のかたわらで、九條ヶ原家の老執事・桐生だけが、穏やかな笑みを浮かべて校舎を見上げていた。
(……ふふ。美咲様が、あんなにも年相応のお声で笑っていらっしゃる)
世間からは「男を破滅させる魔女」などと恐ろしい誤解を受けている我が家の令嬢。
だが、その実態はただの極度に世間知らずで純粋な、そしてカードゲームを愛しすぎる少女に過ぎない。
(天野カケル様……。美咲様に、初めて『等身大でぶつかり合えるライバル』という存在をくださったこと、心より感謝いたしますぞ)
桐生はそっと胸に手を当て、深くお辞儀をした。
そして、噂の渦中にある密室の中では——。
「天野さま! 次はコイン投げですわ! 私は表に賭けますわ!!」
「よし乗った! 表が出たら君の勝ち、裏が出たら僕の勝ちだ!」
「絶対にお仕置きして差し上げますわ! えいっ!」
くるくると夕日を浴びて舞い上がる100円玉。
落ちたコインの目を覗き込み、ギャーギャーと子供のように叫び合っている二人。
周囲からは「魔女に囚われ、密室で怪しいお仕置きを受け続ける哀れな男子と、それを嗜むドSなお嬢様」という最悪の構図で見られている二人だったが、その実態は——。
ただただ、ギャンブルカードとジャンケンでムキになり、放課後を全力で楽しんでいるだけの、最高に愛おしいふたりなのだった。
コメント
1件
あーもう、この話サイコーすぎる!!😭💕 周りから「100人斬りの魔女」とか「調教」とかマジで物騒な噂されてるのに、実態はただのカードゲームとジャンケンで本気バトルしてるだけってギャップが尊すぎる〜!!✨ 特に桐生爺の「年相応の笑い声」ってセリフにグッときたよ…!周りは誤解しまくりだけど、一番近くで見てる人がちゃんと理解してるの、エモすぎて泣く🥺 あと風早くんの「悪魔の儀式って暗号やばい!」ってパニックになってるのも可愛すぎるw この作品、誤解と真実のギャップが最高のスパイスになってて、読み終わった後めっちゃほっこりする〜!次の話も楽しみにしてるよ!!🌸
#青春ラブコメ
ラスターダノン
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おねぎ
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