テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
カメ吉
429
カメ吉
533
#幻想入り
カメ吉
2,811
報告書:SCP-360-JP
アイテム番号: SCP-360-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル
SCP-360-JPは、日本海溝の海底岩盤下1500mに位置する「サイト-81██」の深層特別封鎖区画に収容されます。
環境維持: 収容室内は複数の高出力プラズマバーナーにより、常時摂氏1500度以上の火炎に晒されます(継続的熱焼却プロトコル)。
空間拡張: 55%を占有した場合、自動掘削システムにより収容室を隣接する岩盤へ拡張します。収容室内は高圧環境および継続的な熱焼却に耐えうるため、収容室の壁面はタングステン合金および耐熱セラミックでコーティングされます。また、異常な空間拡張に備え、サイト周囲1km圏内の岩盤密度を常時計測してください。
情報災害対策: 毎朝5時55分の「増殖事象」を映像で5.5秒以上視認した職員には、即座にクラスA記憶処理を施し、カバーストーリー「実験事故からの救出」を適用します。
最終手段: 大規模な収容違反が予見される場合、サイト全体を核爆破し、岩盤崩落による永久埋設を実施します。
また収容維持に際し、SCP-360-JPから発せられる音声情報の感情的内容(悲鳴、懇願、罵倒等)はすべて無視されます。担当職員は精神汚染防止のため、定期的なカウンセリングを受けてください。
説明
SCP-360-JPは、一辺30cmのプラスチック製玩具箱の外見をした立方体群です。
置換特性: 半径30cm以内への生物の侵入、または開放の試みに対し、対象を内部へ強制的に吸引します。吸引後、外装は**拍動する筋組織(肉)**へと変質します。
増殖事象: 毎日午前5時55分、軽快な「ポン!」という破裂音と共に新規個体が生成されます。この個体は当初プラスチック製ですが、焼却処分に失敗する確率は約30%です。
音声: 各個体から発せられる音声は、波形解析の結果、特定の行方不明者との一致率**98.2%**を記録。主に発声者の苦痛や救助要請を示唆する言語パターンが確認されています。
補遺:SCP-360-JP-1(回収された手記)
オブジェクトの発生地点で発見された自由帳です。筆者は世界オカルト連合(GOC)所属の父と、第5教会信者の母を持つ少年(当時5歳)と判明しています。
最終ページの記述(抜粋):
「みんな おもちゃになっちゃえ。そうすれば、僕はずっと寂しくないし、誰も僕を叩かない。幸せなおもちゃ箱にみんなも招待してあげよう! あしたの朝の5時55分がたのしみだなあ。」
・担当博士の所見
このオブジェクトの真の恐怖は、少年が抱いた「寂しい」という純粋な願いが、GOCの奇跡論と第5教会の狂信によって、物理法則を歪めるほどの執念へ変わってしまった点にある。
我々が収容室で行っている「常時継続的熱焼却」という措置は、彼にとっての「遊びの時間」を「終わらない拷問」に変えているに過ぎない。しかし、手を止めることはできない。火炎の中で響く悲鳴が、いつか「怒り」に変わるその日まで。
【未公開音声記録 360-JP-Classified】
「彼は何も悪くなかった。親たちの身勝手な信仰や、職場でのストレスの『ゴミ箱』にされていたに過ぎない。彼が求めた『おもちゃ箱』は、唯一、自分が主導権を握れる、誰にも傷つけられない聖域だったのだろう。我々が今、彼を焼き続けているこの炎も、彼にとっては『大人たちの身勝手な都合』の延長線上でしかないのだ。」
SCP-360-JP関連SCP:アイテム番号:SCP-360-JP-1
オブジェクトクラス: Safe
説明:
SCP-360-JP-1は、SCP-360-JPの回収地点(██県██市の民家)で発見された、1冊の自由帳です。内容は日記形式で綴られており、分析の結果、かつてここに居住していた██君(当時5歳)によるものと判明しました。
日記の内容(抜粋):
初期: 父親(GOC職員と推測される記述)が「仕事」で家を空けがちであることへの寂しさと、母親(第5教会のシンボルを好んで描いている)が熱心に「星」や「5」について語る様子が記されている。
中期: ██君が周囲の人間(近隣住民や親族と推測)から受けていた凄惨な虐待の記録。この際、彼は「おもちゃ箱の中にだけが僕の安心できる場所だ」と繰り返し記述している。
中期:██君の母親は、水棲の旧支配者を讃える未知の聖歌(キャロル)を歌っていたと記述されている。
終盤: 母親から教わったと思われる「5」にまつわる儀式と、父親の持ち出した「奇跡論(GOCにおける術式)」を組み合わせたような、歪な錬金術の術式が殴り書きされている。最後のページには以下の言葉が記されていた。
「みんなおもちゃになっちゃえ。そうすれば、僕はずっと寂しくないし、誰も僕を叩かない」
【追加:実験ログ抜粋】
実験記録360-JP-09:
対象: Dクラス職員1名(D-9922)
内容: 活性化したSCP-360-JP個体へD-9922を接近させる。
結果: D-9922が半径30cmに侵入した瞬間、個体の蓋が展開。内部から**「少年のものと推定される無数の腕」**が伸び、D-9922を内部へ引き込んだ。
付記: 引き込まれる際、D-9922は「箱の中が、あたたかくて気持ちいい」と恍惚とした表情で叫んでいた。直後、箱は未知の生体組織への置換、または異常な細胞増殖を伴う筋繊維化し、D-9922の悲鳴へと変化した。
実験記録360-JP-09 追記:
D-9922が吸い込まれた直後、個体表面の肉組織が震え、**『もう一人増えたね』**という子供の声が収容室内のマイクに記録された。この声は、かつて██君(対象の少年)が愛用していたボイスレコーダーの音質と一致している。
【追加:担当博士の警告】
サイト-81██ 管理官への提言:
「我々は彼を燃やし続けている。だが考えてみてほしい。彼にとって『火炙り』は虐待の記憶の再現であり、同時に『おもちゃを壊そうとする悪い大人』への憎悪を育む苗床となっている。もし、この箱が**『自分を焼かない新しい友達』**を求めて、収容室の外へ『遊び』に行くことを決めたら? その時、地球全体が彼にとっての『おもちゃ箱』になるだろう。そして我々は彼を『Keter』と呼ぶが、その実態は泣き叫ぶ子供を深海に沈め、火炙りにし続けているだけだ。最悪なのは、それが『正解』ではないと分かっていながら、他に方法がないことだ。彼がいつか、火の中で『熱い』ではなく『殺してやる』と叫ぶようになった時、日本海溝は内側から弾け飛ぶだろう。」担当博士による最終所見(抜粋)
「我々は、彼(SCP-360-JP)を燃やすことで世界を守っていると自負している。だが、火の中で響く『あつい』という悲鳴が、いつか静寂に変わったとき……あるいは、『次は君の番だ』という明確な意思に変わった時には、我々のサイト-81██は、文字通り『彼』にとっての新しいおもちゃに成り下がるだろう。
彼は寂しいだけなのだ。しかし、その『寂しさ』を埋めるための代償が、人類という種すべてを箱に詰めることだとするならば、我々は未来永劫、この火を絶やすわけにはいかない。」
コメント
1件
……っ、これ、すごく重い作品だね。 最初はただのSCP報告書の形式で淡々としてるのに、読み進めるうちに“箱の中の少年”の孤独がひしひしと伝わってきて。しかも「寂しい」って純粋な願いが、結果として世界を巻き込む呪いになってるのが切なすぎる。特に「火の中で響く悲鳴が、いつか『怒り』に変わるその日まで」って一文が心に刺さったよ。 “彼は何も悪くなかった”って担当博士の声が、どこかで誰かに届いてほしいなって思った。文字数足りないけど、本当に良い作品だった。