テラーノベル
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結局、忘れ物を取りに行けないまま、事務所を出た。
家に着いて、リビングに入るとソファーが目に入る。
今朝の事を思い出して、自己嫌悪に陥りそうになりながらもそこに腰を下ろした。
“動揺して突き飛ばしちゃって”
“あんましいい気はせえへんやったってことか”
リュウキとカイリュウのやり取りが、ずっと脳内で繰り返される。
その言葉が意味するのは、何度考えてもひとつしか無かった。
「……無理だろ、…普通に、」
ソファーに力無く倒れて、ぼんやりと今日の事を思い出す。
朝、タクシーにリュウキも乗っていた時、さすがに動揺した。
きっとリュウキも同じだったんだろう、俺の顔を見ずに挨拶をしてきて、気まずさが隣からじわじわと伝わってきた。
カイリュウもいた手前、悟られないようにあえて顔を見て、いつもの様に振る舞った。
内心、緊張していた。
リュウキが、俺に冷たくなるかも、元通りなんて言ったのに自分から壊したから。不安でいっぱいだった。
でも、俺が顔を見ると途端に嬉しそうに話し始めて、その姿に胸がぎゅっと締めつけられた。
ふふ、単純な奴。すぐに顔に出るんだよな、リュウキって。
ああ。可愛いな。愛おしい。
やっぱり、好きだ。
そんな気持ちが溢れた。
正直、まだ押せばいけるかもなんて、リュウキ欲しさにずるいことを考えていた。
その後も気まずそうなリュウキにあえて近づき、少しでも俺の事を意識してほしいと願った。
食べさせようとしただけで真っ赤になった姿に、ちょっとはそういう風に見てたりするのかなと期待して、”あんな事までしたのに?”なんて惑わせるような事を言ってみたりした。
そうやって余裕を見せようとしたくせに、セイトに抱きつかれそうになった途端、俺のものじゃないことを自覚させられて嫉妬に駆られた。
セイトに冷たい言葉を浴びせて、リュウキに当り散らし、その場を去った。
自分でも、リュウキへの独占欲を前にするとすぐに余裕が無くなることが嫌になる。
誰にも取られたくない。
本当はずっと、心の奥底にその思いがあって、いつも隣に居続けたのかもしれない。
考えれば考えるほど、俺は多分、ずっと前からリュウキが好きだった。
ずっと隣にいてくれることで、もしかしたらリュウキも、なんて思っていたところがあったのかもしれない。
だから、強気に出れた。
“1分”なんて、何も変えられるわけないけれど。
少しでもと、そう思っていたのに、むしろ全てが変わってしまうなんて。
“終わったら元通り”にならなかった現実を後悔しても遅くて、考えていると気分が悪くなって、気持ちを洗い流したくてお風呂場に向かった。
***
(RYUKI視点)
今日は、たっくんとナオくんがアンバサダーを務めている仕事の関係で、午前中は不在だった。
昨日、カイリュウとセイちゃんに全てを打ち明けたことで気が楽になりつつも、今からまた顔を合わせることに少しだけ緊張していた。
「みんな、おはよ~」
事務所のドアが開いて、ナオくんが入ってきた。
視線を向けると、その後ろにたっくんの姿も見える。
「ナオちゃん、たっくんおはよ、なんかええ匂いすんねんけど(笑)」
セイちゃんがナオくんに近づいて、くんくんと匂いを嗅ぐ。
「え、ほんまに?さっき仕事で新しい商品試させてもらってん、セイちゃんこの匂い好き?♡」
「結構好きかも」
「え!うれしい~♡じゃあナオ毎日これ使お♡」
2人がイチャついているのを横目で見ていると、たっくんがこっちに来て、少し緊張しながらも挨拶をした。
「たっくん、おはよ。」
「…うん、…おはよ、」
「……?…たっく…、
疲れているのか、元気がないような気がして話を続けようとすると、たっくんの目線が違う方向に行った。
「ラン、」
俺の声を遮るようにそう名前を呼んで、そのまま目線の先にいたラン兄の方に向かった。
「……え、…」
俺を通り過ぎたたっくんに、思わず小さく声が漏れた。
「こないだランが言ってたゲーム買ったよ」
「え?まじ?一緒にできるやん」
「やろうよ、今日。」
「今日?夜?いいよ。あ、リュウキも呼ぶ?」
後ろから、たっくんとラン兄の会話が微かに聞こえてくる。
ラン兄の言葉に、意識をそっちに集中させていると、たっくんの返事が聞こえてきた。
「……俺まだよく分かんないから、ランに教えてほしい」
「…あ、そうなん、?…うん、おっけー、わかった。」
……え、俺、…なんか、無視された、?
胸がザワついて、モヤモヤした気持ちが広がっていく。
…なんか、怒らせたっけ。
そんな事を考えているうちに次の仕事へ行く時間になり、みんなで移動車へ向かった。
***
移動車へ乗り込むと、カイリュウとセイちゃん、ラン兄とトムがすでに隣同士で座っていた。
その次に俺が1人窓際に座ると、次にたっくんが乗り込んでくる。
やっと話せるかな、なんて思っていると、俺を通り過ぎて1番後ろの席に座った。
……は、?
なんで?
ドキドキと嫌な風に心臓が鳴る。
当たり前に、隣に来ると思っていた。
それがいつもの流れだから。
……あれって、当たり前やなかったと、?
なんだか、急に心細くなる。
たっくんが隣にいないと、落ち着かない。
そんな事を、初めて実感した。
「え?ナオがリュウキの隣なんていつぶり?」
次に乗ってきたナオくんが、そう言いながら俺の隣に座る。
エイキがたっくんの方に行くのを横目で見ながら、ナオくんに返事をした。
「…うん、いつやったっけ、?」
「…、?え?どしたん?なんか元気ないなぁ、?」
ナオくんが心配そうな顔で俺を見る。
たっくんが隣じゃないから、なんて言えるわけがない。
ナオくんは、隣になるとよく話に付き合ってくれる。
そのせいでついうるさくしてしまうため、飛行機なんかではなかなか隣にさせてもらえなかったりする。
いつも、たっくんが隣だと、俺が一方的に話をしてうざがられる。
…話聞いてくれる方がいいやん、そう自分に言い聞かせて、気を取り直す。
「そんなことないって。」
「そ?ならええけど…」
「…なぁナオくん、なんか話そ?」
「ええで?なに話す?…あ!そうそう!取っておきの話あるわ~♡」
んふふ、とふにゃふにゃ笑いながら、ナオくんが何やら含みのある言い方をした。
「え?なん?」
「あんなぁ?……耳貸して、?」
ナオくんに耳を差し出すと、小声で話し始める。
「……さっき、仕事で新しい商品の匂い色々試してたんやけどな?ナオが、これリュウキ好きそうやな~って言うたら、たっくん真っ先にそれ選んでたで?」
「………えっ、、/」
「……元気、出たやろ?♡笑」
そう言って、俺の顔を見てニヤニヤするナオくん。
「っ、/…や、っ、な、なんでそれで元気出るん…っ、!」
「えっ、?いやだって、あんた…好きなんやろ、?」
「……、え、、っ、?/」
「え?ちゃうの?」
不思議そうに、俺を見つめる。
……え、俺って、傍から見たらそんな感じに見えとるん、、?
「……な、なんで、?」
「なんで…?え、ナオに聞かれても困るねんけど。笑」
「……俺って、そういう風に見えとうと、?」
「…うん、まぁ、…ぶっちゃけ隣がナオで落ち込んだやろ?」
「えっ、いや…っ、」
「…な、?そういうことやん、?笑」
可愛いなぁ?なんてからかいながら、俺の頭をポンポンと叩いた。
……いや、違う、それは、いつもの流れやなかったからで、
「…いやっ、違うって…、ただいつもと違うけん、それで落ち着かんだけで、」
「……じゃあ、ずっとそうやったんやない?」
「え、?」
「あんた鈍感やからなぁ…当たり前になりすぎてて、気付けへんやったんよ。…今離れてどう思ったん?嫌なんやないの?」
当たり前やと思ってたけど、当たり前やなかった。
それは、さっき、実感した。
いつも隣にいてくれる事が、本当は奇跡やったんかも。
だって、いつも俺の傍にいなきゃいけないわけじゃない。
たっくんは、別に、俺のものじゃない。
……あれ。
なんか、……あれ、、?
めっちゃ、嫌や。
「……あ、もう着いてもうた。なんやねんもう、ええとこやったのに♡笑」
ほら行くで?とナオくんに引っ張られながら、頭が働かないまま車を降りた。
***
雑誌の撮影現場に到着して、衣装に着替えた後、撮影までの時間を控え室で過ごす。
メイクを終え、席に座ってスマホを眺めていると目の前にエイキが座った。
「リュウキ、…たっくんと喧嘩でもしたん?」
「え、?」
小声で俺にそう聞いてくるエイキ。
「……なんで、?」
「いや、来る時隣やなかったやろ?」
「……ああ、…てかそれ、そんなおかしい事なん、?」
「おかしいやろ、あんな頑なに隣おるくせに。笑」
「……さっきは、来んやったし。」
「拗ねてる?笑」
「はっ?拗ねてな、、
そんな話をしていると急にメイクを終えたたっくんが来て、言葉を止める。
目が合ったのに、エイキの隣に座った。
…………は?
まじで、なんなん、?
イライラする。
なんで、俺の隣に来んの。
「…あ、たっくん、終わったん?」
「うん。…エイキ、さっきの話なんやけど、あっちで話してもいい?」
「え?あ~…、」
ちらっ、と俺の様子を心配そうに伺うエイキ。
……エイキごめん。エイキは悪くないけど、
なんか腹の虫が治まらん。
「……ねぇ。」
たっくんに話しかけた。
さすがに無視出来んやろ。
「……ん、」
目を見ずに、1文字で返事を返すたっくん。
まるでいつもと別人みたいに冷たくて、内心ショックを受ける。
なんで?なんで急に、そんな冷たいん。
「……おい。こっち見ろや。」
イライラして、喧嘩を売った。
やばい、今から撮影なのに。
自分の感情が、抑えられなかった。
「……はぁ。なに?」
ため息をついて、仕方なさそうにこっちを見た。
ねぇ、なんで。
俺の事、好きって言ったくせに。
そんな急に、飽きるもんなん?
たっくんの気持ちって、そんなもんやったん、?
てかナオくんの話と違うやん。
俺が好きな匂い、なんで選んだん?
……キス、できたから、もういいとか、?
なんなん、最低すぎやろ。
……まぁ、約束破るくらい、多分性欲強いもんな。
ああ、もう。
「なんなん?言いたいことあるんなら言えや」
嫌や。寂しい。こっち見てよ、
「……っ、ちょ、ストップ。2人とも落ち着いて、」
エイキが止めに入ってくれて、少し冷静さを取り戻す。
「なぁたっくん、ちょっと大人げないって。ごめんねして。」
エイキの言葉に、たっくんも冷静になったのか、俺の顔を見て口を開く。
「……ごめん。リュウキ。」
いつもの優しいたっくんに少し戻って、イライラしていた気持ちがスっと消えた。
「…………俺もごめんね…っ、」
発した声が泣きそうなことに自分でもびっくりして、悟られたくなくて控え室を出て行った。
コメント
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切ないけど嫌われたかもって距離をとったことで いないことの寂しさを🐿️が自覚しはじめてるところがいい!読みながら、良すぎてわたしもうひょー!っていいながらジタバタしてます
もぉ〜😢かなしいたっくんが勘違いで諦めてる感じグッとくるりゅうきも自分がたっくんのこと結構すきってこと気づいてきた〜❣️ガチで幸せになってほしすぎる💞
𖤐·̩͙
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