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警察業務を終えても何となくまだ帰りたくない気分の夜、魔女の酒場でチルタイルを過ごす事にした。
「あれいらっしゃい、珍しい。」
「こんばんはー、全然来れなくてごめん。」
「本当だよwぺいんがここ来るの超久しぶりじゃん、商品増えてるよ。」
「うわ相変わらずオシャレ〜どうしようかな…ポーションてなに?」
「ポーション、ウィッチブレス、パフュームははジョイント。ポーションだけ値段違うから気を付けて。」
「へぇー、えっとじゃあ…」
商品を受け取り警察側や犯罪者側の諸々、新しいお店の事等談笑する。小峯はこの街に来て長いし知識も豊富だ、何か分かるかもと一段落着いた所で話してみる。
「そういえばちょっと相談したいんだけど。」
「え、急に怖いんだけど重い話?警察の事とか?」
「いや違くて俺個人の、身体の事と言うか気持ちの事と言うか、なんと言うか…」
「そこからハッキリしないやつね、とりあえず聞くよ。」
「えっとー、ある時から急にドキドキしたり身体が熱くなったり、ボーッとしちゃったり、なんか変なんだよ。で、病院で検査して貰ったけどどこも悪くなかった。」
「えぇー今も?そんなん俺も分かんねぇよ、変なもん食ったとかじゃねぇの?」
「いや今は別になんともない。本当急になるんだよね。」
「その現象が起こる条件とかは?」
「条件…人と会った時とか、話してる時とか…?」
「でも俺は平気なんだろ?……あーそれもしかして…それって特定の1人だったりしない?その人と会うと嬉しくて 、でも緊張してドキドキしたりとか。」
「……そうかも!なんで分かったの!?」
「ぺいんそれねぇ、恋だわ。」
「…は!?!?恋!?俺が!?!?」
予想だにしなかった回答に驚き思わず大声を上げる。周りのカップル達を見て茶化したり微笑ましく思ってはいても、自分にもその感情があるのが信じられなかった。
「いやうん、とりあえず落ち着け。」
「え?恋?恋ってあの、好きとか付き合うとか結婚とかの恋!?おさよつみたいな!?」
「そうその恋、急に結婚までは飛びすぎてるけどなw相手は聞いても良いん?」
「ぇ、えっとー……それはノーコメントで。」
「了解。いやでもそっかぁ、ぺいんが恋かぁ…話聞くぐらいしかできないけど応援するよ。」
「あー、その…アリガトウゴザイマス…///」
今日はギャング達が特に活発だったようで当然ぐち逸も忙しなく働き、街が落ち着いた頃にやっと一段落ついた。
「今日は疲れたな…そういえば食料がもう無いのか。」
マップを見ると1軒だけ開いている飲食店があった。入口を見つけるのに若干戸惑いつつ入り、階段を降りていくと声が聞こえてきた。
「いやそっかぁ、ぺいんが恋かぁ…応援するよ。」
「あー、その…アリガトウゴザイマス…///」
耳を疑った、聞き間違いだと信じたかった。しかし階段を降りた先にいたのは紛れもなくぺいんだった。
「あれぐち!?今日は珍しい人ばっか来るな、いらっしゃい。」
「えっぐち逸!?!?!?」
「声デカイってw隣座りなよ、メニューここに心の目で見れる。」
「………」
「?どうしたの?」
「…ぁっ、いえ、急いでるのですいません。食べ物と飲み物を10個ずつお願いします。」
動揺を見せないよう必死に取り繕っていつも通りを演じる。しかし叩きつけられた現実をすぐには受け入れられない。
「なんでも良いの?ジョイントはいらない?」
「はい、ジョイントはまだある…ので。」
「はいよー、じゃあこれとこれにするか…」
商品ができるのを待っている間、立っている事すら辛くなり唇を噛み締め両手を強く握って耐えた。
「ぐち逸なんかいつもより元気無い?今日忙しかったもんね、大丈夫?」
「あ、え…っと、大丈夫、です。…」
「いやいや明らかに大丈夫じゃなさそうだけど。体調悪いなら病院行けよ?」
「俺送ってくよ。」
「い、や、本当に…平気なので…ありがとう、ございました、また。」
一刻も早くこの場から立ち去りたいのに身体全体が鉛のように重く思い通りに動かない。俯いて足元をじっと見ながら一段一段階段を上がる度、涙が出そうになるのを堪えた。