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嫌いな同僚
オフィスの一角、電話の音とキーボードを叩く音が飛び交う中で、
また一つ拍手が起こった。
「おめでとうございます、○○さん! 今月もトップですね!」
営業部のエース、一条颯真(いちじょう そうま)。
顔よし、頭よし、トークもうまい。誰もが認めるエリート社員。
そして俺――**篠原悠人(しのはら ゆうと)**の、正直言って一番嫌いなやつだ。
俺は人付き合いが得意な方じゃない。
派手な営業トークもできない。
ただ、こつこつ地道に数字を積み重ねているだけだ。
でも、どれだけ頑張っても「すごい」と言われるのは颯真ばかり。
(……結局、世の中は顔と才能かよ)
そう毒づきながら、俺は地味に資料整理を続けた。
するとその颯真が、やけに爽やかな笑顔を向けてきた。
「篠原くん、昨日の資料ありがとう。あれがあったからスムーズに話せた」
「……別に」
そっけなく返す。
心の中では (お前が手柄を横取りしただけだろ) と苦々しく思っていた。
なのに、颯真は気を悪くした様子もなく、にこやかに続ける。
「やっぱり君は努力家だな。もっと自信持っていいのに」
その言葉が、逆に胸に突き刺さった。
(上から目線で言うなよ……俺は、お前なんか嫌いなんだ)
俺は視線を逸らし、ただひたすらにパソコンへ向き合った
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