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あいつなんか大嫌いだ

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あいつなんか大嫌いだ

2 - 報われない努力

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2025年08月25日

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なんで俺は…

「……お願いします。ぜひ、うちに任せてください」
声を張り上げ、必死にプレゼンを続ける。

クライアントの表情は硬い。頷いてはいるが、決め手に欠けているのは自分でも分かっていた。


(頼む、食いついてくれ……!)


ひと通り話し終えた後、クライアントは曖昧な笑顔を浮かべただけだった。

「検討します」

その一言に、俺の努力はあっさりと片付けられる。


会社へ戻る足取りは重かった。

何度も準備したのに、結局成果はゼロ。

同僚に「どうだった?」と声をかけられても、笑ってごまかすしかない。


(……俺には向いてないのかもしれない)


そんな思いが頭をよぎった瞬間、オフィスに歓声が上がった。


「さすが一条さん!」「また大口契約ですか!?」


視線を向けると、颯真が上司に握手をされているところだった。

爽やかな笑顔、拍手喝采。俺とは正反対の景色。


(また、あいつかよ……)


心がきしむ。努力しても報われない自分と、何をやっても成功する颯真。

比べたくなくても、比べずにはいられなかった。


そんな俺の前に、颯真がふいに現れる。

「篠原くん、今日のプレゼン良かったよ」


「……は?」


「クライアントの反応、見てただろ? 俺の話をしたときより、君の資料を出したときの方が目が光ってた。君が作ったあの提案書、すごく効いてたんだ」


颯真は本気の顔で言っていた。

からかいでも、慰めでもない。

まるで俺の努力をずっと見てきたみたいに。


「……そんなの、気のせいだろ」


思わず突っぱねた。

素直に受け止めればいいのに、認めたら負けだと思った。

俺は颯真が嫌いで、だからこそ認めたくなかった。


だが、その背中を見送るとき、胸の奥に小さなざわめきが残った。


(……なんで、あいつは俺なんか気にかけるんだ?)


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