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実らない恋をして
好きな人の横にいるだけで満足して
この5年間過ごしやすかった。
でもいつかは終わらないといけない。
だから未練はない。
鳴『遺書、書くか』
初めて残す記録媒体は、遺書
笑っちゃうよねー。
腹部からの出血が止まらない。首の方も。こりゃ太い血管切れたな〜。血蝕解放中に桃の能力を使うのは良くないね。負荷が大きすぎる。京夜くんが鼻血を止めようとしていると無人くんがやって来た。珍しく息切れをしている。
無「お前、なんで…」
無人くんの喋りを遮ってメモを胸元に押し付けた。え?と不思議な顔でメモを見た瞬間、
鳴『【無人くん】』
彼を、名前で繋いだ。
これも桃太郎の血で作った能力。一種の呪いみたいなもの
全てを察した無人くんはその手で俺の口を力ずくで塞いだ。俺の口にごつごつした手が覆われる。2度目に触れる体温はやっぱり暖かくて。少しだけ泣きそうになるほど幸福感で胸を満たした。
無人くん、あたたかいね。大好き。
すき、1番すき
どうやったら伝わるかな。
どうやっても伝わらないね。
だって、ずっと、ずっと言えなかった。
それでよかったけど、ちょっとだけ寂しかったよ。
独り占めもしたかったな。
だいすき
すごく、すき
この世でいちばん、すき
暖かい手のひらに口付けて、少し手が緩んだ隙に両手で頬を挟み、そして、唇に触れるだけのキスを落とす。
ふにっと、柔らかい感触に泣きそうになった。たった3秒で離すと黒い瞳が見えた。もう殆ど残ってない視力で見る最後の光景が、俺の1番好きな、貴方の目で良かった。
【 】
その瞬間、鳴海の手首からブシャッ、血が吹き出した。全身の内部が一気に損傷し、呻き声と血反吐が口からこぼれた。咄嗟に腰を支え鳴海を抱えると、胸に染みるほどの血と体液を吐いた。笑いながら崩れ落ちる様子はスローモーションに見えて。能力を摂取し続けた代償は鳴海の皮膚も傷付け、血を流す。全身ぬるっとした感覚で滑り落ちてしまいそうな鳴海を全身で受け止めると、既に虫の息
京夜と2人がかりで止血をする。京夜はその場で出来る限りの治療を施す。昔の事がフラッシュバックして不格好になってしまったがそんなのはどうでもいい。呼吸は荒い。意識も無い。
メモにはこう書いてあった。
《網膜に写す最期は、無人がいい》
無人、なんて呼んだことないだろ。最期にするな、
色々言いたいことがある。記録媒体を残さないようにしていたのに、唯一鳴海から貰ったのが遺書なんて笑えない。
無「…死ぬな。生きることに執着してくれ」
前に触れた時よりも低い体温を抱き締める。自分の体温を分けたい。こんな風に抱き締めたらお前絶対きゃあきゃあ叫んで意味の分からない語彙で喜ぶだろ。ほら、起きろよ
他の医療部隊が来るまで俺はずっと鳴海の体を抱き締め続けていた。