「雨……上がらないですね」
すぐに降り止むかと思っていたのに、雨脚は強まる一方で、空を覆う黒い雲が晴れる気配は全くなかった。
「そうだな、これでは外にも出られないな」
「本当に……。雨雲が恨めしいですよね……」
彼とのかけがえのない時間が台無しになってしまったようにも思えて、さすがに落ち込んで呟くと、
「だったら、これからドライブに切り替えようか?」
しょげ返る私を察して、彼がそう提案をしてくれた。
「そうですね、ずっと駐車場にいてもですし……。ドライブをしている間に、雨もやむといいんですが……」
「ああ、私も君と同じように思っているから」
彼がそう口にして、まだ乾き切らない私の髪をふわりと撫でると、その優しい心づかいに、薄暗い空のようにどんよりと沈んでいた気分が、せめても明るく晴れていくのを感じた。
ドライブ中にも絶えず降り続ける雨に、なんとか埋め合わせのプランをひねり出そうとしてみたけれど、今日はずっと公園で過ごすつもりでいたこともあって、他にはなかなか思いつかなかった。
折しも車の揺れ具合の心地よさに、だんだんと眠気が襲ってきた。
寝たりしたら、ダメだってば……。貴仁さんがせっかくドライブしようと言ってくれたんだから、私もどこか行きたいところとかを考えないと……。代わりに行けるような所を、どこか……どこ、か……。
でも、眠たくて……何も、浮かばなくて……何も……。
考えようとすればするほど、瞼が下りてくるようで、途中で思考はパタッと途切れてしまった。
……そうして、意識もなく熟睡をした末にふと目を開けると、私の身体はいつの間にかベッドに横たえられていた。
「えっと、ここって……?」
状況が全くつかめずに、辺りをキョロキョロと見回す。
すると傍らにいた彼が、「ここは、ホテルだ。君が寝てしまったから、疲れているのかと思い連れてきたんだ」そう告げた。
「ああー……、やっぱり寝ちゃってたんだ、私……」
ポツリと自嘲気味にぼやく──。きっとお弁当を作るのに、朝早くに起きたからだ……。けどだからって、デートの最中に寝落ちをするだなんて……。
仕出かした自らの失態に、ベッドの上でひとり頭を抱えていると、不意に貴仁さんが、マットレスに片膝をギシリと乗り上げた──。
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