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私の顔を挟むように両手が突かれ、あまつさえベッドに乗せられたもう一方の足で、半身を跨ぐように両膝に挟み込まれた。
「えっ……な、何を……」
言いかけて、気づいた。ここが、ホテルだということに──。
そこに、二人っきりでって言ったら…………。
「あああ、あの、た、貴仁さん?」
突然のことに、とんでもなく動揺が込み上げる。
「……もう、疲れは取れたか?」
耳元に寄せられた唇で、低く問いかけられて、身体がゾクリと震えを放つ。
「は、はい。ですが、何を……」
「何を……?」
ますます彼の顔が迫り寄り、互いの鼻先が触れそうになる。
「あの、こ、ころの、準備が……」
「何の準備だ、よく聞こえない」
甘ったるい吐息が吹きかかり、今にも唇が付きそうな程近さに、思わず目を閉じた。
(もしかしたら気を引くために、聴こえているのに聴こえないふりをしてたりとか……)と、さらにギュッと固く目を瞑るけれど……、
しばらくそうしていても、何も起こるような気配もなく、恐る恐るまた瞼を開いてみた。
真上からじっと見つめる彼の眼差しとかち合い、胸がドクンと波打つ。
「貴仁さん、あの……」
「どうした、急に目を閉じて。まだ眠いのか?」
怪訝そうな顔で尋ねられて、えっ……、そういう雰囲気じゃなかったの? と一瞬思い、はたと勘づく。
そういえば彼は、あんまりお付き合いの経験がなくて……って。……ということは、もしかして、ど……どう…て…──?
……それは、果たして訊いてみてもいいことなんだろうかとためらう。
「どうしたんだ、眠いのなら、寝ていてもいいが」
この言動からしてもどうもムードが違うみたいだし、やっぱり彼の胸の内を確かめてもみないとだよね……と、私は意を決して口を開いた。
「貴仁さんは、その、ど……」
……待って、聞けないってば。ううん違う、そんなストレートに尋ねようとするから、ダメなんだってば。もっとそう……ソフトな聞き方で……。
ソフトなって、でもどんな風に……?
「眉間にしわが寄っているが、さっきから本当にどうかしたのか?」
そう言う貴仁さんの額にも、困惑したように微かなしわが浮かんでいる。
「いえ、どう……、どう、も、しては……」
なんとかこの場をうまく切り抜けようとするけれど、”どう”と口にしただけで、ドキドキするとか、それこそ本当にどうかしてるってば……!
「あぁ〜ん、もう……」
悶々として思い悩んでいたら、はからずもあらぬ声が口からこぼれた。
すると──、
「この体勢で、そんな声を出されては、私の理性が保てなくなりそうだ」
彼が、私の気鬱をにわかに払拭するような、まさかの一言を漏らした。