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「あああ~!? アック様っ、あの男ですよ!!」
「そのようだな。しかし……」
「ウニャ? どうして人間の隣にフィーサがいるのだ?」
氷漬けからどうやって助かったのかと思ったが、どうやらフィーサのおかげらしい。奴の隣に何気なく立っているのが何よりの。
「責任ってのはどういう意味だ? それと、動けるようになった理由を聞こうか」
「そのままの意味だが? われは多くの竜をここに留めていた。君がここを知らずにいてくれさえすればそれで済んだのだよ」
「知られたから責任を持ってどうにかしろと?」
「ここを知られたうえ、竜が赤毛の娘に懐いてしまった。そうなったからにはもはやここに置いたままには出来ぬ」
ルティに懐いてしまったのは想定外だったわけか。
「それは理解したが、フィーサ……彼女に何をした?」
「われはその娘に助けられただけに過ぎぬ。故に、再びこうして君と話が出来ているというわけだ」
この場にはウルティモとフィーサしかいなく、他の連中の姿は見えない。フィーサだけになった時に戦闘になった可能性があるが、そうだとしても何故奴だけなのか。
「ウニャゥ!! フィーサ、何とか言ったらどうなのだ!!」
「…………」
「ウウゥッ! アック、フィーサがおかしいのだ!!」
「フィーサ~? わたしの声が聞こえるです~?」
シーニャとルティがしきりにフィーサに呼び掛けている。しかし放心状態になっているのか、何一つ応えようとしない。
「ウルティモ! フィーサに何をした?」
「われは何もしておらぬ。われはその娘と話を交わし、ここに連れて来ただけに過ぎぬ」
嘘だな。何もしていないならいつものフィーサのはず。
「それなら何故彼女は反応が無いんだ? あんたはその理由を知っている筈だ!」
「――われが目覚める前、辺りに潜んでいた魔導士……ザルクと数名が姿を現わした。氷漬けのわれを嘲笑いながらだ」
「転送遮断を使ったあいつか」
「そうだ。アレたちの処理をどうするかと思っていたところで、アレたちがわれを破壊しようとしたのだ。君に氷漬けとされたのを好機とみたのだろうな」
おれがとどめを刺さずとも、仲間だった奴にやられそうだったわけか。
「……それなのに助かった。いや、彼女に助けられたってわけだな?」
「その通りだ。もっともそこの娘はわれに関係無く、初めから魔導士たちを全滅させようとしていたようだ」
「フィーサが魔導士を全滅させて、あんただけが助けられたと?」
「うむ。われを殺すつもりは無かったのだろうな」
一人で残って見張ると言っていたが、それが狙いだったというのか?
それにしたって何故そんなこと……。
「先に引き上げさせていた魔導士もやられたのか?」
「かろうじて逃げたとみえる。……それと、われの見立てになるがそこの娘からは邪気が感じられた」
「邪気? 彼女は神剣だぞ?」
「そこまでは分からぬが、剣の主であるならば君が聞き出すべきだろう」
グライスエンド手前の温泉に浸かってからおかしい感じを受けたが、何か変わったのだろうか。
いずれにしてもグライスエンドから離れた方が良さそうだ。
「話は分かった。それで、ウルティモ……あんたはどうするつもりで姿を見せた?」
「アック・イスティ。われは君と取引を望む」
「竜に対する責任のことか?」
「……それも含め、われは末裔の存在たちを守りたいと思っている。すでにドワーフの子らをイデアベルクに送っているであろう?」
「――!」
こいつ、それを分かっていておれに?
「竜と末裔、それらを守るわれと取引をしてもらいたい」
戦闘魔導士はともかくこの男は末裔と竜を守って来た者らしい。そういう意味での命の取引といったところか。
「……脅威を見せることは無いんだな?」
「無論だ。われは時空魔道士の末裔ウルティモ。末裔らを守る為の存在ぞ」
目的ははっきりしているようだな。
「まだあんたのことをどうするかは決めていないが、守護が目的の取引ってことだけは理解した」
「では、お願いする!」
「イデアベルクに戻る……ってことでいいんだろう?」
「よろしく頼む」
フィーサのこと、それとここから先のエリアのことが気になるが。しかしウルティモの取引を受けた以上、今はイデアベルクへ戻るしか無さそうだ。