コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
──「アイドル」って、何だと思う?
笑って、歌って、ファンを元気にして。
夢を届ける人。
憧れられる存在。
だけど──それは、全部“見えてる”部分の話でしかない。
最初は、本当に楽しかった。
キラキラのステージ、飛び交う名前のコール、
「ほとけくん大好き!」って叫んでくれるファンの声。
照明の下で笑ってる自分が、“ぼく自身”だと思ってた。
「ありがとう、また来てね!」
「次も絶対、最高のライブにするから!」
そう言って笑ってる自分は、確かに“本物”だったはずなのに。
気づかないうちに、少しずつ、心のどこかが濁っていった。
ある日、スタジオの鏡に映る自分を見て思った。
「──誰だ、これ?」
汗をかいて、笑顔を浮かべて、振り付けをなぞるだけの人間。
そこに“ぼく”はいなかった。
笑ってるのに、死んでた。
“ムードメーカー”って言葉が僕を壊していた
ファンにとっては「笑顔の人」じゃなきゃいけなかった。
メンバーにとっては「崩れない存在」でいなきゃいけなかった。
「頼っていいんだよ」
「話して、抱えないで」
みんなそう言ってくれた。
でも、できなかった。
「崩れたら、嫌われる」って、ずっと怖かった。
夜、ひとりで泣いた。
ライブ終わりの帰り道。
「お疲れさま」ってメッセージも、通知も、全部見れなかった。
布団に潜って、耳を塞いで、ひとつずつ世界を遮断した。
「このまま、消えられたら──楽なのに」
それでも、“消えられなかった”。
だって、どこかで**「もう一度、笑いたい」**って願ってた。
──そして、ある日。
スマホの通知が震えた。
「初兎:お前のこと、誰も責めてないよ」
「りうら:また、会えたらいいな」
「いふ:生きててくれて、ありがとう」
「ないこ:俺は信じてる。6人でまた笑えるって」
「悠祐:帰っておいで。待ってるよ、いむくん」
それを見た瞬間、何かが崩れて、涙が止まらなかった。