テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「はい、本当にそう思います。笹岡さん、素敵です」


玲伊さんは「うん」と頷き、わたしを包んでいた腕をほどいた。


そして、肩をそっとつかむと、額と額を合わせて、そっと呟いた。

彼の吐息を間近に感じ、わたしの体から、また力が抜けていきそうになる。


「本当はこのまま連れて帰って、ずっと一緒にいたいけど……ちゃんとご両親や藍子さんに許可を得てから付き合いたいんだ」


「玲伊さん……嬉しいです」


だから、今日はこれだけ……な。


そう囁いて、首を傾けて唇を重ねた。


あのときは、彼の唇の感触がひどくつらく感じたけれど。


今は……

このまま時が止まってしまえばいいと思うほど、幸福だった。


***


その週の週末。

玲伊さんはレストラン〈ルメイユール・プラ〉の個室に、わたしの両親と祖母、そして兄を招いてくれた。


約束の1時間前に呼び出されていたわたしは、玲伊さんの部屋でフルメイクをしてもらい、髪はシニョンにまとめてもらった。


そして、例の衣装部屋に保管されていた、清楚な印象のオフ・イエローのワンピースを借りて、着替えた。


「よし、行こうか」

玲伊さんはネイビーの三つ揃えにアイスピンクのネクタイというフォーマルないで立ちで、またもや、くらくらするほど素敵だった。


彼にエスコートされて、個室に入っていくと、うちの家族全員、わたしの変身ぶりに目を丸くした。


「優紀さんとの交際を認めていただきたい」と頭を下げる玲伊さんに全員が恐縮した。


まず口を開いたのは母だった。

「でも、香坂さん、本当にうちの優紀でいいんですか。香坂ホールディングスのご令息ですのに」と確かめるように聞いた。


玲伊さんは笑みを絶やさず「私は心から彼女を愛しています。どうしても、そばにいて欲しい」ときっぱり答えてくれた。


実の親子なのに、祖母とは正反対の性格で、慎重で懐疑的な物の味方をする母も、玲伊さんの、あまりにもストレートな肯定の言葉に、それ以上、何も言えなかった。


「ほら、優紀。あたしが言ったとおりだったろう」と祖母のほうは得意満面だ。


「しかも玲ちゃんがあたしの孫になるかもしれないって話だろう。いやぁ、めでたい、めでたい」


わたしは慌てて言った。

「おばあちゃん、気が早すぎるって」


でも玲伊さんは「私もとっても嬉しいですよ。藍子さんの孫になれたら」と、いともあっさり答えてくれた。


「じゃあ、玲伊が俺の弟ってこと? なんかぴんと来ねえな」


「まだ早すぎるって、そんな話」とわたし一人、顔を真っ赤にしていた。


父が穏やかな口調で言った。


「あまりにもありがたい話でして、正直、まだ驚いてますが、いや反対する理由なんてあるはずがないですよ」


「どうもありがとうございます」と玲伊さんはもう一度頭を下げた。


「優紀が悩みを抱えて沈んでいたころは、わたくしどもも大変心配しておりましてね。でもお義母さんから見違えるように元気になってきたと聞いて、ほっとしていたところでした。あなたのおかげだったんですね。改めて礼を言わせてください」


その言葉に、家族全員が頷いた。


噂にたがわず、ディナーはどれもすばらしいものだったけれど、残念ながら味はよく覚えていない。


帰り道、母だけはまだ信じられないようで「でも、なんでうちの優紀が。あの、香坂玲伊さんが。いや、嬉しいのよ、とっても嬉しいんだけど」と首をかしげていたけれど。







もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

2

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚