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「よしっ!じゃぁ勝負の回だ! 」
直哉が言った
「何の回ですって?」
アリスは明とクスクス笑っている、それから直哉のタブレットに何やら書き込んでいる
「ビギナーズ・ラックって本当にあると思う?どんなに勝負しても、負けを挽回出来そうにないんだけど 」
クスクス
「アリス!頑張って!」
北斗は開いた部屋のドアに肩をつけてもたれ、腕を組んで暫く三人を眺めた
直哉がポーカーの遊び方を、アリスに教えながら彼女から金を巻き上げているらしい
もっとも100円単位のお遊びみたいだけど、こんな風に弟達が楽しそうにしている光景を眺めるのは、物凄く久しぶりで・・・
いや・・・もしかしたら初めてかもしれない
「アリス!2のペアが来たよ!」
明が嬉しそうに叫んだ
「キャー!!言っちゃダメ!! 」
すかさずアリスが明の口を押えた、明がケラケラ笑っている
「どうだ!ビギナーズ・ラックは本当にあるのかと言ったな?義姉さん?どんな手だ?」
アリスが深呼吸して胸に手を当てている、明のベッドには小銭の山が積まれている、どうやらこの勝負の掛け金らしい
「これで私が勝ったらいくらなの? 」
「え~っと・・・・」
明がタブレットの計算機で計算している
「どう?ストレートフラッシュよ!」
「あ~~~~~(泣)」
直哉がトランプを宙に投げて、その場でひっくり返った
「勝ったわ!ビギナーズ・ラックよ」
明が嬉しくて笑いながらピョンピョン跳ねている、その時アリスがこちらに気が付いた
「北斗さん?おかえりなさい!」
その笑顔を見て北斗は途端に息苦しくなった、アリスと出会ってからずっとこんな思いをしている
「一階からずっと見て来たよ、うちの魔女はまたいったいどんな魔法を使ったんだ?」
クスクス笑ってアリスが北斗に駆け寄って来た、いつも自分を見つけると嬉しそうに駆け寄ってきてくれる、こんな彼女が愛しくてたまらない
「お庭にまだ北斗さんに選別して、貰いたい私物が沢山あるの!ここまで綺麗にするの大変だったのよ!アキ君とナオ君が手伝ってくれたの 」
「そりゃすごいな!」
アリスの頬が可愛らしいピンクに染まりなんだか薄汚れている、後で一緒に風呂に入って隅々まで洗ってやらねば
「お・・・お掃除してたら沢山お金が出て来たんだ!だからそのお金をめぐって、アリスとナ・・ナオが勝負してたの」
「俺達は大富豪かよ!小銭が山と出て来たぜ、もっと金を大事にしないと 」
アリスが来てからひどく酔いつぶれたことはない、我が弟もどことなく嬉しそうだ
「お前が財布を持たないからだろ」
何だか何もかもアリスが来てから上手くいっているような気がしていた
北斗は今すぐ彼女を抱きしめてキスをしたい所をぐっと我慢した
彼女の何を見てもキスをしたくなってくる。そしてキスをしたら最後、もう自分を止める自信はない
時々どうしようもなく彼女に触れたい欲求が強すぎて、その姿を見るのも辛くなる
アリスがソワソワと北斗を上目遣いで見る
「その・・・・勝手に母屋に入っちゃって、ごめんなさい・・・ 」
その仕草があまりにも可愛らしくて、北斗は思わず笑い声をあげ、自分の声になんとも違和感を覚えてはっとした
もともとあまり笑うタイプではない自分が、こんなふうに心から楽しくて、笑えたのはずいぶんと久しぶりのことだ
「これほど家を綺麗にしてくれたら、誰かを家に招きたくなるな、今夜は俺が腕を振るうよ。よかったらまだ搾乳している従業員達も呼んできてもいいかな?みんなで軽く何か食わないか?先週もらったサーモンが1匹あるだろう?あれを捌くよ 」
「それじゃ・・・私は今後もこの家に来てもいいの?」
北斗はアリスの両手を手に取った
「この家は君の家だ、いつでも出入りしてくれ」
直哉が笑いながら言う
「よかったな!兄貴本当はこの家の散らかり様を、義姉さんに見られたら逃げ出されると思ってたんだぜ 」
「めんぼくない・・・ 」
北斗が顔を傾けて笑みをかみ殺した。なんて魅力的な表情をするの
「イベリコ豚のブロックもあるぞ、角煮チャーシューでも作るか?」
「その前に義姉さんに、プロパンガスコンロの使い方を教えてやってくれよ」
アリスが大笑いしている直哉と明に「シーッ!シッー!」と口元で人差し指を立てて、必死にゼスチャーしている
「夫に隠し事をする悪い妻だな・・・・今夜なんとしてもベッドで聞き出すぞ・・」
北斗が前かがみでアリスに誘惑するように耳元で囁いた、ポッとアリスが頬を染める
「アリス・・ビスケットたぁ~くさん、焼いてくれたんだよぉ~ 」
なるほど・・・料理は出来ないがお菓子は作れるんだな、さすがお嬢様だ
北斗は思った
「それは楽しみだ 」
「で・・・でも味付けが皆さんのお口に合うかしら」
「俺たちゃありつけるなら、何でも食べるのに慣れてるぜ 」
直哉も嬉しそうに言う
その日の夜はとても楽しい晩餐になった
長椅子のテーブルには、アリス達成宮家族の他に、牧場の従業員達の笑い声が家中に響いていた
トラ猫母さん親子は終始窓からこちらを覗いている
家に入るのは野良猫のプライドが許さないが、何か食べさせてくれるなら、別にかまわないわよといった感じだ
みんなアリスのビスケットを褒めてくれたし、アリスは初めて牧場主の奥さんらしく振舞えて大満足だった
まさに成宮牧場のみんなと楽しく食事する!ここに来てからアリスの念願の夢がかなった
家族が自分を必要としてくれている、アリスは嬉しさに胸が膨らんだ