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「や~まへ行こうっ♪次~の日曜っ♪む~かしみたいに雨がぁ~♪振れば川~ぞこにぃ~~♪ 」
とても良い天気の日曜日、朝のすがすがしい空気が陽の光でキラキラしていた
アリスと明が手をつないで、裏庭の奥のトトロの森に延びている小道を、歌いながら歩いている
その後ろに北斗がブリキのバケツを持って続いた
「ねぇ~!北斗さん?一緒に仕事をしてほしいってどこまで行くの?」
アリスがくるっと振り返って北斗に聞く
セリーヌのトリオンフのマークが入った茶色いキャップを、深くかぶっているので目が見えないが、調整ベルトの間から垂らしているポニーテールの尻尾が、アリスが歩くたびにゆらゆら揺れている
「もうすぐだよ 」
北斗も白のナイキのキャップから目を覗かせて微笑んだ
暫くしてクヌギや樫の木、栗の木などが点在する日当たりのいい雑木林を抜けた
そこでアリスと明が思わず
「わぁー!!」
と歓声をあげた
木のまばらなその林の床一面はルビーの絨毯だった。そこは真っ赤な野イチゴの群生で覆われていた
「隣の村の牧場仲間が観光客相手に、開催する日曜市うちからも何か販売商品を出すことになってね」
「素敵!」
「成宮牛乳にビールとベーコンを出すけど、もう少し品数がほしくて、なにがいいかなと思って考えていたら・・・・」
「あま~~い! 」
明はさっそく口に入れてモグモグしている
「野イチゴってこんなに沢山なるの?初めて見た! 」
明とアリスも歓声をあげながら、それを踏まないように気を付けて歩いた
アリスは朝日に照らされて、瑞々しく輝く野いちごに感動して、カシャカシャスマホで撮影した
「きれ~・・・なんだか本当に、宝石みたい・・・ 」
「宝石商の娘にそう言われると、野イチゴも本望だな 」
ハハハと北斗が笑った
瑞々しく・・小さなプツプツが集まって、1センチぐらいの塊になっている、柔らかそうで、中には3センチほどの大きさのモノもあった
「これを摘んで一日かけてジャムを作ろうと思うんだ」
キャーッッ!
「ジャム!」
「ジャム!」
明とアリスは飛び上がって喜んだ
「さぁ!頑張って摘んでくれよ」
北斗は二人に軍手と、三段重ねで持ってきたブリキのバケツを二人に渡した
三人は黙々としゃがんで野いちごを摘みだした
明は大きな野いちごばかりを探して、あちこち歩き回っている
アリスは、まずは自分の周り一面ルビーの絨毯のようになっている野イチゴを、全部制覇しにかかった
「成宮ワイルドストロベリー・ジャムよ!ブランドだわ! 」
真っ赤に輝く野いちごの緑の茎には、小さなアリがひっきりなしに登ったり降りたりしている。このいちごが甘くておいしい証拠だ
ちらりと北斗を見ると、彼は摘んだ野いちごの一粒をポイッと口の中に入れた、モグモグしながらうんうんと頷いている
それを見たアリスもプリプリの実を一粒口の中に入れた。それはとっても日向臭い甘みが凝縮されていて、プチプチと口の中で弾けた
う~ん・・・癖になる美味しさだ、自然の恵みとはまさにこのことだ
三人は午前中のすべてを費やして摘んでしまい、野いちごは三つのバケツいっぱいになった
北斗が両手に山盛り野イチゴのバケツを持って、アリスと明が一つを二人で持った
母屋の隣の作業所の炊事場にバケツを置いた
炊事場には作業台と二つの穴が開いたかまどがあり、母屋の台所で出来ないような大鍋をここでグツグツ煮る
北斗はかまどの横の水道で野イチゴを丁寧に、一つ一つ中を調べて洗った。アリスも明も手伝った
中には小さな蟻が沢山入っていた、最後に取り切れなかった蟻を取り出すために30分ほど水に漬けた
やっとのことでバケツ三つ分洗い終わると、北斗は納屋からアリスの背丈半分ほどの大きなずんどう鍋を二つ持ってきて、水道でざっと洗い、一つは鍋一杯の水と、一つは野イチゴ全部と半分の水をいれた
また北斗が薪小屋から薪を一括り持ってきて、かまどの前にしゃがみ、良く枯れた杉の葉っぱをまず敷いて、次に細い枝と薪をクロスに積んでいった