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###番犬くんと優等生###
<第九章> 新たな誘い
“屋上の闖入者”
放課後、春夜は重い足取りで屋上へと向かった。屋上へと続く階段を上り切り、錆びた扉を押し開けると、冷たい風が頬を撫でた。夕暮れ時で、まだ誰も来ていない屋上は、ひっそりと静まり返っていた。
春夜はフェンスにもたれかかり、校庭を見下ろした。すでに部活動の生徒たちの声が遠く聞こえ、下校する生徒たちの姿もまばらだ。
(流風のやつ、自分から呼び出しておいて遅れるたぁ、いい度胸してやがるぜ……)
心の中で文句を言いながらも、春夜は流風が来るのを待った。あの可愛らしい顔からは想像もできないが、何か厄介事に巻き込まれているのかもしれない。そんな考えが、春夜をその場に留まらせていた。
どれくらい時間が経っただろうか。不意に、背後で屋上の扉がギィ、と鈍い音を立てて開いた。
春夜は振り返った。そこに立っていたのは、流風ではなかった。
扉の向こうに現れたのは、明らかに高校生ではない、巨体の男だった。ニット帽を目深にかぶり、顔の下半分は分厚いスカーフで覆われているため、表情はうかがえない。しかし、その体格は、春夜がこれまで相対してきたどんな喧嘩相手とも比較にならないほど大きく、見るからに強靭な筋肉で覆われているのが分かった。まるで、分厚い壁がそこに立ちはだかっているかのようだ。
春夜の体が、一瞬にして驚きと警戒心で固まった。なぜこんな男が学校の屋上にいるのか。直感的に、危険だと判断した。平和な日常は、脆くも崩れ去ったのだ。
次の瞬間、春夜は迷うことなく戦闘態勢に入った。体の重心を低くし、いつでも動けるように構える。彼の瞳は鋭く、全身から威嚇のオーラが放たれた。
「……何者だ、テメェ」
春夜の低い声が、夕暮れの屋上に響く。巨体の男は、春夜の威嚇にも動じることなく、ただじっとそこに立っていた。まるで、感情のない人形のようだ。その不気味さに、春夜の神経が研ぎ澄まされる。
春夜が、鋭い目線を男に突きつけながら、さらに間合いを詰めようとした、その時だった。
巨体の男の後ろから、誰かの気配を感じた。それは、まるで空気のように薄く、しかし確実に、そこに存在する気配。春夜は咄嗟に視線を動かす。夕陽が逆光になり、その人物の姿はまだはっきりと見えない。だが、春夜の野生の勘が、その人物こそが、この不穏な状況の真の引き金であることを告げていた。
暑ぃ_:(´ཀ`」 ∠):
みなさんも熱中症には気をつけて下さい!
ではまた次回!
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