うーん、分からんっ…!怪しい人だらけだ!
あの人は?
いや、あの人か?
「綾乃、僕には犯人が分かりましたよ。」
先生は、そうやって顔を近づけて耳打ちしてくる。
吐息が耳にかかりくすぐったい。
し、単純に照れる。
「誰なんですか?」
私は平静を装って尋ねた。
「それはね…」
先生は犯人の名前を口にする。
あっ!
そっか!
私にもその時やっと分かったが…
「僕の勝ちみたいですねぇ?」
勝ち誇って言う先生の顔に腹が立つ。
けれど…
ダメだ…
私は…
そんな先生が好きだ…
ようやく自分の気持ちに少し気づいて…
私は暗い館内でそっと彼の手に触れた。
先生は私の手に気づくと、僅かに驚いてこちらを振り向いたが、そのままするりと手を繋いだ。
その後の先生のご機嫌な事、ご機嫌な事。
「いやぁ、楽しかったですよね!
明日はまた、慶應大学に聞き取り調査に向会ましょう!」
先生は1人でペラペラ喋っている。
私の手をしっかりと繋いで…
その日は何となく良い雰囲気でデートが終わった。
♦︎♦︎♦︎
翌朝、黒川法律事務所に行くと、先生は既に居た。
ここ最近早くない?
私は不思議に思いながらも、仕事に取り掛かった。
えーと、こっちが過去の判例で…
こっちが、過去の事例で…
書類を整理していると、宇賀神先生がやってきた。
「綾乃、終わりそうですか?」
「はい、キリがいい所なので、行きましょう!」
法律事務所から出ると、先生は私の手を取り、恋人繋ぎした。
「せ、せ、先生っ!?」
「何ですか?
ダメなんですか?」
「しかし、真昼間ですし…」
「朝でも関係ありませんよ、僕は。」
そう言われて、結局私たちは駐車場までを手を繋いで歩いた。
これじゃあ、バカップルみたいじゃない?
少し、心配になる。
そして、慶應大学に着くと、流石に仕事モードになった。
「えー、てかさー…」
「やばーい!」
「ウケるー!」
伊藤氏のクラスでは女子3人が話し込んでいる。
「ちょっとよろしいですか?」
宇賀神先生が天使の笑顔で話しかける。
「やばっ、イケメン!」
「エモっ!」
「やばいー」
3人は宇賀神先生に目がハートになる。
いつものパターンだ。
「亡くなった伊藤葉氏についてお聞きしたいのですが…?」
「あぁ…
伊藤君ねー…」
「色んな子にちょっかいかけてたよねー…」
「この間も一ノ瀬と揉めてたじゃん?」
「一ノ瀬?さん?」
「あ、なんかー、佐伯さんていう彼女居るって知らないで、遊ばれて捨てられたらしいよー。
|一ノ瀬佳穂《いちのせかほ》。
まぁ、揉めてたよねー。
警察も一ノ瀬マークしてたみたいだけど、アリバイあるっつってなかった?」
「そうそう、アリバイあって、白になったってー。」
「でも、ありゃ、黒だろ。笑」
女子3人が言う。
「ありがとうございます。
助かりました。」
そう言って私たちは一ノ瀬さんにアタックしに向かった。
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