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彼が私を助けた理由は未だに分からない。
目も見えなかった私を自分の身を呈してまでも助けた理由。聞くも聞かないも記憶のない彼から聞くことはそもそもできない。
記憶が戻りさえすればあの時のことを聞きたいけど。
私が今生きている理由は彼に救ってもらった命を無駄にしたくないって気持ちがあるからなのかな。
謙也が失った機能はたった一つ。でもその1つがいちばん失ってはいけないもの。
私が失ってたのは眼。私は視力を得たが、大切な彼の記憶を奪った。
ひとつ得たらひとつ失った。
謙也は依然として明るいまま。
記憶が戻ったら、あの時私を助けたことを後悔しないか。私に怒りが湧かないか。それが不安だけど私にはただ謝ることしかない。
私の記憶を消して、あのことを無かったことにしたいって思ってる自分がいた。
でもそれこそ謙也に失礼。
謙也が記憶を喪失する前、私に「君の目になる。」と言ってくれたことがあった。今の彼はそれを思い出せない。その言葉を聞いた時私はとても嬉しかった。でも今思い出すと悲しくもなった。彼の目に映る私は、昔の私ではない。
新しい人としての私だ。
今の謙也は自分をしっかり持っている。でも中学時代の謙也は周りに合わせることしか出来ない最低男だった。
でもそんな彼に助けてもらったこともまた本当
今の私に彼を守ることができるかと聞かれたら、正直分からない。
そんなことを考えてたら夜が明けた。
私は仕事に向かおうとした。
その時ひとつの電話が鳴った。
それは謙也の通っている病院からだった。
唯華「もしもし。」
医師「朝早くからすみません。謙也さんが急に意識を失い倒れました。現在は病棟で横になって治療をしています。時間がありましたら来てください」
唯華「すぐ向かいます」
汗だくになりながらひたすら走って病院に向かった。着いて向かうとそこには横になっている謙也が居た。
唯華「謙也大丈夫?」
謙也「なんか、、頭が痛い」
医師「唯華さん、少しこちらに来てください」
唯華「はい。」
医師「今のとこ謙也さんに異常は見当たりません。リハビリも順調です。しかし、先程意識が無くなった原因はあまり分かっていません」
唯華「謙也がさっき頭が痛いって言ってました。脳に異常はありませんか」
医師「再検査をしてみましょう。」
謙也は脳に異常がないかCT検査をした。
医師「検査の結果特に異常は見られませんでした。もしかすると意識を失ったことによる後遺症。それか、記憶異常。です。まあ恐らく後遺症だと思います。このまま様子見で大丈夫です」
特に異常はなく、脳出血の影も無かった。
今日は、高校二年生のあの日、謙也が私に告った日だ。
「原西先生の!先生大丈夫ですか???」
街を歩いていたら謙也が事故を起こす前、教師として働いていた時の生徒に話しかけられた。
唯華「あ、先生は今少し記憶が戻ってなくて、まだお休みしてるの」
生徒「あ、そうだ!みんなで先生に手紙を書いたんだ。渡してくれませんか。」
唯華「もちろん、でも、先生読んでも思い出すかわからないよ?」
生徒「大丈夫!先生には感謝してるから早く復帰してほしいなー」
唯華「原西先生いい人だもんね。」
生徒「なんで泣いてるの。」
唯華「ごめんごめん。ちょっと、、ね、」
唯華「手紙、ちゃんと渡しとくね。あと早く復帰するように言っとくね」
生徒「うん!」
先生。か、
そう。私を助けたあの日から先生として仕事をすることができなくなった。そもそも彼自身が先生であることを忘れている。
それと同時に病院から電話が鳴った。
医師「謙也さんの意識がなくなりました。緊急手術は成功しましたが、意識は回復していません。」
私は胸の鼓動が早くなった。
その瞬間さっきの子供たちの声が耳に残った。
そうだ。私。やらないといけないことが。
気づけば私は謙也が務めていた学校に向かっていた。