月に届くまで

『今日ひま？』

『暇だけど、どした？』

由依にLINEをするとすぐに返ってきた。

『今日補習じゃないの？』

『今日なんかなしになってさ』

『あら、じゃあお昼一緒に食べに行く？』

雲がかかっていた心が軽くなった。

家帰って着替えてメイクしないとな。

今日はラーメンの気分だから、髪くくっていこうかな。

ステーキも食べたい。あでも、この前ステーキ食べたしな。

萩原と食べたな〜、、。

「風邪ってなんだよ」

「風邪引きに来てんのか」

驚きで、上手く言葉が出なかった。

「、、、補習は？」

「1限受けて出てきた」

「、、なんで？」

「お前がおかしいからだろ」

なんで、こんなときに過去一優しいんだ。

「昨日もすぐ帰るし」

「、、て、てかなんでここわかったの」

「電話越しにラジオ体操の音聞こえたから」

盲点だった。この河川敷では毎朝地域の人が集まってラジオ体操をしている。私が馬鹿なのか萩原の耳が良いのかわからない。

「日曜、なんか言うことあったんじゃねえの」

私が萩原に電話をかけた日だ。

「、、いや、まじで暇だったからかけただけ、出かけてるとは思ってなくてさ」

「出かけてるって言っても図書館行ってただけだけど」

「、、え、沙羅ちゃんいたじゃんよ」

「ああ、たまたま会っただけ」

、、、なんだ、、

デートかと思ってた、、。

「補習来ねえと提出プリント溜まんぞ」

「え、提出とかあんの、自由参加なのに」

「さっきも昨日も配られた」

「まじかよ、、」

塾じゃないんだから、そんなもん配るなよ。

「なんかあったのか、家の人ととか友達ととか」

「、、ううん、なんもない」

「じゃあなんだよ」

「もう大丈夫」

萩原のおかげだよ。

「萩原のおかげで」

心で思うだけじゃなくて、今度はちゃんと言葉にした。

「どういうことだよ」

「そういうことだよ」

萩原は、ため息をつくような顔をした。

「次の補習年明けだよな」

「ああ」

「よいお年をって感じで」

「、、お前がな」

もう、いい年になったよ。