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放課後。
教室を出た私は、誰とも話さずに雄英の校門をくぐった。
今日一日、何度も向けられた視線。
興味、好奇心、親切心。
どれも、今の自分には必要のないものだった。
公安から支給されたスマホを取り出し、時刻を確認する。
報告事項を整理してから帰ればいい。
今日の日中の任務は、それで終わりだ。
そう考えながら歩いていると、不意に頭上から声が降ってきた。
「おーい、蛇神ちゃーん」
聞き覚えのある声に、思わず眉をひそめる。
『……何してるんですか』
『ホークス先輩』
ホークス「何って、お迎え?」
『頼んでませんけど』
ホークス「ひどいなぁ、せっかく迎えに来たのに」
軽い調子で笑うホークスを、蛇神はじろりと睨んだ。
『仕事はどうしたんですか』
ホークス「仕事の合間。後輩の様子を見に来るくらい、いいでしょ?」
『他にやるべきことあるでしょ』
ホークス「はいはい。相変わらずだねえ」
ホークスは気にした様子もなく、私の隣を歩き始めた。
『……ついてこないでください』
ホークス「帰る方向、一緒なんだけど?」
『…』
くだらないやり取りに、蛇神は小さく息を吐く。
それでも、ホークスを追い払うことはしなかった。
ホークス「で、雄英はどうだった?」
『別に。普通です』
ホークス「ふーん。友達できた?」
『……必要ありません』
一瞬だけ、ホークスの笑みが薄くなった。
けれど、それもほんの一瞬。
ホークス「そっか。まあ、初日だもんね」
それ以上、彼は何も聞かなかった。
その優しさが、私には少しだけ厄介だった。
何も聞かれなければ、答えなくて済む。
何も知られなければ、踏み込まれずに済む。
なのに。
『……何か言いたいことでもあるんですか』
ホークス「んー? 別に?」
ホークスはいつもの笑顔を浮かべた。
ホークス「ただ、ちゃんと帰ってるか気になっただけ」
その言葉に、蛇神は返事をしなかった。
帰る場所ならある。
公安という、帰るべき場所が。
けれど、そこに自分を待っている人がいるわけではない。
__それでも、帰らなければならない。
『…公安、ちゃんと帰ってますよ。逃げられるわけないでしょう。』
仮にも、あそこは私を助けてくれた場所だ。
そう。私は公安に拾われた。
生きる場所を与えられて、仕事を与えられて、今ここにいる。
だから、逃げる理由なんてない。
ホークス「……そっか」
隣から聞こえた声は、いつもより少しだけ静かだった。
ホークスはそれ以上、何も聞かなかった。
その沈黙が、かえって居心地悪かった。
『……何ですか』
ホークス「いや? ちゃんと帰って、誘拐とかされてなくて安心だなって」
『……意味がわかりません。舐めてるんですか。』
ホークス「舐めてる訳じゃない」
ホークスは笑った。
いつもと変わらない、軽い笑顔だった。
なのに、どうしてだろう。
その笑顔を見ていると、胸の奥にしまい込んだ記憶が、静かに揺れた。
__大丈夫、俺がいるから。
『……っ』
思い出しかけた言葉を、無理やり飲み込む。
今は、考えるな。
もう、あの頃には戻れないのだから。
『というか先輩、飛べるんですからそれで帰りましょ。』
ホークス「それは俺が蛇神ちゃんを運ぶと?」
『当たり前じゃないですか私飛べません。それに、誘拐されたら困るんですよね?』
ホークス「…わかったよ」笑
コメント
1件
いやー、めっちゃ良かった……!ホークスの軽い感じと蛇神の距離感のバランスが絶妙で、読んでてずっとニヤニヤしちゃった。特に「帰る場所はあるけど待ってる人はいない」って台詞、グッと来たわ。記憶が揺れて飲み込むところ、その葛藤がキャラの深みになってて良いよね。続きどうなるのかマジで気になる🔥