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ずっとかたまらない
さらさら?どろどろ?わからない
わからない何かが僕のどこかで蠢いている
僕は何だっけ
どうして僕は僕じゃないのだろう?
「…スナフキン?」
僕の名前…じゃない
けど、そう
「…やあ」
釣りをしている姿しかあまり見ていない気がするな
どんな風にそのルビーを受け取っているのかな
君は僕にもくれるのかな
「スナフキン…ここにいても大丈夫なの?」
「…僕たちはね」
「そっかあ…」
「…」
現身の世界の君は羨ましいよ
写身の世界の君は寂しいよ
僕らは違うようで僕らはひとつだ
量産型の僕らはなるべく外見はモデルに合わせて中身は見えないから適当になる
言わば僕たちは食品サンプルみたいなものだ
…それでも、君は来てくれるんだね
「…君はスナフキンと一緒なの?」
「姿はね」
「ふ~ん…君たちは”マネマネ”以外に名前ってあるの?」
名前…
僕たちマネマネはひとつの大きな個体から生まれる
母親や父親となる何かは存在しない
例えるならウメボシイソギンチャクが口から胃の剥がれた部分が出ていって、その剥がれた体の一部が自分と全く同じ個体になって増えるかんじだ
単細胞生物とも同じだろうか
名前がほしい…なんて思ったこともなかった
そもそも僕らに名前が必要か問われると答えにくい
名前なんて要らないかな
…でも、君にならつけてほしいな
「名前はない
…君がつけてくれるかい?」
「ぼ、ぼく…?」
「ああ、君につけてほしいんだ」
「…じゃあねぇ…えっと…」
名前を一生懸命考えている彼は、
本物が優しく微笑みかけたり、彼が困るほど甘えたり抱きしめたりする理由がわかるほど愛おしかった
…僕のところの彼も、君と似て可愛いやつだけど、寄っては来てくれない
控えめで少し僕を怖がっているようにも見える
名前をもらったら、彼と話す機会ができるかもしれない
僕らも、彼らと同じように…
同じように…?
僕らは蠢くモヤモヤがスーッと消えた
僕らは、本物が少し複雑で何体かでできていた
姿は似せられても、心が揃わなかった
表情を表すことがうまくいかず、ほぼ無表情で、性格も少しぐちゃぐちゃで言葉遣いが変わったり、喜怒哀楽もよくわからないものになっていたが、そこでやっと僕らは1つになった
1つになったことで人格がまとまった
本物に近づけるかもしれない
本物に近いなら愛してもらえる______
「君の名前ねぇ…!×××」
「…いい名前だ ありがとう」
僕は礼を言って水面に飛び込んだ
本物の彼は水面に写っていたため、彼に飛びつくように鏡の世界に僕は帰ってきた
「わっ…!」
彼は目を白黒させてあわあわし始めた
さっそく名前を教えなくちゃ
「ムーミン、僕、新しい名前をもらったんだ」
「え…?」
「×××」
「そ…そうなんだ…
あの…どうしてぎゅってしたままなの…?」
初めて見た
こんな顔、君、そんな顔するんだ
「スナ…×××…?」
「もう少しだけ、このままでいさせて」
「え…///」
「ダメかい?」
「ダメじゃないよ…っ!その…嬉しいよ
僕、君が好きだから…」
「…!!」
唐突に告白され、こちらが赤くなる
ただただ怖がられていると思っていた
だから、すごく嬉しかった
僕は嬉しくて彼を抱きしめたまま耳に口づけをした
彼の耳はピクンっとしてパタパタしていた
彼の顔は、さらに赤くなって
恥ずかしそうに僕を抱き返してくれた