テラーノベル
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CR。
自動ドアが開き、貴利矢が診察室へ足を踏み入れる。
「お、みんな早いじゃん。」
見渡せば、飛彩、大我、ニコの三人はすでに揃っていた。
とはいえ、どうやら全員ついさっき戻ってきたばかりらしい。
机の上にはまだ置かれたばかりの端末。
白衣を整える飛彩。
椅子へ深く腰掛ける大我。
ニコも息を整えながら椅子に座るところだった。
「全員揃ったな。」
飛彩の一言で、その場の空気が引き締まる。
それぞれ席に着き、一息つく。
短い沈黙の後、飛彩が口を開いた。
「まずは報告だ。」
「収穫はあったか。」
貴利矢は頷く。
「ああ。」
端末を操作し、一枚の写真をモニターへ映し出した。
石畳に刻まれた三文字。
『ABX』
「自然公園で見つけた。」
「意味はさっぱり分かんねぇけど。」
続いて大我も端末を取り出す。
「俺たちもだ。」
映し出されたのは、コンクリートに深く刻まれた三文字。
『XLY』
「幻夢コーポレーション近くの屋上。」
「誰かが意図的に残した跡だ。」
最後に飛彩が自らの写真を表示する。
崩れた壁に、鋭く刻まれた文字。
『RAB』
「ネクストゲノム研究所。」
「傷の深さ、刻み方ともに、人為的なものと判断した。」
三枚の写真が並ぶ。
部屋は静まり返った。
三人は無言でモニターを見つめる。
誰も口には出さない。
だが、一つだけ確かなことがあった。
これは偶然ではない。
その時。
診察室の自動ドアが静かに開く。
「お邪魔しまーす。」
ポッピーが車椅子を押しながら入ってきた。
「……お前らか。」
車椅子には永夢が座っている。
「すいません。勝手に来ちゃいました」
少し申し訳なさそうに笑う永夢。
「でも、どうしても気になって。」
飛彩は一瞬だけ永夢を見つめる。
車椅子。
無理をして歩いている様子でもない。
「……そこにいろ。」
短くそれだけ告げる。
永夢は小さく頷いた。
「はい。」
ポッピーが永夢をテーブルの横へ移動させる。
永夢が4人へ目を向ける。
「何か分かったんですか?」
貴利矢がホワイトボードに貼り付けた三枚の写真を指差した。
「これ。」
「4人が別々の場所で見つけた。」
永夢は車椅子のまま、ホワイトボードへ視線を向けた。
『ABX』自然公園
『XLY』幻夢コーポレーション近くの屋上
『RAB』ネクストゲノム研究所
「……。」
しばらく誰も口を開かない。
部屋は静寂に包まれた。
「全部アルファベット三文字……。」
ポッピーが呟く。
「もーわかんないよおお!!」
ニコが腕を組む。
「なんかの略語だったりしないの?」
「いや。」
飛彩が首を横に振る。
「医療用語にも該当しない。」
「英単語でもねぇな。」
大我も眉をひそめる。
貴利矢は三枚を見比べる。
「順番にも意味があるのか?」
「ABX……XLY……RAB……。」
永夢も小さく呟く。
だが、答えは出ない。
だが、文字列を見つめても答えは浮かばない。
「……。」
ふと、永夢の視線がホワイトボードの左側へ移る。
そこに書かれた発見場所。
自然公園。
幻夢コーポレーション近くの屋上。
#二次創作
よんがつ
126
#夢小説
しらすのお部屋
568
つばさ
206
ネクストゲノム研究所。
「……。」
永夢の表情が少しだけ変わる。
「この場所……。」
「全部。」
「僕とパラドにとって、大切な場所だ。」
飛彩たちも改めてホワイトボードへ目を向ける。
「ネクストゲノム研究所は、パラドが生まれた場所。」
「屋上は……僕がパラドを消滅させた場所。」
「そして自然公園は、パラドが自分の命を懸けてゲムデウスを止めた場所。」
ポッピーも静かに頷く。
「全部、パラドの人生に関わる場所……。」
貴利矢が腕を組む。
「ってことは。」
「やっぱり、この文字を残したのは……。」
永夢は静かに頷いた。
「ああ。」
「パラドで、間違いないと思う。」
「レウコイドに支配されていても、一瞬だけ意識を取り戻して……。」
「きっと、僕たちに何かを伝えようとしてるんだ。」
部屋の空気が、一気に張り詰めた。
それから数十分。
誰も口を開かなかった。
ホワイトボードに並ぶ三つの文字列。
ABX
XLY
RAB
飛彩は文字の規則性を探る。
大我は腕を組み、じっと見つめる。
貴利矢は写真と現場の状況を思い返す。
永夢も何度も文字を追う。
しかし。
「……分からない。」
永夢が静かに息を吐いた。
文字列にも。
発見場所にも。
何か意味はある。
そこまでは分かる。
だが、それを繋ぐ最後の一歩が見えない。
重たい沈黙が部屋を包む。
その時だった。
「ねぇ。」
ポッピーがぽつりと口を開く。
全員の視線が集まる。
「これって……。」
「パラドが残したものなんだよね?」
「ああ。」
永夢が頷く。
「だったら。」
ポッピーはホワイトボードを見つめたまま続けた。
「パラドらしく考えた方がいいんじゃない?」
「パラドらしく……?」
貴利矢が呟く。
「ゲーム。」
永夢は迷いなく答えた。
「パラドはゲームが大好き。」
「だったら、この文字にもゲームらしい意味があるのかも。」
「ゲーム……。」
その言葉が部屋に響いた瞬間。
「「あっ!!」」
永夢とニコが同時に声を上げた。
思わず二人は顔を見合わせる。
一瞬の沈黙。
そして二人は同時に口を開いた。
「「マイティアクションXの裏世界へ入るコマンド!!」」
「……は?」
大我が眉をひそめる。
「裏世界?」
貴利矢も首を傾げる。
永夢はホワイトボードへ近づく。
「マイティアクションXには、特定の入力をすると行ける隠しステージがあるんだ。」
ニコも興奮気味に続ける。
「普通にプレイしてたら絶対行けない、完全な裏ルート!」
「開発者しか知らないレベルの隠し要素でさ!」
飛彩が静かに尋ねる。
「そのコマンドが、この文字列だというのか。」
「……は?」
貴利矢が目を丸くする。
「そんなもん覚えてんのかよ。」
「当然でしょ。」
「ゲーマー舐めんな。」
ニコが即答する。
「僕も相当やり込んだから。」
永夢も苦笑する。
飛彩がホワイトボードへ目を向ける。
「ということは。」
永夢は三枚の写真を順番に見た。
そして、順々に指を指す。
ネクストゲノム研究所
『RAB』
幻夢コーポレーション近くの屋上
『XLY』
自然公園
『ABX』
「この順番だ。」
ニコも頷く。
「私もそう思う」
ニコはホワイトボードへ歩み寄り、マーカーを手に取る。
三つの文字列を一本の線で繋ぐ。
RAB XLY ABX
「これが。」
「パラドが僕たちに残したメッセージだ。」
部屋の空気が一変した。
「でも……。」
大我が腕を組む。
「そのコマンドで何が分かる?」
永夢は静かに息を吸う。
「試そう。」
「パラドはきっと、その先に答えを残してる。」
永夢はホワイトボードから視線を外すと、車椅子の横に置いていたバッグへ手を伸ばした。
「ちょっと待って。」
ごそごそと中を探り――
一つのゲーム機を取り出す。
『マイティアクションX』
「……。」
部屋が静まり返る。
「いや。」
貴利矢が呆れたように口を開いた。
「何で今すぐ出てくるんだよ。」
永夢はきょとんとした表情で答える。
「いつも持ち歩いてるので。」
「便利ですよ。小児科は子どもが多いし、待ち時間に遊んでもらえたりするから。」
「……なるほど。」
貴利矢は一瞬だけ納得しかける。
「いや、納得しかけたけど、おかしいだろ。」
「細かいことはいい。」
大我が腕を組んだまま一言。
「早くやれ。」
「は、はい。」
永夢はゲーム機を起動する。
タイトル画面が映し出される。
手慣れた操作でゲームを進め、とあるステージまで移動する。
「ここだ。」
永夢とニコは顔を見合わせ、小さく頷いた。
「入力するよ。」
永夢の指がボタンの上を滑る。
R。
A。
B。
続けて。
X。
L。
Y。
さらに。
A。
B。
X。
入力を終えた瞬間――
画面が一瞬だけノイズを走らせた。
「来る。」
ニコが息を呑む。
次の瞬間。
ステージ全体が光に包まれた。
「……!」
景色が変わる。
見慣れたステージのはずなのに。
空の色も。
地形も。
流れるBGMさえ違う。
誰も知らない。
いつもと違う。
マイティアクションXの裏世界。
「これは……。」
永夢がゆっくりと画面へ近づく。
その先にあったのは――
パラドが残した、一つのメッセージだった。
部屋の空気が張り詰める。
永夢は静かにその文字へ目を向ける。
「……パラド。」
コメント
1件
読み終えました…。パラドがレウコイドに支配されながらも、一瞬の意識で託したメッセージ、胸にくるものがありました。ゲーム好きのパラドらしい伝え方だなって思います。永夢くんがいつもゲーム機を持ち歩いてる話、ちょっと微笑ましかったです。裏世界の先にどんなメッセージがあるのか、すごく気になります…。続き、楽しみにしてますね🤍🥀