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「りんちゃんなんてだいっきらい‼︎」そう言い放つと私は呆然と立ち尽くしている竜胆に背を向け家を飛び出した。後ろから私を呼ぶ声が聞こえたが聞かなかったフリをして。彼に背を向ける瞬間竜胆が傷付いた顔をしていたような気がしたから一瞬止まろうと思った。だけど一度止まってしまえば涙が溢れ出してしまうと思ったから。こんなことをしておいていまさらではあるけれど竜胆にこれ以上面倒な女だなんて思われたくなかった。
「きゃっ!」竜胆が借りているマンションのオートロックを抜けてどこへいくのかも考えないままただ徒らに早足で歩いていると足元に衝撃がありその場に座り込んでしまった。足元を見ればハイヒールが折れてしまっていた。もっと歩きやすい靴でくればよかったのだが、そんなことを考えてる暇もなかった。あの場所から少しでも早く立ち去りたくてなにも考えずにこのお気に入りを履いてきてしまったのだ。今日は本当に最悪な1日だ。竜胆と喧嘩をするし、ヒールは折れるし、その拍子に足を挫くしこれじゃあ歩けないからと靴を買おうかと思ったが、出てくるときにスマホも財布何一つ持たずに出てきてしまったのだ。さらに私の気分をドン底にしたのはこのハイヒールは竜胆からの送りもので1番のお気に入りだった、という事実だ。折れたヒールをみながら先程喧嘩した竜胆のことを思う。喧嘩したきっかけなんて些細なことだった。しかも私が悪かったんだと思う。いつも激務で疲れている竜胆にわがまま言って。竜胆にだいきらいって言っちゃった…竜胆他の女の人と付き合っちゃったらどうしよう…もう捨てられちゃうのかな…竜胆にあんな顔させてしまったし…折れたヒールを見ながら自分たちの関係もこんなふうに折れてしまうのだろうか、そう思うともうだめだった。家を出た時はなんとか堪えていた涙が、目からぼろぼろと大粒の滴となって溢れ出た。「〇〇!」私の大好きな声が聞こえた。自分に都合のいい幻聴だろうか。それでも、たとえ幻聴だったとしても竜胆かもしれないって、縋りたくて、振り返ると竜胆が焦ったように息を乱しながらそこにいた。ほんとにいたなんで、どうして「なんでって好きな女がこんな時間に出てったら心配にもなるだろ」心の中でつぶやいたと思っていた言葉は口から音となって彼の耳に入ったらしい。そう答えた彼に私はたまらなくなって竜胆に抱きついた。好きな女って、まだ好きな女って言ってくれた。しっかりと抱きしめ返してくれた竜胆の胸の中で子供のように泣く。竜胆はやさしく頭や背中を撫でて落ち着くまで待ってくれていた。「ぐすっ…りんちゃっ…ごめんね…」「俺の方こそごめんな」「あとハイヒールりんちゃんに買ってもらったのに壊しちゃったの…」「そんなんいつでも買ってやるから泣くなって」「りんちゃん私のこと好き…?」「死んでも手放してやりたくないくらいには好きだよ」「私すごく面倒な女だよ?」「お前にならどれだけ面倒かけられたっていい」だから…嫌いだなんて嘘でも言うなよ…そう弱々しい声で言った竜胆に私は胸が締め付けられるような思いだった。やっぱり彼を傷付けていたんだ…「もう絶対言わないよ…りんちゃんだいすき…」そう言うと竜胆は嬉しそうに笑ったのだ「ほら、はやく帰って足の手当すんぞ」「うん!」そうして竜胆に抱えられながら私の大好きな彼との家へと帰っていった。