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「何言ってんだよ。そんな簡単に割り切れる訳ないだろ!」
僕は地面に膝をついて泣き崩れた。
すると葵は僕のもとに駆け寄り、胸の中で抱きしめてくれた。
「瑛太…泣かないで。そんなに泣いてたら…私だって…」
葵は声をあげ泣き始めた。
葵は僕がここに来てから泣くのをずっと我慢していた。
目に涙を貯めて今にも泣き出しそうな顔で平静を装っていた。
「私…何処にも行きたくない。瑛太と遥香と一緒にいたいよ…」
「葵…‥」
「怖いよ…。私、死にたくない。助けて…瑛太…」
すると僕を抱きしめている葵の腕が透け始めた。
それは次第に体全体に広がっていた。
今にも目の前から消えてなくなりそうだった。
「葵っ…行くな! 行っちゃダメだ!」
「瑛太、もう…私……ダメみたい。さよ…な…らだよ。ご…めん……ね」
「何言ってんだよ。僕らにお別れなんてなっ‥」
葵は突然僕の唇にキスをしてきた。
震える唇で…最後のキスをしてきた。
そして葵の体は…‥
数分後には全身が透けて完全に消えてなくなった。
「葵っ!」
『愛してるよ…』
何処からともなく声が聞こえてきた。
「葵っ!」
僕はしばらくの間、その場から離れられなかった。
葵がいなくなるのはわかっていた。
心の準備もしていた。
でも…いざ現実に起こってしまうと、それは受け入れ難く、事の重大さがヒシヒシと伝わって放心状態へと陥っていった。
急に胸が苦しくなった。
呼吸さえもするのがツラかった。
僕にとって葵は僕の人生の全て…‥
僕にとって葵は空気のような存在…‥
あって当たり前だけど、なければ生きては行けない。
葵と一緒に生きて行くのが僕の希望…‥
葵がいなければ、そこは淋しくて切なくて悲しくて苦しくてツライだけの絶望の世界…‥
そんな世界で、生きて行く自信は今の僕にはない。
「1人にしないでくれよ。葵っ…」
僕は何度も拳を地面に叩きつけた。
そして何度も何度も額を地面に打ち付けた。
すると額から血が流れて目の中に入った。
このまま死なせてくれと思った…。
葵のいる世界に連れて行って欲しいと願った…。
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