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昴side
同居宅に呼ぶと言っても、
先に事情話してからの方がいいよな。
蓮さんがせっかくいいよって言ってくれたのに
迷惑かけられないし。
「あ、のさ。」
「んー?」
「どうしたの?昴」
「今度の連休なんだけどさ、うちで勉強する?」
「いいのか?」
「ただ、その。事情がありまして。」
「事情?僕のゲイってカミングアウトより
大変なこと??」
「あー…それは自虐ネタ的な?」
「うん!笑ってもらっていいよ」
「お前、わかりにくいわ」
「痛!なーんで叩くのさ!!」
「うっせ!!」
「はは…。とりあえず今日放課後空いてる?」
「いっつも空いてないのは昴じゃーん!」
「今日はバイト無いんか?」
「うん。今日は休み。だから、駅のところの
ファミレス行こ!」
「わーい!」
「おう」
「んで?事情ってなんだよ」
「なーんでまもちゃんはそんなにガツガツ
行くかなーー!タイミングがあるでしょ!」
「うるせぇなぁ!んなもん隠してたっていい事
ねぇだろうよ」
「ははっ、大丈夫だよ。
飲み物だけ頼んじゃおうか」
「俺ね、施設育ちなんだよ」
「え!?」「っ!!?」
「両親ともネグレストでね。
5歳の頃に餓死寸前のところを保護されてそこか
らずっと施設育ちで、その施設も結構劣悪な環境
でさ。18で出なきゃいけないし。」
「「……………………っ。」」
「バイト漬けの毎日で、これからのことなんて
考える余裕も、考えたくもなくて、バイト前に
公園で昼寝してたらさ、今住んでいるところの
家主さんと出会って。」
「蓮、さん?」
「そう、斗真と初めて会った時、一緒にいたんだ
よね。あの人、暁グループの次期社長なんだって」
「暁グループ?」
「え?!まもちゃんそれも知らないの?」
「知らん」
「大手企業のトップみたいな会社でしょ?!」
「実は俺もよく知らないんだけどさ、
なんかの気まぐれだとは思うんだけど、その人が
俺の元で働かないかって、住み込みで家政婦とし
てどうだって、提案してくれて。
家賃も生活費も何も俺は出してないのに、
しっかりお給料もくれてて、元々バイトしてた居
酒屋も蓮さんの後輩がやってた場所らしくて、
バイトの日数も減らして、普通の人みたいな
生活を今送ってるんだ。」
「そう、なんだ。」
「へぇー、やっぱり金持ちはすげぇな」
「んね!考えがぶっ飛んでるもん!」
「それで、2人のこと…俺に出来た初めての
友達だって話してて、今度蓮さんの家で勉強会を
していいか聞いたら、当たり前のようにいいよっ
て言ってくれて。しかも、泊まりで遊びに来れば
いいのにって。」
「泊まり?!!いいの!!?僕は行きたい!」
「その蓮さんの家ってか昴ん家だろ?
行きてぇなめちゃくちゃ楽しそうじゃんか」
「っ!!うん!じゃあ伝えとく!」
蓮side
明らか昴が俺に何かを言いたそうだ。
さっきご飯美味しいことと、食費はあるかの
確認はしたがそれじゃないらしい。
……難しいな。
下手に聞きすぎるのもウザがられるだろうし
少しずつ慣れて来てくれてるのに、変に距離が
出来てしまっても悲しい。
そもそも、なんで俺はこの子を迎え入れたいと
思ったんだろう。
他人との距離感が上手く測れない俺が
自分から距離を縮めたいと思うなんて。
朔月にも言われたが、珍しい事もあるもんだ。
「あの、蓮さんっ」
「っ?!なんだ?」
まずい、動揺をしてしまった。
彼はすぐそういうのをわかってくれる子だから
気を付けているのに。
「……あの。今度の連休友達をお泊まりに呼んで
もいいですか。」
「っ!!もちろんだよ!!」
ああ、また失敗した。
こんなに勢い込んで返事する気無かったのに。
彼の前では、いつも通りでいられない。
彼の前では、大人な冷静な人間でいたいのに。
どうしてこう、上手くいかない。
「ありがとうございます!」
「ああ。」
とても嬉しそうに、キラキラとした笑顔を向けて
くれた。
その笑顔を守りたいと思うし、こんなにいい顔で
笑うんだと見せびらかしたいも思う。
のに、俺のだと主張したい気持ちにもなる。
……俺のじゃないのに。
なんなんだろうか。この気持ちは。
自分の気持ちがわからなくて、気持ちが悪い。
昴side
「ただいまです」
「「おじゃましまーす!」」
「おかえり」
「おかえりなさい!よく来たね!」
斗真と真守とお泊まりをする連休がやって来た。
昨日の夜遅くまで、部屋の片付けなんかをして
今日のご飯は、蓮さんと朔月さんが前に
特に喜んでくれたご飯にしてみた。
……完全に浮かれている。
とても楽しみで、しょうがない。
玄関に入ると、いつも通りの蓮さんと
斗真と真守に気を使ってくれる朔月さんがいた。
「蓮さんたちもうお仕事終わってたんですね」
「そー、蓮さー今日めちゃくちゃ巻きで終わら
せてくれたから、皆が来るのに間に合ったよ」
「今日に限らず仕事は早く終わらせたいだろ。
平日は家に帰れば昴のご飯が待ってるんだぞ。」
「まぁ、それはそうかもだけどさ」
「へへ、ありがとうございます。
あ、あと紹介しますね。
友達の榎本斗真と佐々木真守です。」
「よろしくお願いします!!」
「……お願いします。」
「よろしく。昴の保護者の黒崎蓮だ。」
「よろしくね!こいつこんな無愛想だけど、通常
運転だから気にしないで!俺、三枝朔月!」
「昴と話してる時とは違うんですね!」
「ほんとだよねーもっと俺にも優しくなってくれ
てもいいんだけどさー」
「お前に優しくして俺に何の得があるんだ?」
「えーもっと仕事に身が入ったり?」
「俺が褒めたりしなくたって、お前は完璧な仕事
をするだろ」
「っ、」
「…多分っすけど、めちゃくちゃ褒めてくれてますよ。多分っすけど」
「っだよね!?どうしたの?!急に」
「…?」
「ダメだ!この人はこういう人だったわ。」
「ははは、とりあえず部屋行こうか。
今日の目的は真守に勉強を教えることだからね」
「……優しめでお願いします」
「それはまもちゃんの態度次第!」
「ちっ、」
「あー!ちとかしないの!」
「うっせぇな!」
「もし行きず待ったら呼んで?俺、昔家庭教師と
かやってたから!」
「え!朔月さん先生だったんですか?僕、朔月先生
に教わりたいですー」
「斗真?」
「昴、まもちゃんの面倒で手一杯でしょ?
それに昴、英語苦手だよね?俺も英語ダメだから
教わって俺が昴に教えてあげるよ!」
「え、でも」
ちらりと朔月さんの方を見ると
にこりと笑い頷いてくれていた。
「じゃあそうしようか。朔月さんありがとうござい
ます。」
「いいよ!部屋はどこでやるの?昴くんの部屋?」
「あ、そうですね。机足りるかな」
「リビングでやれば?」
「え?!」
思わぬ提案が飛んで来た。
その声の方向に目を向けると、
きょとんとした顔で、さも当たり前のように
こちらを見る蓮さんがいた。
「いいんですか?」
「うん?いいよ。俺がいて気が散るなら
俺が昴の部屋に行こうか?」
「というか、蓮も教えてあげればいいのに
大学では俺よりも順位良かったんだから」
「え!そうなんですか?」
「…そうだったか?」
「嫌な奴だな本当に」
「昴、英語教えようか」
「いいんですか!じゃあ真守に教える合間に
教わりたいです!」
「……おい。」
「ん?どうしたの、真守」
「お前、そんな片手間で出来ると思ってんのか」
「……なにが?」
「俺、中学の問題も危ういぞ?」
「「は!!?」」
「え、え?!まもちゃん」
「お前、どうやって高校入ったんだ?」
「まもちゃん、もしかして裏口……」
「ちげぇよ、家から近いし楽だから勉強して
したら受かった」
「「天才肌」」
真守に教えるのは本当に大変だった。
だけど、1回教えると理解してくれるので
本当に天才肌なのかもしれない。
覚えればいいだけだろ?
と、言ってきた時は殴りたくなったけど。
真守に問題練習させている間に、俺は蓮さんに
教わることになった。
本当に……英語が。
「え、めちゃくちゃわかりやす」
「そうか?」
「はい、俺英語全然出来ないんすよ。
なのに普通に解けましたもん教わったところ」
「昴が理解力あるだけだよ」
「絶対違います。学校の授業で覚えられてない
もん。」
「そうなの?」
「そう。えー先生と合わないのかな。
赤点までは行かないけど1番出来ない。英語」
「……ふっ」
「?」
突然笑う蓮さんに思わず目線を向けると
いや、だってと小さく呟き言葉を発した。
「昴、やっと俺に砕けた話し方してくれた」
「え?」
「出会ってからずっと話し方硬かったから
少しでも砕けた話し方してくれて嬉しいよ。」
「そんな、俺、嫌な言い方してました?」
「違う違う。それが、昴なんだなと思ってるから
別に嫌とかでは無いけど、ずっと一緒に暮らして
るし、お互いあまり堅苦しくない方が楽だから。
ああ、こんな言い方したらまた君は気にするね。
んー。……何が言いたいかと言うとね
自然体でいてくれて構わないよって事なんだ。
斗真くんや、真守くんといる時までとは
言わないけど、楽に過ごして欲しいんだ。
わかる?」
「…はい。すぐには無理かもしれないけど、
ちょっとずつなれて行けるように頑張ります。」
「楽しみにしてる」
「えーー、お2人さん?君らだけの世界に入らな
でくれるかな??」
「邪魔すんなよ。朔月」
「はいはい、すみませんねー」
「僕から見たら2人めちゃくちゃ仲良いけどね!」
「斗真?」
「そー思っただけーー」
「じゃあ、そろそろちゃんとお勉強しますか!
斗真くん教科書貸して」
そこから蓮さんと朔月さんの地獄のような
勉強メニューが始まりヘトヘトになるまで
シャーペンを握り続けた。
「「「あーーーつかれたーー!!」」」
4時間ぶっ通しの勉強会に疲れ果て
リビングで大の字で倒れ込む俺たち。
それを見て、大人2人はニコニコしている。
「俺、こんなにぶっ続けで勉強したの初めてだわ」
「僕もーー指いたーい」
「……疲れた」
「じゃあ今日は俺がご飯の用意しようかな!
昴くんもお疲れだからね!蓮も手伝ってね」
「あぁ、朔月さん。昨日のうちに下準備は
出来てるんです。」
「さすがだね」
「今日、昴の手料理食べれるの!?やったー」
疲れでいつも以上にハイテンションの斗真が
抱き着いてくる。
よろめいた俺を支えてくれたのは蓮さんだった。
「仲良しだね」
そう一言だけ放つと、朔月さんのいるキッチンに
向かってしまった。
斗真を真守になげてキッチンに向かう蓮さんを
追いかけた。
「蓮さん!」
なんで名前を呼んだのか。
何にこんなに必死になっているのか。
よくわからないまま発した言葉に蓮さんが、
こちらに目線を向ける。
「どうしたの。昴」
「えっと。あの……お、れご飯の準備しますよ
勉強教わって、ご飯まで作らせたらバチが当たり
ます。蓮さんも朔月さんも休んでて下さい。」
「じゃあ、一緒にやろうか。手伝わせて昴」
「え。」
「そうだよー昴くん
3人でやった方が早いよきっと。それに、たまに
は蓮にも手伝わせなよーいくら家政婦だって
言ったって普通の家政婦と主人の関係じゃ
ないんだからーね!」
「……はい。」
なんなんだろう。このモヤモヤは。
なんでこんなに、
離れたくないと思ったのだろう。
斗真side
同性愛者ってね。臆病になりがちなんです。
ノーマルの人を好きになっても両思いになれる
確率は低いし、仮に想いを伝えても最悪な結果に
なる事の方が多い。
だから、僕は成人して同性愛者の出会いの場に
行けるようになるまで好きな人は作らない。
そう決めていた。はずなのに。
昴の家にお邪魔して、蓮さんと蓮さんの秘書の
朔月さんがお出迎えをしてくれた。
その時からもう、落ちてしまったんだと思う。
一目惚れなんて、絶対しないと思っていたのに。
[三枝朔月さん]
家にお邪魔してからずっと彼を目で追っている。
見すぎて目が合うと不自然に逸らしてしまうから
絶対変な奴だと思われてる。
多分、昴とか蓮さんから僕が同性愛者だって
伝わってるはずなのに、気にせず話かけてくれる
頭も良くて料理も出来て、大人で。
そんな惹かれている人と、今。2人きりだ!
まもちゃんは疲れ果てて、リビングの端の方で
大イビキかいて寝てるし、昴と蓮さんはキッチン
で、ご飯の片付けをしてる。
手伝うと言ったけど、お客さんは休んでてと言わ
れとりあえずリビングに戻って来た。
「斗真くん」
「っはいっ!」
声が裏返った。
「さっき教えたところ、またわからなくなったら
いつでも言ってね。あそこ難しいから……
そーだ!もし良かったら連絡先交換しない?」
「えっ!!」
「さっき話してても思ったけど、気が合いそうじゃ
ない?俺ら。色々相談にも乗るし、勉強も
わからないところあったらすぐ聞いてよ!」
「はい!是非!!」
心臓が止まりそうだ。