目が覚めると、そこはどこかの家だった。
「何回目の此処何処なんだよ…」
「それな」
「仁!身体大丈夫?」
「なんとも言えねえな。どんな作用の薬か判断つかねえ。正直、熱っぽい。」
それ、ほんとに大丈夫なの?
「よかった!起きたんだ。」
「おはよう、お二人さん」
「彩月、樹月…」
「…あのs…」
「ごめんなさい。」
突然、謝られた。
「なんで?」
「巻き込んでごめん。あと、2度も辛い目に遭わせてごめん。」
「後、心配かけたよね。本当にごめんなさい。巻き込まないためにsosを出せなくて…」
嗚呼、なんて優しい人なんだろう。なんて、儚い人なんだろう。
「ばかっ…二人…とも…大馬鹿…」
「うん、うん」
「生きててよかった。あの手紙が遺書じゃなくてよかった…」
思いが溢れる。十年、長かったなぁ。
「でも、馬鹿は傷つくなあ」
「この空気ぶち壊し野郎w」
みんなで久しぶりに声をあげて笑った。
「詳しいことは後で聞く。でも、此処は何処?」
単純な疑問だ。
「此処は…」
コンコン
ノック音がする。
「誰だ」
「妖尾姉?あの、猫又様来てるんだけど…」
「モモちゃんか。此処にはいないと伝えてちょうだい。」
「うん!わかった!」
声はまるで子供だ。でも…
「ねえ、彩月、あの子は?」
「ああ、桃華(モモカ)ちゃんね。今年で八歳になる、鬼神の子供。私と樹月が世話任されてる。」
鬼神に子供…?まさか…
「なあ、その子、“彩月が産んだ”とか言わないよな。」
「私は妊娠できない体質だ。だから違うよ。」
ひとまず安心だ。
「俺たちは一応“鬼神の子供”ということになっている。だから、モモちゃんには何も問わないであげてほしい。あの子は…鬼神の子供…でも、純粋で、天真爛漫な子供だ。だから…」
「…問わないよ。でも、一つ聞く。母親は誰?」
「…っ…」
なんで、答えないの?
「…あの子の母は…“鬼神が殺したんだ”。彼女の名前は“無華”と言って、優しく、俺たちを庇ってくれた。それで…だから、俺たちが殺したも同然なんだ…」
「妖尾姉、艶尾兄入るよ!」
「いいよ」
この子は絶対護らないといけない。それが、無華さんとの最後の約束。
「妖尾姉、だいじょうぶ?げんき、なぁい?」
「…っ…大丈夫だよ。ちょっと、疲れちゃってね。」
「にいちゃんは元気だぞ!」
「お前は元気すぎw!l」
樹月はいつも、周りを笑かしてくれる。君は、すごいよ。
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数刻前…
彩月に案内してもらい、部屋に着いた。
「彩月、ありがと。」
「いいの。後、仁、ちょっといい?」
「え?あ、うん。」
廊下に呼ばれ,出ていくと…
「自分を責めんなよ。」
そう言われた。
「樹月も、そうなんだ。私を守れなかったってひたすら自分を責める。その時の眼と仁の眼が、似ていたから…」
よく見てるなあ。樹月も、きっと助けられてきたんだろうなぁ。
「俺はいつも無力だ。必要な時にいつも動けない…なん…で…なんで…俺は…俺は…!」
突然、彩月に抱きしめられた。
「…へ?」
「君は、頑張ってるよ。君は偉いよ。こうやって、来てくれた。だから、無力じゃない。大丈夫だよ…」
俺は気づいた泣いていた。すごい、ダッサイけど、安心して声をあげて泣いてしまった。
そして、絶対に彩月と樹月を守る。そう決めた。
翌朝、樹月に起こされた。
「聖?起きろ、朝だぞって…はぁ。こいつ寝起き最悪だったなあ。」
「ゔん…おはよう…」
「うん。おはようwでさ、聞きたかったことあるんだろ?」
「…あ〜うん。此処はなんの施設なの?子供の声がいっぱい聞こえるからさ。」
「此処は養護施設。子供が生活するところ。勉強したり、遊んだりするんだよ。」
そうか、だから子供の声が聞こえるのか。
「二人は此処の施設長って感じなんの?」
「いや…うん…なんだ…護衛って感じ?」
なんか、曖昧だなぁ。まあそんな感じか。
「艶尾さ〜ん?何処ですか〜」
「聖、耳塞いで。」
「え?なんで?」
「ヴゥンスゥー此処だぞ〜!!」
やばい…耳が…
「はぁ、だから耳塞げっていったんだよ…w」
「んぇ?なんて?」
「此処に居たんですか…。もう朝ごはんできてますよ。後、誰ですか、その人?妖尾さんも連れてたけど…。」
俺こそ、そっちが誰?って感じなんだけど…
「…あぁ…後でみんなに教えるよ。先行ってて。」
「え〜おーしーえーてー!」
「早く行かないと鬼が出るぞ〜!みんな食ってやる〜!」
「きゃ〜!やめて〜!」
樹月はその少年をさりげなく遠ざけた。
「…あの子は?」
「煌(コウ)っていうんだ。あの子は誘拐…まあ俺と彩月と同じ年齢で誘拐されてきたんだ。今は十六歳だな。弟みたいなもんだ。」
「そうなんだ…」
そう言えば数年前に行方不明届出ていたな。
ってことは…
「ねえ、此処にいる子たちって誘拐されてきた子なの?」
「…そうだよ。ある程度栄養が取れたら、俺か彩月が孤児院に届けているんだ。」
だから問い合わせが多かったんだな。
「おはよう、聖!」
「はよ。彩月元気だな。」
「私朝方だから。あ!みんな〜!ちょっと集まって。」
彩月が子供たちを呼ぶ。
「どーしたの?」
「またおともだちふえる?」
「このお兄さん二人は、みんなを守ってくれる人だよ。名前は…」
「…僕は“彩(イロ)。よろしくね♪♪」
「俺は“樹(ジュリ)!仲良くしてね〜🎵」
「…えっと?彩と樹と仲良くしてね!」
子供たちの声はめっちゃ元気だった。
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