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今年2月、インフレを抑えようとした銀行は、新紙幣を発行、特別都市計画法の制定により、私たちの土地含む115の都市に復興が図られ始めた。この頃はまだ食料が不安定ではあるものの、大阪は少しずつ、回復の兆しを見せている。
いつも、夢に出てくる。空襲警報の音、爆撃される街、瓦礫の下敷きになった妻と子。救い出そうとしたが、幾枚も重なった瓦礫の下で、既に2人は息絶えていた。そこで目が覚める。脳は覚えているものだ、音も景色も。気持ち悪い、吐きそうだ。息が苦しい。私だけが生き残ってしまった。なぜ私だけ
「ぉぁょぅ」
「ん」
袖を2回引っ張られ、現実に戻ってきた。 「ああ、おはよう」
こくり
私とこの子の不思議な共同生活は、早くも2ヶ月ほどを過ぎようとしていた。配給を分け合い、何とか生きている。困った事はない。自分の事は自分でしているいい子だ。 ゆうくん、漢字では多分優と書く。身寄りがおらず、目が見えない少年だ。話すうちにわかってきたことがある。 優くんの盲目は先天性である。私のように後遺症により不自由になったわけではないだろう。という点が1つ。
「昔は、お父さんとお母さんがいたの?」
こくり
「… まだお父さんもお母さんも生きてる?」
ふりふり
目には涙が浮かんでいる。心苦しいが、いずれ聞かなければならないことだ。
「…お母さんもお父さんも… 死んじゃったの」
ふりふり
「お父さんは生きてる?」
こくり
「どこにいるかわかる?」
ふりふり
これが、あの出会った翌日の会話だ。この2ヶ月にかけて、 少しずつ優くんの詳細が分かり始めた。優くんは父、母、優くんの3人家族だったらしく、
あの空襲の時、母を亡くし、1人なりに必死で人々に助けを求め逃げていたという。私は父と母を早くに亡くし、兄弟姉妹もおらず、事実上の戸主扱いなため、徴兵は免除になっていた。が、優くんの父はそうも行かず、父とは徴兵により生き別れ、結局、生きているかも死んでいるかも分からない状況らしい。母は最後に、何かを優くんに伝えた事から亡くなっているだろうという話だ。何を伝えたかまではこのコミュニケーションの仕方でわかることは不可能だが、おそらく自分は長くないということを悟り、優くんに伝えたのだろう。
「優くん」
「?」
「優くんのお父さんを探そうと思う。見つかったら、僕とわかれて、お父さんの元で暮らすんだよ。」
こくり
「一緒に探してみようか」
こくり
寂しいのか嬉しいのか分からない顔で、私の方を見つめていた。