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これは、優くんと出会った時の話だ。
1945年、日本。空爆は悪化し、沖縄は後に「鉄の暴風」 と呼ばれるまでに戦闘が激化。広島、長崎に原子爆弾が投下され、第二次世界大戦は終焉を迎えた。
あれから1年、1946年。今でも復興は続いている。あの空爆から既に数ヶ月。私は死んだのだと、そう思った。身寄りは皆死に絶え、私だけが残ってしまった。あの戦いの後、残された住民たちの手当が開始された。私は一命を取り留めたが、後遺症として耳が聴こえにくくなっていた。ほとんど何を言っているかは聴き取れず、大きな音なら聞こえるものの、あの戦争を思い出しパニックに陥るようになってしまった。家族と別れこのような思いをするのなら、死んでしまえば良かったと後悔していた。戦後の日本は貧しく、闇市が多数開かれ、法外な値にも関わらず買う人が後を絶たなかった。私も例外ではなかった。
「ぃ」
「ん?」
足に何かぶつかったか?と下を見てみると、小学3年生程の子供が転んでいた。闇市に子供一人で来るだろうか。このご時世だ。珍しいことではないんだろうが、どうにもその子を放っておけなかった。
「ごめんね。お父さんとお母さんはいるかな。」
「ぃなぃ」
まずい。何を言っているか分からない。口元を見て判断するにも、私にそんな技術があるはずもなく、自分から話しかけた手前、どうしたものか。
「ごめんね、おじさん、耳が聴こえにくいんだ。だから、もしうんって言いたい時は、1回頷いて、いやって言いたいなら首を横に振ってみてくれるかい。」
こくり
「じゃあ、お父さんとお母さんは近くにいる?」
ふりふり
「じゃあ、ぼくは今誰と一緒に暮らしてるのかな?」
ふりふり
「…誰もいないの?」
こくり
….そうか、君もか。
「そうだな、文字は読めるよね?」
ふりふり
「文字が読めないの?」
あれ、急に反応しなくなったな、というよりも、「読める」 という点に引っかかっている訳では無い感じだ。私に目も当てていない。見ているのは… どこを見ているのだろうか。最初は泣いているから地べたを眺めているのだと思ったが、顔を上げてくれた時も、目が合うことはなかった。栄養失調かもしれない。大丈夫だろうか。
「何も食べてないの?」
ふりふり
「これ、何本に見える?」
ふりふり
「見えない?」
こくり
「え、目が見えないの」
こくり
これが、優くんとの出会いだ。
あとから聴いたところによると、今まではぶつかりながらも、もうほとんど残っていない金を持って、チョコレートなどの食べ物を求め、道を尋ねていたらしい。親切な人は、食べ物を分けてくれるから、それを食べつつ生活していたんだとか。とりあえず、その子と私のバラック小屋に行き、色々なことを決めたり、話したりした。まずは名前だ。
「自分の名前はわかる?」
こくり
「ああ、口でいいよ」
「ゅぅ」
「えーと、ゆうくんかな?」
こくり
ぶっつけ本番ではあったが、唇の動きを目を凝らして頑張れば、何とか数文字くらいは分かりそうだ。漢字でどうかは分からないが、多分、優。優くんと呼ぶことにしよう。
「優くん、もう遅い時間だし、今日は寝ようか。」
こくり
細かい事は後にして、私も深い眠りについた。