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彼女は…一体…
誰…?
最近、毎日同じ夢を見る。
何もない夢。
自分は動けも、喋れもしない。
ふわふわしていて、飛んでいるような感覚になる。
しばらくしたら目を覚まし家の天井を見つめている。
毎日夢を見ていると、少しずつ変化があった。
自分の手に赤い糸が繋がっていたり、目の前に女の人がいた。
僕はこの人を知らない。
知っていたとしても誰か分からない。
いつも向こう側を向いているから、後ろ姿しか見れない。
顔を見たことがない。
でも、彼女の手には僕と同じ赤い糸が繋がっている。
それだけは、見る事が出来た。
違う日には彼女が何か言っていることに気付いた。
『··…····ッ…·········…』
でも、ぼそぼそ言っていて何も聞き取れない。
どんな声なのかも聞き取れなかった。
彼女は…一体…
誰…?
ある日、急に連絡が来た。
親友からだった。
小中いつも一緒にいたメンバーで久しぶりに遊ぼうという話だった。
予定の候補日は全て空いていたので、行くことにした。
当日、本当に久しぶりだった。
僕以外もみんな来ていた。
“一人を除いて”
当時、一番元気で明るい女子の島田がいなかった。
一番会いたかった人だった。
僕は彼女のことが好きだった。
今でも少し未練が残るレベルで。
僕は親友に聞いた。
そうしたら、驚きの言葉が返ってきた。
『あー…あいつな…』
『実は病気で寝たきりになってんだよ…』
「は…?」
『お前は中学卒業してから遠くに引っ越したからな…聞いてないんだろ』
彼曰く、彼女は中学を卒業してから段々体調が悪くなっていったらしい。
その後検査をしたところ病気が発覚した。
その病気は治る事が滅多になく、薬もなかった。
なので彼女はずっと病院に寝たきりの状態になってしまった。
次の日、僕は彼女が入院している病院へ行った。
面会手続きが済んだとき看護師さんに言われた。
『そういえば…実は島田さんの病状が悪化してきていて…』
『多分…もうそろそろ…』
「…わかりました」
『あの、島田さんには…言わないであげてください…』
『聞きたくないでしょうし…』
「もちろんです…」
そんな話を聞いてから、僕は彼女の病室に行った。
病室は一人部屋だった。
僕は彼女を見て驚いた。
元気だった彼女が、酸素マスクを付けて眠っていることではない。
夢の女の人にとても似ていたから。
少し様子を見ていると、彼女は目を覚ました。
『悠…?』
『どうして…?』
「島田が入院して寝込んでいるって聞いたから…」
「お見舞いだよ…」
『…そっかぁ』
彼女は笑った。
酸素マスクを付けているため少し見えにくかったが、笑っているのは見えた。
僕は彼女に色んなことを聞いた。
中学の後に体調を崩していったこと。
今、高校はどうしているのか。
いつからなのか。
そして、一番聞きたかった事を聞いてみた。
「島田はさ…夢って見る…?」
『夢は見るけど…どんな夢?』
「何もない場所で浮いてる感じの夢」
「目の前に人が立っていて、自分の手に赤い糸が結んであるの」
『…どうだろうね』
『どうして、その夢を見ているか聞いたの?』
「そんな夢を見てさ…」
「前にいた人が君にそっくりだったから…」
「気になってね…」
彼女はまたもや笑った。
『やっと気づいてくれた』
僕は驚いた。
夢の女の人は彼女だった。
なぜ、夢で会った事を知っているのか。
彼女は夢について全て教えてくれた。
彼女は僕よりもっと前から定期的に見ていた夢らしく、全く同じ夢だったそうだ。
でも、前に立っているのは女の人ではなく、男子だった。
その男子は日が経つにつれて成長していったらしい。
まるで、同じ時間を過ごしているかのように。
そしてある日気付いた。
その男子は僕だということに。
彼女はずっと僕に声をかけ続けた。
『悠…気付いてッ…ずっと待ってるから…』
赤い糸で繋がっているということは、その相手は運命の人と言われている。
僕の運命の人は島田だった。
けど、その彼女はもう倒れて、寝込んで、もう少しで死んでしまう。
もし、中学を卒業した後も一緒にいたら。
もし、この夢をもっと早く見ていたら。
“もし、彼女に想いを伝えていたら。”
僕は誰にも聞こえない声で呟いた。
「……僕が言っていたら変わっていたかな」
彼女は夢の話を終えた後、また眠りについた。
僕はそんな彼女を見ながら涙が零れ落ちていた。
運命の人を知った彼はその後どうしたのか。
この後の未来はまだ誰も知らない。