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笑顔局管理人
「……これ、誰がまとめた?」
生徒会室に、珍しく静寂が落ちた。
机の上には、文化祭の企画資料。散らばっていた意見、過去のデータ、予算案—— それらが一冊に、完璧に整理されている。
「昨日の続きです」
ひよりが小さく手を挙げた。
「時間があったので、勝手に……」
「勝手に、のレベルじゃない」
会計が資料をめくる手を止め、真剣な目でひよりを見る。
「これ、導線もリスクも全部整理されてる。プロ?」
「い、いえ…..ただ、まとめるのが好きなだけで」
好き。
それだけでやってきたことだった。
副会長の朝比奈は、最初から最後まで無言で資料 を読んでいたが、最後のページで静かに閉じた。
「….. 小鳥遊」
「は、はい」
「これ、会議通す前の下書きだよな?」
「そう、です」
「十分、本提出できる」
即断だった。
書記が目を輝かせる。
「文章も分かりやすいし、無駄がないです。どうやってこんな短時間で?」
「昔から….. 人の話を聞いて、整理するのが癖で」
それを聞いて、一ノ瀬がふっと息を吐いた。
「なるほどね」
その視線は、評価というより–納得に近かっ
た。
「小鳥遊さん」
名前で呼ばれて、ひよりの背筋が伸びる。
「次から、企画の骨子は君に任せたい」
「…..え?」
「もちろん、無理なら断っていい。でもー」
一ノ瀬は穏やかに、はっきりと言った。
「君の才能は、必要だ」
「…..え?」
「もちろん、無理なら断っていい。でもーー」
一ノ瀬は穏やかに、はっきりと言った。
「君の才能は、ここに必要だ」
その瞬間、胸の奥で何かがほどけた。
期待されるのが怖かったはずなのに。 “必要だ”と言われるのは、こんなにも温かい。
「….. やります」
声は小さかったけれど、迷いはなかった。
朝比奈が、当たり前のように言う。
「じゃあ俺、サポートな」
「私も校正入ります」
「予算調整は任せて」
気づけば全員が、ひよりを中心に動く前提になっていた。
ひよりは少しだけ目を丸くして、それから――笑った。
控えめで、でも確かな笑顔だった。
この日から、生徒会の空気が変わった。
小鳥遊ひよりは、
“守るだけの存在”ではなくなった。
――それでも、溺愛は止まらなかったけれど。
続くーー