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最初は、ただの視線だった。
廊下ですれ違うときの、ひそひそ声。 生徒会室に向かう途中で止まる会話。
「….. 生徒会に地味な子いない?」
「会長のお気に入りらしいよ」
ひよりは、聞こえないふりをした。 慣れている。こういうのは。
けれど、昼休み。 教室に戻ろうとしたとき、はっきり聞こえた。
「どうせ雑用でしょ」
「イケメンに囲まれて、いい気になってるだけ」
足が止まる。
胸の奥が、冷たくなる。
(….. やっぱり、私がいると)
生徒会室のドアを前にして、ひよりはノブに手を かけたまま動けなくなった。
そのとき。
「入らないの?」
背後から、朝比奈の声。
振り向くと、副会長は一瞬で状況を察したようだ った。
ひよりの表情を見て、眉を寄せる。
「何言われた」
「….. なんでも、ないです」
その言い方が、答えだった。
朝比奈は無言でドアを門は、ひよりを中へ促し た。
「全員、聞いて」
生徒会室に緊張が走る。
「外で変な噂回ってる」
ひよりが止める間もなく、朝比奈は続けた。
「小鳥遊が理由で、空気悪くなってる」
「… それは違います」
ひよりは、思わず口を開いた。
「私がいなくなれば–」
「それ以上言うな」
低い声。
一ノ瀬だった。
会長は立ち上がり、ひよりの前に立つ。
「君が原因じゃない」
静かで、でも揺るがない声だった。
「能力も、努力も、全部見てる。噂で評価も変わ らない」
書記も、会計も、うなずく。
「むしろ、今まで気づかなくてすみません」
「外野が何言おうが、関係ない」
ひよりの目が、じんわり熱くなる。
「… でも」
一ノ瀬は、少しだけ柔らかく笑った。
「それでも辛いなら、俺たちが盾になる」
朝比奈が、腕を組む。
「守るって決めてるから」
ひよりは、しばらく下を向いていたが、やがて小 さく息を吸った。
「….. ここに、いてもいいですか」
答えは、全員一致だった。
「当たり前」
その日の放課後。 噂は、静かに消え始めた。
理由は単純だった。
生徒会が、誰一人として、ひよりを手放す気がな かったから。
ーーー続く