ウームが房を付け出した頃、郷田はチェッカーをはずした。
脱力感。ワープのプログラムを含めて、大きな問題は見つからなかった。死刑宣告は先延ばしになった。
生きた心地がしない、こんなことを続ければ、身体よりも先に心がしおれてしまう。
壁から突き出る棒を握っていた手が、緩んでいく。体が背中の方から浮いていった。ジーという音が耳元にくる。ウームの種が散った。郷田の丸くなった背に次々あたっては砕けていく。しょぼしょぼになった目をこすったとき、地球の写真が郷田の所にやってきた。紙は経年劣化していて、碧いはずの海、白いはずの雲が、どちらも色味をなくして白っぽい。元の色を思い出す気はおきない。ただ、頭が痛い。喉、口、眼、鼻にまで音が響いてひりひりする。
「まだ安心はできない」郷田は小さくつぶやくと、ゆっくりと機械室を出ていった。
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