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ショタちゅや×社畜お姉さんが好きな夏の穂です。
プライドが高い(自認)くせに自尊心が低い夏の穂です。
たった1日で三回リムられそろそろフォロバやめようかなと思ってるメンタルありんこの夏の穂です。
いってらっしゃーい
雨の音が、窓硝子を絶え間なく叩いている。
ここ数日、空は機嫌の悪い灰色に染まったままで、一向に泣き止む気配がなかった。
「ねーだざい、あしたはれる?」
ベッドの上で、小さな体がごろごろと転がっている。主のいなくなった外套のようにぶかぶかの服をまとった中原中也は、退屈の限界を迎えていた。元気があり余っている子供にとって、雨による自宅監禁は拷問に等しい。
「そうだといいねぇ」
太宰治は、机に向かったまま視線すら動かさずに答えた。手元では、万年筆の先が紙の上を滑り、規則正しい、けれどどこか焦燥感を含んだ音を立てている。社畜、という言葉がこれほど似合う状況もない。山積みの書類と、締め切りの迫った執筆原稿。それらが彼女の両肩に重くのしかかっていた。
「ねー、だざいってば。あしたはれる?」
「さあ、どうだろう。天気予報は見ていないよ」
「ちぇー」
中也はつまらなそうに唇を尖らせると、ベッドの上で仰向けになり、小さな両手で自分の黒い帽子をいじり始めた。それは少し前に太宰に買ってもらったもので、今の彼にはまだ少しサイズが大きい。それを頭に載せたり、顔を覆ってみたり、裏返して中を覗き込んだりしている。お気に入りの帽子を触っている間だけは少し大人しいが、それも長くは持たない。
「ねー、だざい」
「……何だい、中也」
「はれる?」
「……さっきも言ったけれど、神様じゃないから分からないよ」
太宰は、ちくちくと痛むこめかみを片手で押さえた。
低気圧のせいだった。雨が降ると、いつも頭の奥が重く、締め付けられるように痛む。普段なら、どんなに中也が甘えてこようが、生意気な口を利こうが、「可愛いなぁ」と破顔して抱きしめる余裕がある。事実、目の前で小さな体を縮めて退屈そうにしている中也は、文字通り目に入れても痛くないほど愛らしかった。
けれど、今の太宰にはその愛らしさを全霊で受け止める体力が残っていなかった。低気圧による頭痛と、終わらない仕事の疲労。それらが混ざり合い、普段なら心地よいはずの中也の甲高い幼い声が、今は脳を直接揺さぶる鋭い針のように響いてしまう。
(早く、寝てくれないかな……)
太宰は心の中で、誰にともなく懇願した。
中也が眠ってくれれば、部屋は静かになる。そうすれば仕事にも集中できるし、少しは頭痛も和らぐかもしれない。
視線を原稿から外し、壁に掛けられた時計に目を向ける。短い針は、すでに十二の数字をとうに通り過ぎていた。真夜中だ。子供が起きていていい時間では断じてない。
「中也、もう遅いよ。いい加減にベッドに入って目を閉じなさい」
「やだ。ねむくないもん。おそといきたい」
「外は雨だよ。夜だしね。ほら、早く寝ないと鬼が来るよ」
「おに、こないもん。だざいがやっつけるもん」
「今は無理だよ……」
中也は無邪気に笑うが、太宰の焦りは募るばかりだった。早く切り上げて自分も横になりたい。けれど、この頁だけは書き終えなければ明日からの予定が完全に破綻する。焦れば焦るほど筆は進まず、思考は霧がかったように鈍くなっていく。
だんだんと、自分の瞼が鉛のように重くなってくるのを太宰は自覚した。
(あと、少し……あと数行、書いたら……)
万年筆を持つ指先から力が抜けていく。机の上のランプの明かりが、優しく、そして暴力的なまでの眠気となって太宰を包み込んでいった。
・
・
・
数分後。
静まり返った部屋の中で、中也はベッドから小さな体を起こした。
いつもなら部屋の中に響いている、太宰の筆の音が聞こえなくなっていたからだ。
「だざい……?」
中也はベッドから静かに床に降りると、とてとてと小さな足音を立てて、隣の執務室へと向かった。
開け放たれた扉の向こう、ランプの光に照らされた太宰は、机に突っ伏したまま動かなくなっていた。右手に握られた万年筆は、原稿用紙の端で止まっている。規則正しい、静かな寝息だけが聞こえていた。
中也は首を傾げながら、太宰の机の横に歩み寄る。
「だざい、ねちゃった?」
声をかけても、太宰はぴくりとも動かない。本当に疲れ果てて眠ってしまったのだ。いつもなら中也が近づくだけで「おや、中也」と振り返る彼女が、微動だにしない。
中也は、自分が羽織っていたぶかぶかの大きなコートに目をやった。彼にとっては地面に引きずるほど長いそのコートを、小さな手で一生懸命に肩から脱ぐ。そして、冷たい夜の空気から守るように、太宰の細い肩へとそっと掛けた。
「かぜ、ひいちゃうぞ」
中也は小さく呟いた。
太宰の顔は、眠っていてもどこか辛そうに歪んでいる。頭が痛いと言っていたのを、中也なりに察していたのかもしれなかった。
中也は一度自分のベッドに戻ると、小さな体で引きずるようにして、自分の布団を執務室まで運んできた。ずりずりと重い音を立てながら、太宰が座る椅子の下へとそれを敷き詰める。
そして、太宰の足元、椅子の下の狭いスペースに潜り込むと、布団をごわごわと体に巻き付けた。
大好きな太宰の気配がすぐ上にある。それだけで、中也の心は満たされた。
「あしたは、はれるといいな」
小さく毛布の中で呟き、中也は太宰の椅子の下で、丸くなって目を閉じた。
・
・
・
次の日。
差し込む光の眩しさに、太宰はゆっくりと意識を取り戻した。
「……ん……」
首や肩が、悲鳴を上げるように痛む。机に突っ伏して寝てしまった代償だ。最悪の目覚めを覚悟しながら、太宰は重い塗膜を剥がすようにゆっくりと瞼を開けた。
すると、視界のすぐ先に、信じられないほど愛らしい光景が広がっていた。
光の粒が舞う部屋の中で、小さな、本当に小さな天使がこちらを見上げていたのだ。
くりくりとした青い瞳、柔らかそうな頬、寝癖で少し跳ねた髪。
「……天使……? 私、ついに過労で天に召されたのかな……」
太宰が呆然と呟くと、その天使は不満そうに頬を膨らませた。
「てんしじゃないぞ。ちゅうやだぞ」
「……え? 中也……?」
その声で、太宰の意識は一気に現実へと引き戻された。
「やだ、私、寝ちゃってたの……!?」
慌てて起き上がると、肩からばさりと何かが落ちた。見ると、それは中也がいつも着ているぶかぶかのコートだった。そして足元を見れば、中也が自分の布団をここまで引きずってきて、太宰の足元で眠っていた形跡が残っている。
「中也、君、まさかずっとここで……?」
「だざいが、つくえでねちゃうから。おれ、ここでみはりしてたんだぞ」
中也は誇らしげに胸を張るが、その小さな体は寒さで少し冷たくなっていた。
太宰は時計に目をやった。針はまだ早朝の時間を指している。いつもならもっと遅くまで泥のように眠っているはずの時間だが、奇妙なことに、昨夜あれほど激しかった頭痛は綺麗に消え去っていた。
椅子で寝ていたせいで凝り固まった体を無理に動かし、太宰は「よいしょ」と声を上げて立ち上がると、足元にいるちび中也をひょいと抱き上げた。
「うわっ、だざい?」
「おいで、中也。まだ朝早いよ。ベッドに行こう」
太宰は中也を腕に抱いたまま、寝室の大きなベッドへと歩き、そのまま二人でシーツの上に転がり込んだ。中也の小さな体が、太宰の胸の中にすっぽりと収まる。まだ少し冷えている体を、太宰は自分の体温で温めるように、ぎゅっと抱きしめた。
ふと、窓の外に目を向ける。
そこには、ここ数日の悪天候が嘘のような、どこまでも高く澄み渡った晴天が広がっていた。雲一つない青空から、暖かい太陽の光が部屋の隅々まで降り注いでいる。
「あ、はれてる!」
中也が太宰の腕の中で声を弾ませ、窓を指差した。
「本当だ。晴れたね、中也」
太宰は優しく微笑んだ。
そういえば、と太宰は今日の予定を思い出す。カレンダーを頭の中でめくってみても、今日の欄には何の予定も入っていない。忌々しい会議もなければ、急ぎの締め切りも昨夜で一区切りがついている。
「中也」
「なぁに、だざい」
「今日はね、お仕事お休みなんだ。だから、お外に遊びに行こうか。君の新しい帽子を被ってさ」
中也の顔が、一瞬でぱあっと輝いた。
「ほんと!? やったぁ! おそといく! こーえんいく!」
「うん、行こうね。でも、その前にもう少しだけ、お姉さんと一緒にねんねしよう」
太宰は中也の柔らかい髪に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。中也の心地よい体温と、窓から差し込む陽気の暖かさが、太宰の疲れた心と体をゆっくりと癒していく。
「……うん。だざい、おやすみ」
中也も満足したように、太宰の胸に顔を押し付けて、今度こそ気持ちよさそうに小さな寝息を立て始めた。
太宰は愛おしさに胸を震わせながら、再び静かに目を閉じた。
この世のショタおにorショタおね中太は絶対に数年後少年中也に蹂躙されるアラサー太宰が存在する(?)
しにそう
コメント
3件
中也くんが自分から布団を運んで太宰さんの足元で丸くなってるところ、まっすぐな優しさが溢れてて胸がぎゅっとなりました……!雨の日の重い空気から、朝の光が差し込む場面への切り替わりがとても綺麗で、読後感がすごくあたたかいです。お姉さんと小さな恋人、お互いを思いやる距離感が本当に素敵でした☺️