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ささくれ
コメント
2件
大森さんがツンデレなのか、それとも本当に不満なのか、はたまた若井さんの本当の優しさに気づけていないのか…更新早くて嬉しいです。
もう10話!?!? なんだがだ2人何とかなりそう…🤔 まじで楽しみ 最近更新早くなって嬉しい♡ モチベ爆上ゴリ🦍
その日、空は朝から重い色をしていた。
雨は弱く降り続いていて、街全体が少し鈍く見える。
指定された住所に向かう元貴は、明らかに気乗りしていなかった。
「なんで雨の日なんだよ……」
小さく舌打ちしながら、傘を片手に歩く。
到着した先は、一軒家だった。
広くて、無駄なものが少ない整った空間。
いくつも部屋があって、静かすぎるくらい静かだ。
「……無駄にデカいな」
ぼそっと言いながら中に入る。
その一方で。
若井は、まだ来ていなかった。
同じ頃、外では雨が少し強くなっていた。
若井は濡れた道路の端で、しゃがみ込んでいた。
「大丈夫?」
小さな子供が泣いているのを見て、傘を差し出している。
「家、近い?送るよ」
そのあと、道の隅で小さく鳴いている濡れた猫を見つけてしまう。
迷うことなく拾い上げる。
「……放っとけないよな」
気づけば、全身びしょ濡れだった。
服は泥だらけで、髪も水を吸って重くなっている。
そのまま猫を抱えたまま、家に向かう。
インターホンを押した瞬間
ドアが開く。
中から出てきた元貴は、若井の姿を見るなり顔をしかめた。
「……きったな、さいっあく。」
吐き捨てるような声。
視線は若井というより、泥と濡れた服に向いている。
「早く入れよ、邪魔」
若井は一瞬だけ目を丸くする。
でもすぐに困ったように笑った。
「ごめん、ちょっと色々あって……」
そう言いながら、抱えていた猫を守るようにして中に入る。
「風呂借りてもいい?」
小さく尋ねると、元貴はすでに背を向けていた。
「勝手にして。」
興味のない声。
そのままリビングへ向かい、テレビをつける。
画面だけが部屋を埋めていく。
雨の音とテレビの音だけが混ざる空間。
若井は猫をタオルで軽く包みながら、申し訳なさそうに頭を下げる。
「ほんと、ごめん……」
誰に対してなのか曖昧なその謝罪は、小さく部屋に溶けていった。
元貴は画面を見ているふりをしながら、視線だけ少し横にずらす。
びしょ濡れの若井と、震える小さな猫。
その光景は、妙に生活感があって、妙に“バンドの外側”だった。
(……何やってんだ、こいつ)
そう思ったのに。
テレビの音が、少しだけ遠く感じた。