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それから九日後、正源の寺の事務室の固定電話に浄源から突然電話が掛かって来た。翌日に、北関東の町に供養をしに浄源と一緒に行けという内容だった。
「また急な話ですね。少々お待ちください」
正源は当惑しながらも、机の端からスケジュール帳を手繰り寄せ、翌日の予定が特にない事を確認して、受話器に向かって答えた。
「お待たせしました。明日なら空いていますので行けます。それでどちらの供養を?」
浄源は野太い声で答えた。
「まあ、野外での合同供養といったところだ。とにかく行けば分かる」
そう聞いた正源は、以前に日本海側の地方都市で自分が頼まれた、数十人もの身元不明の遺体の合同供養を思い出した。
さらに浄源に質問してみたが、浄源は、行けば分かる、の一点張りでそれ以上の詳しい事は何も教えてくれなかった。
浄源は現地まで電車で行くという事だったので、正源が自分の車で最寄りの駅まで行き、そこで落ち合う事にした。
電話を切った正源は、野外での供養に必要な仏具を用意しながら独り言を言った。
「ま、何だかよく分からんが、総本山からのお沙汰をじっと待っているのも気が滅入るしな。ちょうどいいかもな」
そして翌日、正源が北関東自動車道を電気自動車で走り抜け、小さな駅の前に着くと、すぐに袈裟姿の浄源が近づいて来た。
正源は車の外へ出て、浄源に深々とお辞儀をしながら言った。
「お山以来ですね、浄源様。今日は浄源様の助手を務めさせていただきます」
だが浄源は「ガハハ」と豪快な笑い声を上げて言った。
「助手を務めるのはわしの方だ。お前が導師役をやるんだ」
「は? いえ、浄源様のような位の高い方を差し置いて、私が導師とは?」
「とにかく、その場へ行けば分かる」
仕方なく正源は、浄源を助手席に乗せて、車を発進させ、電話で告げられていた場所に向かって、カーナビを頼りに、狭い道を進んで行った。
たどり着いた場所は山を少し登った所にある、廃棄物処理工場のような場所だった。正源は、さては遺体が大量に遺棄された事件でもあったのか?と緊張したが、浄源は相変わらず質問に答えようとせず、「行けば分かる」と繰り返すのみだった。
廃棄物の分別やリサイクルでもしているのだろうか、見るからに年代物の古い建物の前に車を停めると、作業服の中年の男が走り寄ってきた。
車の窓越しにその男は訊いて来た。
「供養を引き受けてくださったお坊様でございますか?」
これには浄源が答えた。
「はい、左様でございます。町役場から言われて参りました」
「そりゃ遠いところをご苦労さまです。ここからは私がご案内いたします。あとについて来ていただけますか?」
そう言って男は建物の方へ手招きしながら先に立って歩いた。正源はもっと訊きたい事があったのだがタイミングを逸し、仕方なく言われるままに浄源と共に男の後を付いて行った。
コメント
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第23話、読みました。 浄源様の「行けば分かる」の繰り返しがもう不気味で…でもそれでいて気になってどんどん読み進めちゃいました。正源さんが導師役を任されるって、まさかの展開にハッとしました。♡♡♡処理工場って、この先どんな闇が待ってるんだろう。ダークな空気がじわじわ来てて、すごく好きです。続きが気になります🤍🥀