テラーノベル
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部屋の明かりが、オレンジ色の優しい光を投げかけたまま、静かに時を刻んでいる。
窓の外では夜がさらに深まり、秋の冷気がしんしんと窓ガラスを撫でるように通り過ぎていく。しかし、その冷たさは二人のいる小さな空間には全く届かない。王耀の腕の中という絶対的な温もりに包まれて、天乃時雨は深い眠りの底へと落ちていた。
規則正しい、わずかに浅い寝息が、王耀の胸元をかすかにくすぐる。
その愛おしいリズムを感じながら、王耀は微動だにせず、ただ静かに彼女の背中に添えられた手をゆっくりと動かしていた。銀色の長い髪が畳に波打つように広がり、ふとした拍子に彼の指先へと絡みつく。まるで離さないようにと手繰り寄せられているかのようなその仕草に、王耀はふっと小さく、穏やかな笑みをこぼした。
数千年の歴史を生き、数多の別れや出会いを見送ってきた彼にとって、夜という時間はどこか孤独で、果てしないものだった。どんなに賑やかな宴の後であっても、静寂が訪れれば胸の奥には冷たい空洞が広がる。それが「当たり前」であり、耐えるべき孤独だと彼は信じ込んでいた。
だが、今のこの胸にあるのは、かつて感じたような冷たさではない。
じんわりと広がるのは、時雨の体温がもたらす確かな熱と、胸の奥を締め付けるほどの満ち足りた幸福感だった。
(……昔の自分なら、こんな風に誰かの温もりに執着することなんて、想像もしなかったアルな)
歴史のうねりの中で、国として、人として、数え切れないほどの命を背負ってきた。誰かに寄り添うことの危うさも、失うときの痛みも、身をもって知っているはずだった。だからこそ、一定の距離を保ち、誰にも深く踏み込ませないように生きてきた。
それなのに、いつの間にかこの控えめで、すぐにおどおどしてしまう小さな女性が、彼の人生の真ん中にしっかりと根を下ろしている。
「お兄ちゃん」と呼ばれ、守るべき存在として微笑ましく見守っていたはずなのに、いつの間にか彼の方が、彼女の存在なしではいられないほどに心を奪われてしまっていた。
(今夜のことは、きっと明日の朝になったら……死ぬほど後悔するアルな)
昨晩の――いや、つい先ほどの時雨の慌てふためく顔を思い出し、王耀は再びくすりと声を漏らす。
きっと明日の朝、目が覚めた瞬間に昨日のお酒の勢いを思い出して、顔を真っ赤にし、「うわぁぁぁ!」と叫びながら布団に潜り込み、二度と出てこられなくなるに違いない。「わたくし、なんてことを……!」と涙目になりながら謝罪してくる姿が、今からありありと目に浮かぶようだった。
恥ずかしがり屋で、自信がなくて、いつも一歩引いてしまう彼女。
だけど、その奥には誰よりも熱くて、真っ直ぐな想いが隠されていることを、今夜の彼女は全身で教えてくれた。
「……ふふ、どんな顔をするにしても、もう逃がさないアルよ」
低く、優しい呟きが、誰の耳にも届かない小さな声で部屋の空気に溶ける。
王耀は、眠っている時雨の体を少しだけ強く抱き締め直し、その柔らかな銀髪にそっと頬を寄せた。シャンプーの甘い香りと、わずかに残るお酒の芳醇な香りが混ざり合い、彼の心を心地よく満たしていく。
外の世界はどれほど変わろうとも、この瞬間、この温もりだけは揺るぎない現実だった。
明日が来れば、また日常が動き出し、それぞれの役割や時間が二人を包み込むだろう。けれど、この夜に交わした言葉と、確かめ合った体温は、決して消えることはない。
王耀は目を閉じ、時雨の穏やかな寝息を子守唄のように聞きながら、ゆっくりと自分の意識を深い眠りへと沈めていった。
静かな夜の底で、二人の重なる影は、まるで初めからひとつだったかのように、優しく寄り添ったまま動かなかった。
めーし
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瑞希 流星♟也中
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コメント
1件
第6話、読ませていただきました…! 王耀さんの内面がこんなに丁寧に描かれていて、胸がぎゅっとなりました。何千年も生きてきた彼が“孤独は当たり前”だと諦めていたのに、時雨さんという一つの温もりで根底から揺らぐ感じ…すごく好きです。「もう逃がさないアルよ」の台詞、優しいのに強くて、彼の覚悟みたいなものが伝わってきました。 明日の朝、時雨さんがどう反応するか見てみたい気持ちと、この静かな夜のままでいてほしい気持ちが両方あります…🌙💕