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うわあ、朝から追い詰められる時雨ちゃん可愛すぎて胸が痛い…!笑 でも、王耀さんの「一生忘れないアルよ」がもう、優しさと悪戯っぽさが混ざっててたまらなかった。あのパニックっぷりと、しっかり抱きしめて逃がさない距離感が本当に好きです。昨日の夜の告白がこんな朝に繋がるなんて、尊い…!
薄青い光が障子の隙間から微かに漏れ出し、夜の闇をゆっくりと押し流していく。朝の静けさが部屋を支配し、庭の木々を渡る冷涼な秋の気配が、障子の向こうからかすかに伝わってきた。
王耀は、かすかに目が覚めるのを感じながらも、すぐには体を動かさなかった。腕の中に広がる、絹糸のように滑らかな感触と、心地よい温もりがまだそこにあったからだ。畳の上で一晩中抱きしめ続けていたせいで、片腕にはじんわりとした痺れが走っている。しかし、それを不快に思うどころか、むしろ現実の確かな証として愛おしく感じられた。
(……そろそろ、起きる時間アルか)
そう思いながら目を細め、王耀は腕の中の存在に視線を落とした。
昨夜、電池が切れたようにその場で眠り込んでしまった天乃時雨は、今もまだすっぽりと王耀の胸元に収まっている。腰まであるストレートの銀髪は、昨夜よりも少し乱れて彼のシャツの合わせ口に散らばり、朝の淡い光を浴びてほのかに白銀色の艶を放っていた。
だが、その平和な光景は、わずか数秒ののちに劇的な変化を迎えることになった。
時雨の長い睫毛が、微かにぴくりと震える。夢のなかにいた彼女の意識が、徐々に現実の感覚へと引き戻されていく。開いたばかりの潤んだ青い瞳が、ぼんやりと天井を捉え、次いで目の前にある見慣れたシャツの胸元、そしてその主の顔へと焦点を合わせていった。
はじめは、まだ眠気と昨夜の酒の余韻で、自分がどこにいて、どういう体勢でいるのか理解できていない様子だった。
時雨は小首をかしげ、ふわりと息を吐き出す。しかし、次の瞬間――彼女のなかのすべての思考回路が、一気に全速力で回転を始めた。
(……え? あ、れ……? わたくし、どうして……?)
昨夜の記憶が、スライドのフィルムが急回転するように、脳裏へと鮮明に蘇ってくる。
お酒の勢いに任せて放った、自分でも信じられないような大胆な告白。王耀の胸元を力任せに掴み、畳へと押し倒したあの衝撃。そして――自分から彼の唇へと重ねた、不器用で熱いキスの感触。
すべての記憶が脳内を駆け巡った瞬間、時雨の顔色からサーッと血の気が引いたかと思うと、今度は一転して、耳の先まで、いや、首筋やデコルテに至るまでが耐え難いほどの鮮烈な紅に染め上がった。
「ひっ……!?」
小動物が文字通り絶命しかけたような、か細くも鋭い悲鳴が時雨の喉から漏れる。
彼女は自分が王耀の腕の中に完全に捉えられていること、そして昨夜から今朝に至るまでずっとその胸に顔を埋めて眠っていたという事実をようやく完全に理解し、全身の毛穴から一気に冷や汗と熱が噴き出すのを感じた。
「うそ……うそです、そんな、わたくし、なんてことを……っ!」
パニックに陥った時雨は、現実逃避するかのように、文字通り体をエビ反りにさせて王耀の腕の中から抜け出そうと暴れ始めた。しかし、何千年も生き、数々の修羅場をくぐり抜けてきた王耀の腕の力は、慌てふためく彼女ごときの力であっさり解けるものではない。逃げようとすればするほど、彼女の柔らかい体が王耀のそれに密着し、余計に羞恥心を煽る結果になった。
「あわわ、わ、わたくし、お酒のせいで、どうかしてました、忘れいてください、今のは全部夢、悪夢です……っ! 見なかったことに、聞いてなかったことに――!」
「はいはい、そんなに暴れると、こっちも色々と困るアルよ、時雨」
低く、どこか楽しげを含んだ落ち着いた声が、頭上から降ってきた。
その声を聞いた瞬間、時雨の動きがピタリと止まる。恐る恐る、ゆっくりと顔を上げると、そこにはすでに目を覚まし、琥珀色の瞳を細めて自分を見下ろしている王耀の姿があった。その表情には、朝の気だるさと共に、底知れない優しさと、少しばかりの悪戯っぽさが絶妙なバランスで浮かんでいる。
「や、耀さん……っ! おはよう、ございます……その、ええと、わたくし、今すぐここから消えたいです……穴があったら入りたいです、いえ、地球の裏側まで穴を掘って埋まりたいです……っ!」
両手で自分の真っ赤な顔を覆い隠し、手足をバタバタとさせながら畳の上でジタバタと縮こまる時雨。そのあまりの慌てぶりと、いつものおどおどした性格が全開になった可愛らしいパニック姿に、王耀はついに堪え切れず、低く心地よい声を上げて笑った。
「ははは! 朝から元気いっぱいアルな。昨日の夜のあの豪快な勢いはどこへ行ったアルか?」
「もう言わないでください……! お願いですから、その話は禁句にして、記憶から完全に抹消してください……!」
両手で顔を隠したまま、指の隙間からこちらを窺うように、潤んだ青い瞳がトジトジと訴えかけてくる。その瞳の端には、恥ずかしさのあまり本当に涙が滲みかけており、これ以上いじると本当に気絶しかねないほどの切迫感が漂っていた。
王耀はその様子を愛おしそうに見つめながら、暴れる彼女を優しく、しかし絶対に逃がさない絶妙な力加減でしっかりと抱き締めたまま、上半身をゆっくりと起こした。
「昨日の夜のことは、一生忘れないアルよ。……だって、時雨が自分から『恋人として見てほしい』って、あんなに可愛い顔で言ったんだからな」
「ひゃうっ……!?」
めーし
1,490
瑞希 流星♟也中
921
365
776
心臓を一突きされたような致命的な一言に、時雨は再び全身をビクッと硬直させ、完全にフリーズした。耳まで真っ赤に染まったまま、もはや声すらうまく出せず、王耀の胸元に再びポスリと額を預けて微動だにしなくなる。
そんな彼女の頭を、王耀は愛おしそうに、大きな手のひらでゆっくりと撫で下ろした。
朝の冷たい空気が外でどれほど吹き荒れていようとも、この部屋に満ちているのは、二人だけの穏やかで甘やかな、かけがえのない日常の始まりだった。
「さてと……昨日の今日でお腹も空いただろうし、何か温かいお粥でも作るアルか。時雨、立てるアルか?」
「……むりです……魂が抜けました……」
消え入りそうな声で呟く彼女の背中を優しくさすりながら、王耀はふっと穏やかな微笑みを浮かべる。
こうして始まる新しい一日は、昨日までとは少しだけ違う、もっと深く結ばれた二人だけの確かな未来へと続いていくのだった。