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初めまして!「めあり」と申します。
ふと思い立ち筆を握ったところ、思いの外良いものが描けたのでお試しで載せてみますね。
初めて書いたので、生温かい目で見守ってください。
#mtp
#ご本人様には関係ありません
#やまなしおちなしいみなし
昼間の熱気がまだ部屋に残っている。窓を開け放っても風は入らず、ただ蝉の鳴き声だけが耳を刺していた。
「…..暑いな」
タオルを首に巻いたまま、元貴がうちわを仰ぎながらつぶやいた。Tシャツの襟元には汗が滲み、胸元が肌に張りついている。隣で同じように寝転んでいた人は、ちらりと彼に目をやった。
「エアコンつければよかったのに。なんでわざわざ俺んち来てまで我慢してんだよ」
「お前んち、クーラー壊れてんだろ。俺んちも母さんが節電とか言ってて…..結局、こうなるわけよ」
「バカみたい」
「バカでいいんだよ、夏なんて。汗かいて、ぐだぐだして、そういうもんだろ」
そう言って笑う元貴の顔は、昔から変わらない。中学の頃、何でもないことでゲラゲラ笑ってた彼が、そのまま大人の体になったようで、滉斗は一瞬、視線を逸らした。
けれど、またすぐに見てしまう。
元貴の首筋をつたう一筋の汗。肩幅が広がって、見慣れたはずのTシャツ姿が、なぜか今日だけ違って見えた。
ーー夏のせい、だろうか。
「ねえ、滉斗」
「ん?」
「覚えてる?中3の夏、お前んち来て、同じように寝転んで……なんか、変なことになりかけたよね」
滉斗の心臓が、ドクンと音を立てた。
「…..あれは、元貴がふざけて……」
「そうだったっけ。でもさ、あのとき、お前逃げたよな。急に立ち上がって、麦茶取りに行ったふりして」
「……それ、まだ覚えてたのかよ」
「覚えてるよ。だって俺、あのとき本気で……お前に触れたかったから」
空気が、止まった気がした。
蝉の声すら遠くなる。部屋の中にあるのは、ふたりの息遣いだけ。
「また逃げるか?」
低く、掠れた声だった。熱のこもった目が、滉斗の奥を射抜く。
「…..逃げねえよ」
答えた自分の声が震えていたのは、きっと夏のせいじゃない。
元貴の指先が、そっと滉斗の頬に触れる。その指は驚くほど優しくて、けれど確かに熱を帯びていた。ゆっくりと頬から耳、そして顎へ。元貴は顔を近づけ、息が触れるほどの距離で言った。
「じゃあ、これは…..夏のせいってことで、いいよな」
滉斗は目を閉じた。
触れた唇は、火傷のように熱く、けれどどこか懐かしかった。互いの呼吸が混じり合い、体温が重なっていく。汗ばんだ肌がこすれ合うたびに、止めていた何かが、ひとつずつ外れていった。
その夜、蝉の声は不思議と静かだった。
まるでふたりの秘密を、そっと見守っているかのように。
どうだったでしょうか?
バイバイ👋