テラーノベル
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次の瞬間、悠真の腕がすっと伸びてきた。
強くも優しくもない、けれど確かに大切に包み込むような抱擁。
「……悠真さん……」
咲は驚きで固まったまま、胸の鼓動だけが激しく響いていた。
悠真の声が耳元で低く囁く。
「……遅くなって、ごめん」
その言葉に、堪えていた涙がまた溢れる。
「……ずっと、待ってました」
冬の冷たい空気の中で、互いの温もりだけがやけに鮮明に感じられる。
人混みも、きらめくイルミネーションも、すべてが遠くに霞んでいく。
(――この瞬間を、ずっと夢見ていたんだ)
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